【完結】初恋の彼に 身代わりの妻に選ばれました

ベルティーユ／後悔

【 ベルティーユの視点 】


私には婚約者がいた。
好みの顔じゃなかったけど、私を蔑ろにする行為は許せなかった。

彼は誰にでも優しく振る舞うから令嬢が勘違いをして付き纏うようになる。

だからジュースをかけてたり、足を掛けたりして教えることにしていた。


学園に入ると、今まで言いなりだった婚約者がみんなの前で声を張った。

「ベルティーユ・ビビオナード！
お前との婚約を破棄する！！」

一気に私に注目が集まった。

「酷いわ！私が何をしたと言うの」

同情を集めるチャンスだと思ったのに…

「お前はいつも気に入らないと暴力を振るう！
私の友人の令嬢も 親戚の令嬢も 取引相手の令嬢も ただ手助けしただけの令嬢にさえ暴力を振るった」

「私は殴ってなどいないわ」

「足を掛けて転ばせれば怪我をするのが分からないのか？ 足や手を擦りむいたり、中には手首や足首の捻挫をしたり、割れたカップで切った者もいた！

茶をかければ火傷をするし、冬に冷たいジュースを掛ければ風邪をひく。

それに大事なドレスを汚されたり破損させられたりするのは心の傷を負わせる行為だ！」

「いつ私がそんな事を？」

すると周囲の令嬢達が手を挙げた。

「足を掛けられて擦りむいたり手首を捻挫したわ」

「私は足首の捻挫よ」

「私は指が折れたわ」

「大事な思い出のドレスだったのに」

「火傷をしたわ」

「私も」

何なのよ！今日に限ってみんなして！！

「証人は山ほどいる。お前のような女はうんざりだ！」


屋敷に帰り、お父様に訴えたけど、

「手紙が届いたよ。ベルティーユ。やってはいけないことだろう」

「私の婚約者に手を出すから」

「調査はしていた。あまりにもお前とのトラブルが多いから。

間違いなく彼は潔白だし、言い寄っていた令嬢もいない。

婚約は破棄された。反省しなさい」


それからは社交でも学園でも無視された。
誰も私に話しかける人はいない。

そこで新たな婚約者をと探していると学園内に人気の令息が婚約していなかった。

彼の名はユベール・ガルザック侯爵令息。跡継ぎだ。

裕福だし、容姿もいい。
申し込んだが断られた。

でも何ヶ月かしてまだ決まっていなかった。
次の申し込みで婚約者に選ばれた。

「ベルティーユ。条件付きだ。
子を産めば離縁可能で慰労金を出すらしい。
産めなければそれはそれで離縁となる。
厳しい条件だが、今のお前は他に縁談を望めない」

「受けますわ」


こうして婚約したけど、ユベール様は全く私を寄せ付けなかった。それにお金に関して厳しかった。

婚姻後はもっと厳しかった。

夫婦の間は使わないというし、王都の屋敷は当主夫妻以外は夫婦の間が無い。
私は何故か客室を与えられた。

社交も必要最低限でドレスも質素。
普段のドレスはたくさん持っているからと買ってくれなかった。

宝石も青は身につけさせてもらえなかった。


だけど唯一、閨事だけはしっかりとあった。
キスは嫌だと言われた。
だけど唾液の交換を受け入れられない人もいると聞いたことがあったので仕方ないと諦めた。

閨の時間は良かった。
気持ち良かったし、精を受けて幸せだった。
全くスキンシップのない彼が触れてくれるのが嬉しかった。

だけどまだしばらくは閨事を楽しみたかった私はこっそり避妊薬を飲み続けた。

不妊離婚の目安は五年と聞いたことがある。
四年過ぎたら避妊薬を使わないようにしようと思っていた。

なのにバレて離縁されてしまった。

あんなに怒るなんて。そんなに私との子が欲しかったのかと後悔した。



お父様もお母様も買い物を許してくれなかった。

社交も招待されなかったのでビビオナード家主催のものしか出られなかった。



そんな中、先日のビビオナード家の夜会でユベール様の話を聞いた。

「ガルザック家の新しい奥様はベルティーユ様と同じ髪色と瞳の色をしていて、ベルティーユ様の身代わりだろうと友人が言っていましたわ」

「何故別れたのかしら」

「さあ。

新しい奥様は亡くなったラザール殿下の妃だった方らしいですわ」

「犠牲だとか生贄だとかいわれた方ですわね。
どうしてガルザック家に？」

「遠縁だそうですわ」

「不憫に思われたのかしら？」

「かもしれませんわね」


ユベール様はショックだっただけで勢いで私と別れたのかも知れない。

やり直せると思ってしまった。