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魅惑を隠していた男
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2週間前の柴田さんの依頼の評価が付いた。星をフルに付けてもらった。
結婚式で再会した娘さんには穏やかに祝いの言葉を述べて、披露宴まで終わるとお別れを言ったのだとか。今後も交流を持ちたいと言われたけど、事故のときのことは忘れられないしどうしても恐怖が蘇るから会うのは最後にしたいと断ったみたい。
どうやら咲希さんは、結婚式に出席するための特殊メイクを柴田さんに提案していたらしく、咲希さんの友人を巻き込んで格安でメイクしたらしい。
しかし大輝くんが単独で私の母に会いに行ったなんて驚いた。
「楓」
「怒っていませんよ」
「本当に?」
「はい」
「じゃあ何で抵抗するんだ?」
「早くゆっくり眠りたいだけです」
「その手伝いをしようと、」
「そう言って毎回疲れ切って眠ることになってるじゃないですか!」
「…喜んでくれているものだとばかり。まさか俺、下手なのか」
「ち、違いますけど、」
「だよな?」
その顔!ニヤニヤしちゃって!
「じゃあ5分だけ」
「5分!?キスだけで終わっちゃうだろう」
「いいえ。ハグだけで終わります」
「飽きたのか?だったら場所を変えるか。ホテル?車?外?」
「もう!そう言いながら服を脱がすのは止めてくださいっ」
「仕方ない。受け入れる気になるまでたっぷり可愛がろう」
「大輝くんっ!」
翌朝、
「若いっていいわねぇ」
「っ!!」
「妹役をやるはずなのにキスマークを付けて出社するんだから」
「それは大輝くんに言ってください」
揶揄いながら私のメイクをしてくれているのは咲希さんだ。
「わざとじゃない?郡司さんが妹役を依頼したから」
「ふぁ~」
「大きなアクビだこと。大輝を叱らなくちゃね」
「ぜひそうしてください」
10時になると郡司さんが迎えに来てくれたので下に降りた。
「おはよう」
「お、おはようございます」
いつもの郡司さんはお仕事モードの仮面を被っていたのだと直ぐに分かった。髪型も違うし服もジャケットは羽織ってはいるけどラフだ。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
助手席のドアを開けてもらい乗車した。彼の助手席に乗ったことがないので違和感というかちょっと緊張する。
「妹と仲が悪くてね。仲の良い妹との生活を体験したかったんだ」
「そうなんですね」
「嘘だよ。幼い頃は従姉にいじめられて従妹なら良かったのにと思った覚えはある」
「……」
「ごめんね、素は意地悪かもしれない」
「郡司さん…」
「可愛いなぁ」
引き受けなきゃ良かった。この人は日頃この魅惑の能力を隠して生きてるのか発揮する相手を選んでいるのか。私をチラッと見てニヤリと口角を上げる郡司さんはキラキラしてる。
「妹役ですよね?」
「そのつもりだけど、俺はアクターじゃないからお兄ちゃん役は上手くできないかもしれない」
満面の笑みの郡司さんは私を振り回したいみたい。
この車に脱出ボタンは付いてないのかな。
ダメダメ!私は『アクター』の楓!
「規約違反は駄目ですよ。今日はお兄ちゃんと妹のおでかけですからね。逸脱すれば終了ですよ」
「じゃあ、次からは恋人役で依頼を入れようかな」
「お引き受けしません」
「雪嶋春翔さんの恋人依頼は受けるのに?他にも受けてるみたいなのに俺だけ駄目なのは酷くないか?」
「酷くはありません。郡司さんと雪嶋さんの関係を考えたら引き受けることはできません」
「ところで、今日行く場所は妻の会社のパーティなんだ」
「はい!?」
「楓ちゃんのことを話したら会いたいって」
「ええ!?なんて話したんですか!」
「口説きたい子がいるって」
「修羅場じゃないですか!」
「そんなわけがないよ。俺たちは夫婦の看板を出してるだけなんだから」
咲希さんってば、郡司さんの名前だけで仕事オッケーしたのね。
「妹役のはずですよね。帰ってもいいですか?」
「パーティが嫌なら2人っきりになれて誰にも邪魔をされない場所に行こうか」
「郡司さん、顔が良くなかったらセクハラで訴えられますよ」
「ハハッ、ごめんごめん」
「あそこのコンビニでテーザー銃を売ってませんかね」
「日本では禁止のはずじゃないか?仕事で海外に行ったとき、仕事仲間が酔っ払って“撃って欲しい”とお金握らせて警備員に撃ってもらってたよ」
「はい!?」
「馬鹿だよな。動画を撮ってやったんだ。面白い絵が撮れたから警備員には俺からもチップを渡したよ」
「郡司さん…」
この郡司さんをいじめた従姉って強者じゃないの?
