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閨係の選抜
しおりを挟む閨係は書類審査を経て王城で二次審査が行われる。
身体検査と貴族令嬢としての振る舞いが出来るかをみる。
私は身体検査の直後に気を失い、ありさの記憶がよみがえった。
さらに一週間後、選定のためにある部屋に10名の女性が集められた。
16歳から19歳までの男爵令嬢か子爵令嬢だ。
「カイン第ニ王子殿下にご挨拶なさい」
10名がカーテシーをした。
「全員裸になって一番から一人ずつ名を告げなさい」
侍女長の指示に従い、服を脱ぎ名を名乗る。
私の番がやってきた。
「クロネック子爵家の長女アリサと申します。歳は16歳です」
カイン王子殿下は立ち上がり、私に上着を羽織らせた。
「アリサで決まりだ」
「かしこまりました。今夜からで宜しいでしょうか」
「アリサを後宮の貴賓室へ移せ」
「かしこまりました」
他の令嬢達が服を着て退室して行く中、殿下はじっと私を見つめていた。
「病気などは無いか」
「はい、殿下。健康で純潔でございます」
「嫌な思いをさせたな」
「?」
「皆の前で裸にするなど」
「仕方がございません。閨係として殿下にご奉仕する身です。体の好みも確認していただかなくてはなりません」
「……ドレスは持ってきているか?」
「三着持ってまいりました」
「少ないな」
「閨係の仕事着はナイトドレスでございます。
王城から出ることは基本的にはございません。
殿下の婚姻の日に私はこちらを去りますが、その時には流行遅れでしょう。
その代わりワンピースを三着別に用意いたしました」
「分かった。今夜は話だけしよう」
「かしこまりました」
その後、私はカイン王子殿下の後宮にある貴賓室へ案内された。
王子殿下の住む宮があり、そこから其々の妃や妾や閨係を住まわせる後宮が渡り廊下で繋がっている。
其々の専用のラブホが直結してるみたいな感じ?
通常閨係は、王子殿下に奉仕するためのベッドルームが後宮にあり、その直ぐ隣の使用人部屋を当てがわれる。
だけど私は、二番目に豪華な部屋へ案内されたのだ。
貴賓室は実家よりも豪華で手入れの行き届いた部屋だった。
「アリサ様。カイン王子殿下は話だけと仰いましたが、お気持ちが変わるかもしれません。
初夜になってもいいように準備をいたしましょう。
夕食は消化にいいものを少量いただくという決まりです。分かりましたね?」
「はい。侍女長」
夜から朝の間に王子殿下のお相手をする。
それ以外は後宮の中でのんびりしていていい。
メイドを連れていれば後宮の庭園限定で散歩もできる。
私は読書をして過ごした。
そして夜、本当に話すだけだった。
産まれてからここに来るまでのことを話すように命じられたが、ぼかして話した。貴族である以上、クロネック子爵家の内情を話すわけにはいかない。
婚約解消についても聞かれた。
「私が至らなかっただけでございます」
「…アリサ、かしこまった言葉遣いはこの時間に聞きたくない」
「しかし、不敬を疑われてしまいます」
「侍女長にも王子宮と俺の後宮の全ての者に、私の命令だと伝えよう。さあ、カインと呼んでくれ」
「カイン様」
「日中、退屈ではないか?」
「閨の後は好きなだけ睡眠を取り、その後は食事も自由です。本を読んで過ごします」
「いいか、アリサ。悲しい時や体調が優れない時は正直に教えてくれ。俺はアリサを大事にしたい」
「ありがとうございます、カイン様」
その後も、夜はお茶を飲みながらお話しをしてカイン様と過ごした。
そして何故か、二日目の夜から夕食の量や品数が増えた。
採寸もしてドレスを作ってくれるらしい。
カイン殿下はとても優しい。
元婚約者と婚姻しなくて本当に良かった。
採用から一週間後、ついに初夜を迎えた。
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