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最終話
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あまり長くはいられないなと悩んでいた。
「あの、お嬢様」
「はい」
「そろそろ戻ってはいかがですか?」
「邪魔ですか?」
「日に焼けてしまいます」
「大丈夫です」
ここは正門。ここなら誰も探しに来ないかなって。
ちょっと独りになりたかった。あんまりお金持ってないし。宝石とか売れば平民として生きる資金にはなると思うけど、そんなことをしたらパパとママの寿命を縮めちゃうし。まだ帰りたくないのにベルデマレには王宮以外の伝手はない。宿に泊まるとしたらキュアノスの私兵達も泊まらせなくてはならないから厳しい。帰るしかないのかな…などと考えていた。
また正門が開いたけど馬車と騎馬隊がすぐに止まった。
「キュアノス嬢!?」
見上げるとゼノン卿が馬から降りている所だった。
「心配したんですよ!!」
「……」
ガチャ
「エリシア!」
馬車から降りて来たのはヴラシスだった。
逃げようとしたけど簡単に追いつかれて持ち上げられた。
「放して!!」
「エリシア、愛してるんだ!あの補佐見習いは王太子妃付きだ。たまたま食事の時間が一緒になって、あのときは彼女がつまずいて俺の腕を掴んだだけだ」
「絶対おかしいもん!」
「何が」
「ヴラシスが我慢できるはずないもん!」
「何を」
「エッチ!」
「……」
ゼノン卿以外は“エッチってなんだ?”という顔をしている。
「あのな、俺は女としたいんじゃない、エリシアだからしたいんだ」
「……」
「仕事をする以上、こういうことはある。女を全て避けられない。それは分かってもらわないと」
「ヴラシス」
「寂しかったんだな?ごめんな」
「うん」
「戻ったらキュアノス邸に引っ越すから」
「え?」
「義父上がエリシアの家出に堪えて、陛下と話し合ってくれた。3年待たずに今から半年後に結婚、一緒に住むのはすぐだ」
「私、拷問の仕方とか詳しいの」
「知ってる。他殺に見せる殺害方法も知ってるんだよな?」
「うん」
「証拠が出ないように肉を細かくして豚に与えて骨は砕いて海か川に流すんだよな?」
「うん」
「育児をしない男は嫌いなんだよな?」
「うん」
「浮気したらアレを5分の1を残してカットして辱めるんだよな?」
「うん」
「俺にはエリシアだけだ。嫉妬して俺を殴ろうとも全然構わない。どこかに家出しても必ず探し出して連れ戻す。だがそのときに男がいたら殺すからな」
「うん」
「良い子にしていたか?」
「…お金巻き上げてた」
「は?」
「ヴラシス、王妃様にお願いして温泉に行こう?」
「すぐに頼みに行こう」
ヴラシスは陛下達に挨拶を済ませ、温泉離宮の使用許可をもらい私を連れて行ってくれた。5日間籠ったあと、オヴェルへ向けて出発した。
もちろん、お土産を置いて帰った。
いけないシリーズのメイド服のデザイン画。超ミニスカでピタピタ。上はビスチェにシースルのブラウスに首枷に見立てた黒い革で作ったチョーカー。
いけないシリーズのアラビアンダンサー服のデザイン画。中にホットパンツとビスチェを着させて、その上に赤の透ける布に金の刺繍をさした衣装を着させる。
そしていけないシリーズの男ストリッパー服のデザイン画。黒革のホットパンツと兵服風ベスト、それはまるでバチェロッテパーティに呼ばれたストリッパーのような衣装だ。
さすがにいけないシリーズの聖職者衣装は止めておいた。作るか作らないかはお任せだ。
あと、カルゼン王子にお礼の手紙を書いた。面倒をみてくれた人だから。
屋敷に帰ってパパとママに叱られている間にヴラシスが引っ越してきた。
家出以来ヴラシスは出来る限り私と一緒にいる。屋敷の中でも手を繋いで歩いてる。夜な夜な互いの部屋に忍び込んでイチャイチャしている。パパは泣いていた。
半年後に結婚して堂々とイチャイチャ出来るようになった。
「エリシア!エリシア!」
「痛い~!」
「どうしよう、エリシアが苦しんでる!」
「痛い~!!」
結婚して4年後、赤ちゃんが生まれた。
「オギャー!オギャー!」
「男の子です」
「エリシア、よく頑張った」
「……」
私の色をしたヴラシスに似た子だった。
「エリシア!?エリシア!!」
意識を失った私は出血が多く死にかけた。ベッドから出られるようになるまで2ヶ月もかかった。ヴラシスはよほど怖かったのか子供はもう作らないと宣言をした。
「また描いていたのか?」
「うん」
妊婦服やベビー用品のデザイン画を描いている。
「あ~」
ヴラシスは出来る限り赤ちゃんの面倒を見ている。もちろん乳母やメイドはいるのだけど、抱っこしたりオムツを変えたり沐浴させたり本の読み聞かせをしている。
この世界は不便極まりないし、怪我や病気は死につながることも少なくない。虫歯なんか最悪だ。そして妊娠出産は高リスク。
だけどこんなに愛してもらえるならこの世界に生まれてよかったかな。
子供の頃はヴラシスに冷たかった。いつ彼の気持ちが変わってもおかしくなかったのに。
「ヴラシス、愛してるわ」
「俺も愛してるよ、エリシア チュッ」
