【完結】高給アクターは夢で癒す

ユユ

文字の大きさ
28 / 41

余罪

しおりを挟む
早かった。

あの男のスマホと自宅の外付けHDDの中に不倫以外の動画や写真がたくさん見つかった。
薬物で眠らせ鞄をあさり、名前がわかるものを取り出してカメラに写した。できるだけ顔のわかるものを選んでいた。免許証、社員証、マイナンバーカード。無い場合はクレジットカード。それは7人もいた。ニュースで名乗り出た被害者が2人、被害に気付いていなかった3人、被害にあった気はしたけど加害者の顔を覚えていなかった2人。
その内の1人が15歳だった。某所で立って声を掛けていた。そこにあの男が引っかかった。ネカフェに誘い飲み物を飲んだ後寝てしまった。起きたら交渉していた7千円が置いてあった。財布の中のお金は盗まれていない。だけど体に違和感があった。眠らされて好き勝手されたと分かった。交縁女子とかパパ活女子とか言われているけど結局は売春婦として記録が残るだろうし親にバレると思った。だから被害を届けることはしなかったらしい。

私を含めた8人に対する証拠が動画で揃っているため、起訴も早く裁判も早かった。争うところは量刑だけだったから。かなり長いこと出てくることはない。
私への加害は未遂に致傷が加わって量刑が重くなった。診断書が仕事をしてくれた。

今回の私の事件では男のマンションから公園までの民家の防犯カメラやコンビニの防犯カメラ、交番の音声付きカメラの動画が男の悪質性を証明した。
あのとき、嘘でも“誤解していた、申し訳ない”と言っていたら印象は変わったかもしれないと呟いたら“身分証明書を映した男が?”と母が呟き返した。



「と、いうわけで無事終わりました。活動は止めずに済みます」

「お疲れ様」

「お疲れ様です」

ここは都内のスタジオ。報告したいことがあると言ったら春翔さんと郡司さんに呼ばれてCM撮影の現場にお邪魔している。
今は休憩中。向こうで女優さんがメイク直しをしながらチラチラとこちらを見ている。

「女優さん、やっぱりテレビで見るより綺麗ですよね、顔も小さいですし」

こういう現場でなくても、日頃偶然見かけることがある。某公園の近くでは元野球選手、オープンカーに乗って目の前を走るベテランのフリーアナウンサー、アウトレットでは俳優カップル、タクシーから降りてきた大物芸能人のモデルの娘、地下駐車場ですれ違った朝の番組の司会を任されていたお笑い芸人、レストランのトイレで横に並んだベテラン女優、いずれにしてもテレビとは違った。ぽっちゃり目かなと思っていた人は顔が小さくて足が長くてスタイルが良かったし、細いと思っていたけど実物は頭蓋骨の幅まで細い人だったし、ガッチリしていると思った人は普通だった。
春翔さんと共演している若手女優さんもテレビよりも小顔で美人だ。

「俺は楓ちゃんの方が可愛いと思う」

「身内贔屓のお世辞は公開処刑の気分になるので止めてください」

「私もそう思います。性格も良くて可愛いです」

いつも真面目顔の郡司さんが優しい目をしてそんなことを言うものだから顔がカーッと熱くなった。思わず両手で顔を覆った。

「2年くらい早く出会っていれば楓さんを口説いたのに、残念です」

そう言えば郡司さんは1年半前に見合い婚をしたと言っていた。

「郡司さん、楓ちゃんは駄目です。
楓ちゃん、何で郡司さんにだけ赤くなるの?」

拗ねて口を尖らす春翔さんはキュートだ。

「郡司さんが言いそうにないセリフだったから不意打ちを受け反応しただけです。ちゃんとお世辞だって分かってます」

「ギャップか、ギャップがいいのか」

「雪嶋さん、お願いします!」

スタッフから声がかかった。

「郡司さんと2人きりにするの嫌だなぁ」

「女優さんが待っていますよ」

「郡司さん、俺の代わりに行ってきてください」

「私がクビになります。どうぞ春翔さんご指名です」

春翔さんは渋々撮影に戻った。
あの女優さん、春翔さんに気があるんじゃないかな。それとも好意があるような演技をしているのかな。恋愛的な台本ではないみたいだけど。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

【完結】僻地の修道院に入りたいので、断罪の場にしれーっと混ざってみました。

櫻野くるみ
恋愛
王太子による独裁で、貴族が息を潜めながら生きているある日。 夜会で王太子が勝手な言いがかりだけで3人の令嬢達に断罪を始めた。 ひっそりと空気になっていたテレサだったが、ふと気付く。 あれ?これって修道院に入れるチャンスなんじゃ? 子爵令嬢のテレサは、神父をしている初恋の相手の元へ行ける絶好の機会だととっさに考え、しれーっと断罪の列に加わり叫んだ。 「わたくしが代表して修道院へ参ります!」 野次馬から急に現れたテレサに、その場の全員が思った。 この娘、誰!? 王太子による恐怖政治の中、地味に生きてきた子爵令嬢のテレサが、初恋の元伯爵令息に会いたい一心で断罪劇に飛び込むお話。 主人公は猫を被っているだけでお転婆です。 完結しました。 小説家になろう様にも投稿しています。

処理中です...