「君を予約するのに何役として依頼していいか分からなくて。警戒せずに引き受けてもらえそうな妹役で依頼したんだ。友人役だと俺と君じゃ変だしね。
目的は“家族との食事”、そこは嘘じゃないだろう?役は忘れてくれていいよ」
「必然的に役はなかったことになりますよね。奥様は郡司さんの家族構成をご存知でしょうから」
郡司さんはニヤリと笑った。
結婚式で再会した娘さんには穏やかに祝いの言葉を述べて、披露宴まで終わるとお別れを言ったのだとか。今後も交流を持ちたいと言われたけど、事故のときのことは忘れられないしどうしても恐怖が蘇るから会うのは最後にしたいと断ったみたい。
どうやら咲希さんは、結婚式に出席するための特殊メイクを柴田さんに提案していたらしく、咲希さんの友人を巻き込んで格安でメイクしたらしい。
しかし大輝くんが単独で私の母に会いに行ったなんて驚いた。
「楓」
「怒っていませんよ」
「本当に?」
「はい」
「じゃあ何で抵抗するんだ?」
「早くゆっくり眠りたいだけです」
「その手伝いをしようと、」
「そう言って毎回疲れ切って眠ることになってるじゃないですか!」
「…喜んでくれているものだとばかり。まさか俺、下手なのか」
「ち、違いますけど、」
「だよな?」
その顔!ニヤニヤしちゃって!
「じゃあ5分だけ」
「5分!?キスだけで終わっちゃうだろう」
「いいえ。ハグだけで終わります」
「飽きたのか?だったら場所を変えるか。ホテル?車?外?」
「もう!そう言いながら服を脱がすのは止めてくださいっ」
「仕方ない。受け入れる気になるまでたっぷり可愛がろう」
「大輝くんっ!」
翌朝、
「若いっていいわねぇ」
「っ!!」
「妹役をやるはずなのにキスマークを付けて出社するんだから」
「それは大輝くんに言ってください」
揶揄いながら私のメイクをしてくれているのは咲希さんだ。
「わざとじゃない?郡司さんが妹役を依頼したから」
「ふぁ~」
「大きなアクビだこと。大輝を叱らなくちゃね」
「ぜひそうしてください」
10時になると郡司さんが迎えに来てくれたので下に降りた。
「おはよう」
「お、おはようございます」
いつもの郡司さんはお仕事モードの仮面を被っていたのだと直ぐに分かった。髪型も違うし服もジャケットは羽織ってはいるけどラフだ。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
助手席のドアを開けてもらい乗車した。彼の助手席に乗ったことがないので違和感というかちょっと緊張する。
「妹と仲が悪くてね。仲の良い妹との生活を体験したかったんだ」
「そうなんですね」
「嘘だよ。幼い頃は従姉にいじめられて従妹なら良かったのにと思った覚えはある」
「……」
「ごめんね、素は意地悪かもしれない」
「郡司さん…」
「可愛いなぁ」
引き受けなきゃ良かった。この人は日頃この魅惑の能力を隠して生きてるのか発揮する相手を選んでいるのか。私をチラッと見てニヤリと口角を上げる郡司さんはキラキラしてる。
「妹役ですよね?」
「そのつもりだけど、俺はアクターじゃないからお兄ちゃん役は上手くできないかもしれない」
満面の笑みの郡司さんは私を振り回したいみたい。
この車に脱出ボタンは付いてないのかな。
ダメダメ!私は『アクター』の楓!
「規約違反は駄目ですよ。今日はお兄ちゃんと妹のおでかけですからね。逸脱すれば終了ですよ」
「じゃあ、次からは恋人役で依頼を入れようかな」
「お引き受けしません」
「雪嶋春翔さんの恋人依頼は受けるのに?他にも受けてるみたいなのに俺だけ駄目なのは酷くないか?」
「酷くはありません。郡司さんと雪嶋さんの関係を考えたら引き受けることはできません」
「ところで、今日行く場所は妻の会社のパーティなんだ」
「はい!?」
「楓ちゃんのことを話したら会いたいって」
「ええ!?なんて話したんですか!」
「口説きたい子がいるって」
「修羅場じゃないですか!」
「そんなわけがないよ。俺たちは夫婦の看板を出してるだけなんだから」
咲希さんってば、郡司さんの名前だけで仕事オッケーしたのね。
「妹役のはずですよね。帰ってもいいですか?」
「パーティが嫌なら2人っきりになれて誰にも邪魔をされない場所に行こうか」
「郡司さん、顔が良くなかったらセクハラで訴えられますよ」
「ハハッ、ごめんごめん」
「あそこのコンビニでテーザー銃を売ってませんかね」
「日本では禁止のはずじゃないか?仕事で海外に行ったとき、仕事仲間が酔っ払って“撃って欲しい”とお金握らせて警備員に撃ってもらってたよ」
「はい!?」
「馬鹿だよな。動画を撮ってやったんだ。面白い絵が撮れたから警備員には俺からもチップを渡したよ」
「郡司さん…」
この郡司さんをいじめた従姉って強者じゃないの?
「君を予約するのに何役として依頼していいか分からなくて。警戒せずに引き受けてもらえそうな妹役で依頼したんだ。友人役だと俺と君じゃ変だしね。
目的は“家族との食事”、そこは嘘じゃないだろう?役は忘れてくれていいよ」
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郡司さんはニヤリと笑った。
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