執着系王子で良かった。
お詫びにたくさん優しくしようと思う。
完結
「あの、お嬢様」
「はい」
「そろそろ戻ってはいかがですか?」
「邪魔ですか?」
「日に焼けてしまいます」
「大丈夫です」
ここは正門。ここなら誰も探しに来ないかなって。
ちょっと独りになりたかった。あんまりお金持ってないし。宝石とか売れば平民として生きる資金にはなると思うけど、そんなことをしたらパパとママの寿命を縮めちゃうし。まだ帰りたくないのにベルデマレには王宮以外の伝手はない。宿に泊まるとしたらキュアノスの私兵達も泊まらせなくてはならないから厳しい。帰るしかないのかな…などと考えていた。
また正門が開いたけど馬車と騎馬隊がすぐに止まった。
「キュアノス嬢!?」
見上げるとゼノン卿が馬から降りている所だった。
「心配したんですよ!!」
「……」
ガチャ
「エリシア!」
馬車から降りて来たのはヴラシスだった。
逃げようとしたけど簡単に追いつかれて持ち上げられた。
「放して!!」
「エリシア、愛してるんだ!あの補佐見習いは王太子妃付きだ。たまたま食事の時間が一緒になって、あのときは彼女がつまずいて俺の腕を掴んだだけだ」
「絶対おかしいもん!」
「何が」
「ヴラシスが我慢できるはずないもん!」
「何を」
「エッチ!」
「……」
ゼノン卿以外は“エッチってなんだ?”という顔をしている。
「あのな、俺は女としたいんじゃない、エリシアだからしたいんだ」
「……」
「仕事をする以上、こういうことはある。女を全て避けられない。それは分かってもらわないと」
「ヴラシス」
「寂しかったんだな?ごめんな」
「うん」
「戻ったらキュアノス邸に引っ越すから」
「え?」
「義父上がエリシアの家出に堪えて、陛下と話し合ってくれた。3年待たずに今から半年後に結婚、一緒に住むのはすぐだ」
「私、拷問の仕方とか詳しいの」
「知ってる。他殺に見せる殺害方法も知ってるんだよな?」
「うん」
「証拠が出ないように肉を細かくして豚に与えて骨は砕いて海か川に流すんだよな?」
「うん」
「育児をしない男は嫌いなんだよな?」
「うん」
「浮気したらアレを5分の1を残してカットして辱めるんだよな?」
「うん」
「俺にはエリシアだけだ。嫉妬して俺を殴ろうとも全然構わない。どこかに家出しても必ず探し出して連れ戻す。だがそのときに男がいたら殺すからな」
「うん」
「良い子にしていたか?」
「…お金巻き上げてた」
「は?」
「ヴラシス、王妃様にお願いして温泉に行こう?」
「すぐに頼みに行こう」
ヴラシスは陛下達に挨拶を済ませ、温泉離宮の使用許可をもらい私を連れて行ってくれた。5日間籠ったあと、オヴェルへ向けて出発した。
もちろん、お土産を置いて帰った。
いけないシリーズのメイド服のデザイン画。超ミニスカでピタピタ。上はビスチェにシースルのブラウスに首枷に見立てた黒い革で作ったチョーカー。
いけないシリーズのアラビアンダンサー服のデザイン画。中にホットパンツとビスチェを着させて、その上に赤の透ける布に金の刺繍をさした衣装を着させる。
そしていけないシリーズの男ストリッパー服のデザイン画。黒革のホットパンツと兵服風ベスト、それはまるでバチェロッテパーティに呼ばれたストリッパーのような衣装だ。
さすがにいけないシリーズの聖職者衣装は止めておいた。作るか作らないかはお任せだ。
あと、カルゼン王子にお礼の手紙を書いた。面倒をみてくれた人だから。
屋敷に帰ってパパとママに叱られている間にヴラシスが引っ越してきた。
家出以来ヴラシスは出来る限り私と一緒にいる。屋敷の中でも手を繋いで歩いてる。夜な夜な互いの部屋に忍び込んでイチャイチャしている。パパは泣いていた。
半年後に結婚して堂々とイチャイチャ出来るようになった。
「エリシア!エリシア!」
「痛い~!」
「どうしよう、エリシアが苦しんでる!」
「痛い~!!」
結婚して4年後、赤ちゃんが生まれた。
「オギャー!オギャー!」
「男の子です」
「エリシア、よく頑張った」
「……」
私の色をしたヴラシスに似た子だった。
「エリシア!?エリシア!!」
意識を失った私は出血が多く死にかけた。ベッドから出られるようになるまで2ヶ月もかかった。ヴラシスはよほど怖かったのか子供はもう作らないと宣言をした。
「また描いていたのか?」
「うん」
妊婦服やベビー用品のデザイン画を描いている。
「あ~」
ヴラシスは出来る限り赤ちゃんの面倒を見ている。もちろん乳母やメイドはいるのだけど、抱っこしたりオムツを変えたり沐浴させたり本の読み聞かせをしている。
この世界は不便極まりないし、怪我や病気は死につながることも少なくない。虫歯なんか最悪だ。そして妊娠出産は高リスク。
だけどこんなに愛してもらえるならこの世界に生まれてよかったかな。
子供の頃はヴラシスに冷たかった。いつ彼の気持ちが変わってもおかしくなかったのに。
「ヴラシス、愛してるわ」
「俺も愛してるよ、エリシア チュッ」
執着系王子で良かった。
お詫びにたくさん優しくしようと思う。
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