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サガスの管理人 歪み
【 サガス伯爵領の管理人ドミニクの視点 】
遅い。
遅すぎる。
「ドミニク様!」
「どうだった」
息を切らせて部下のジャンが駆け込んできた。
「数人は逃げたようですがかなりの者が捕まりました!」
「あの人数をか」
「近寄れませんでしたので想定の話ですが、次々と牛を乗せるための荷馬車に奴らを乗せていました。
遠目ですが、数人斬り殺されています」
まずい!奴らは口を割る!
「手練れを雇って直ぐに口封じに行かせろ」
だが、この決断があんなことになるとは思わなかった。
私はサガス伯爵家の三男として生まれた。
生まれながらに長男アンソニーのスペアでしかない運命だった。しかもアンソニーは良く言えば温和 悪く言えば阿保だった。
次男ベンジャミンは そんなアンソニーに仕えるのは嫌だと領地の遠い男爵家に婿入りした。
私は残ってサガス領の管理人をすることになった。
正解だった。
アンソニーは報告書さえ読んでいないようだ。
私は素晴らしい傀儡を手に入れた。
領地内で様々な搾取を行い私腹を肥やした。
収穫物や生産品の横流しをしたり、子供を買い取って男は力仕事や裏仕事、女は体を売らせた。
何年か続けるうちに女の場合は闇オークションを開いた。初物が手に入ると裕福な顧客を呼んで仮面を渡す。女を裸にして台の上に立たせれば顧客が勝手に値を釣り上げてくれる。
あくまでも破瓜の権利だけだ。
顧客もそれぞれ好みがある。
育った処女を望む者、処女ならなんでもいいとする者、胸が膨らみかけたあたりの処女を好む者、胸が膨らんでいない処女。
色白か、髪や瞳の色、顔立ち、年齢などで最低値を決める。
この商売が一番金になる。
破瓜が済めば、隠れ家のような売春小屋に繋いで客を取らせる。
領内に三ヶ所で、町の娼館とは離れた場所に構えている。
使い物にならなくなればその辺に埋めるだけ。
貧しい領民は女児が生まれることを期待して子作りをし、できるだけ綺麗に育てる。
栄養をとらせ 日焼けをさせず 傷を作らせず 髪や肌の手入れをさせ 男を近寄らせない。
そしていつ頃出荷するかは両親次第だ。
私は母親を労い しっかりと金を握らせる。
産むのは母親 いい商品に仕上げるのも母親だからだ。
金とは別に母親用に何かを贈る。
ワンピースだったり、鞄だったり。
双子の女児を状態良く出荷できた母親には石付きの髪飾りを贈った。
“サガス家からの気持ち” と言えば夫は取り上げて売り払おうとしない。
そしてまた、母親は頑張ろうとする。
中には私に誘いをかけてくる女もいる。
“夫よりドミニク様との子の方が美人になるはずだ”と。
夫がいない時間帯に念書を書かせてから種付けをした。飽きるまで通ったが、産まれたのは男児だったらしく死産とされた。
私に似た男児を育てるのは難しいと母親は判断したのだろう。
安定した裏事業となったが ここ数年 隣のヴェリテ領が国内一の領地と新聞に載ると、領民達の不満が表に出るようになった。
それがアンソニーの耳に入り 何とかしろと言ってきた。
無能のクセに。簡単なことなら先代からやってるだろう!
今話題になっていたのはヴェリテ産の肉牛だった。
アレを食べれば今までの肉が食えなくなると噂を耳にした。
計画をちゃんと練らせてから一頭盗ませ最寄りの屠殺場に運んだ。
知らせを受けて屠殺場へ向かい、解体させてその肉を食べた。
!!
旨みと甘みがまるで違うし、なんて柔らかいんだ!
私の分を確保して、残りをオークションに参加する顧客達に売った。
少しの間、その牛肉を食べ続けていたが在庫が無くなった。
冷蔵室もあるにはあるが、然程低くはなく腐らせてしまう。後は干して加工するくらいしかない。
あの牛肉を覚えてしまうと元の肉が紛い物のように感じた。
数ヶ月後、もう一頭盗ませた。
やはりこの肉でないと。
そしてまた肉が無くなった。
正規で買うとどうなるか調べさせたところ、
「予約販売だそうです。
しかも一度に買う量を家門毎に制限して、出荷日を知らせて取りに来させています。
全員揃ったところで解体して肉を渡すらしいです」
なるほど。輸送中の腐敗問題を買い手に対策させたのだな。
解体した直後に売るのだからヴェリテの非は無い。
「つまり買えないのだな?」
「何年も待つことになります」
「一頭盗ませろ」
「ドミニク様、先月盗んだばかりですよ?」
「いいから盗ってこい。人数を増やして行けばいい」
「かしこまりました」
これが今回の事件の経緯だ。
10時間後、
「ドミニク様!!」
「どうした。後始末は終わったか」
「それが、サガス領が…」
部下が話の途中で倒れた。
「おい!おい!!」
首筋に冷んやりとした何かが押し付けられた。
「サガス家の三男だな」
「誰だ! グッ」
目覚めるとサガス邸にいた。
遅い。
遅すぎる。
「ドミニク様!」
「どうだった」
息を切らせて部下のジャンが駆け込んできた。
「数人は逃げたようですがかなりの者が捕まりました!」
「あの人数をか」
「近寄れませんでしたので想定の話ですが、次々と牛を乗せるための荷馬車に奴らを乗せていました。
遠目ですが、数人斬り殺されています」
まずい!奴らは口を割る!
「手練れを雇って直ぐに口封じに行かせろ」
だが、この決断があんなことになるとは思わなかった。
私はサガス伯爵家の三男として生まれた。
生まれながらに長男アンソニーのスペアでしかない運命だった。しかもアンソニーは良く言えば温和 悪く言えば阿保だった。
次男ベンジャミンは そんなアンソニーに仕えるのは嫌だと領地の遠い男爵家に婿入りした。
私は残ってサガス領の管理人をすることになった。
正解だった。
アンソニーは報告書さえ読んでいないようだ。
私は素晴らしい傀儡を手に入れた。
領地内で様々な搾取を行い私腹を肥やした。
収穫物や生産品の横流しをしたり、子供を買い取って男は力仕事や裏仕事、女は体を売らせた。
何年か続けるうちに女の場合は闇オークションを開いた。初物が手に入ると裕福な顧客を呼んで仮面を渡す。女を裸にして台の上に立たせれば顧客が勝手に値を釣り上げてくれる。
あくまでも破瓜の権利だけだ。
顧客もそれぞれ好みがある。
育った処女を望む者、処女ならなんでもいいとする者、胸が膨らみかけたあたりの処女を好む者、胸が膨らんでいない処女。
色白か、髪や瞳の色、顔立ち、年齢などで最低値を決める。
この商売が一番金になる。
破瓜が済めば、隠れ家のような売春小屋に繋いで客を取らせる。
領内に三ヶ所で、町の娼館とは離れた場所に構えている。
使い物にならなくなればその辺に埋めるだけ。
貧しい領民は女児が生まれることを期待して子作りをし、できるだけ綺麗に育てる。
栄養をとらせ 日焼けをさせず 傷を作らせず 髪や肌の手入れをさせ 男を近寄らせない。
そしていつ頃出荷するかは両親次第だ。
私は母親を労い しっかりと金を握らせる。
産むのは母親 いい商品に仕上げるのも母親だからだ。
金とは別に母親用に何かを贈る。
ワンピースだったり、鞄だったり。
双子の女児を状態良く出荷できた母親には石付きの髪飾りを贈った。
“サガス家からの気持ち” と言えば夫は取り上げて売り払おうとしない。
そしてまた、母親は頑張ろうとする。
中には私に誘いをかけてくる女もいる。
“夫よりドミニク様との子の方が美人になるはずだ”と。
夫がいない時間帯に念書を書かせてから種付けをした。飽きるまで通ったが、産まれたのは男児だったらしく死産とされた。
私に似た男児を育てるのは難しいと母親は判断したのだろう。
安定した裏事業となったが ここ数年 隣のヴェリテ領が国内一の領地と新聞に載ると、領民達の不満が表に出るようになった。
それがアンソニーの耳に入り 何とかしろと言ってきた。
無能のクセに。簡単なことなら先代からやってるだろう!
今話題になっていたのはヴェリテ産の肉牛だった。
アレを食べれば今までの肉が食えなくなると噂を耳にした。
計画をちゃんと練らせてから一頭盗ませ最寄りの屠殺場に運んだ。
知らせを受けて屠殺場へ向かい、解体させてその肉を食べた。
!!
旨みと甘みがまるで違うし、なんて柔らかいんだ!
私の分を確保して、残りをオークションに参加する顧客達に売った。
少しの間、その牛肉を食べ続けていたが在庫が無くなった。
冷蔵室もあるにはあるが、然程低くはなく腐らせてしまう。後は干して加工するくらいしかない。
あの牛肉を覚えてしまうと元の肉が紛い物のように感じた。
数ヶ月後、もう一頭盗ませた。
やはりこの肉でないと。
そしてまた肉が無くなった。
正規で買うとどうなるか調べさせたところ、
「予約販売だそうです。
しかも一度に買う量を家門毎に制限して、出荷日を知らせて取りに来させています。
全員揃ったところで解体して肉を渡すらしいです」
なるほど。輸送中の腐敗問題を買い手に対策させたのだな。
解体した直後に売るのだからヴェリテの非は無い。
「つまり買えないのだな?」
「何年も待つことになります」
「一頭盗ませろ」
「ドミニク様、先月盗んだばかりですよ?」
「いいから盗ってこい。人数を増やして行けばいい」
「かしこまりました」
これが今回の事件の経緯だ。
10時間後、
「ドミニク様!!」
「どうした。後始末は終わったか」
「それが、サガス領が…」
部下が話の途中で倒れた。
「おい!おい!!」
首筋に冷んやりとした何かが押し付けられた。
「サガス家の三男だな」
「誰だ! グッ」
目覚めるとサガス邸にいた。
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