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逃さない契約書
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司祭「……ハロルド・ウィンター。貴方はアイリーン・ベロノワを妻とし……婚前に交わした契約を忠実に守ることを誓いますか」
新郎「はい、誓います」
司祭「アイリーン・ベロノワ。貴女はハロルド・ウィンターを夫とし、婚前に交わした契約を忠実に守ることを誓いますか」
新婦「はい!誓います!
これがその婚前契約書です!」
新郎「え!?」
司祭「確かに…両名の署名が済んでいますね。
では神殿で契約の箱へお入れいたします」
新郎「あ、」
新婦「よろしくお願いいたします。こちらはハロルド・ウィンター様からの希望をもとにして交わした契約です。私も謹んでお受けいたしましたの」
司祭はさっと契約書に目を通すと新郎を睨んだ。
司祭「アイリーン嬢、本当によろしいのですか?」
新婦「ええ。確実に従いますわ」
司祭「よろしいでしょう。二人を夫婦と認めます。
では、夫は妻のベールをあげて、ご自身の血を妻の額に付けてください」
ハロルド・ウィンターの人差し指に司祭が針で傷を付けた。
ハロルドは無傷の手の方でアイリーンのベールを上げた。
「っ!!」
固まったハロルドを司祭が促すと、ハロルドはアイリーンの額に血を付けた。そしてアイリーンも同じようにハロルドの額に己の血を付けた。
「ハロルドっ」
婚姻の儀が済んだばかりのハロルドの胸に飛び込んだのは ワインレッドの髪にターコイズの瞳の美しい女だった。
「トリシア、ここでは駄目だ。離れてくれ」
「今更手遅れですわ。私は先にお屋敷に参ります。
ハロルド様、トリシア様、ごゆっくりどうぞ」
新妻アイリーンは侍女と侍従を連れて教会から立ち去った。
神の家で、夫婦の誓いをしたばかりのハロルドが別の女とイチャつく様を見た参列者や司祭達は軽蔑の目を向けていた。
「司祭様、さっきの婚前契約書を返して貰いたい」
「は? なりません」
「あれは行き違いがあって、」
「貴方が既に署名したものではありませんか。
異議があるなら式が終わる前に申し出なければ撤回はできません。
奥方が去った後にそのような事を申されるなら、婚姻の儀を白紙にして貴方を破門にしますぞ」
「そんな大袈裟な」
「不誠実極まりない。
神に誓った数分後に 花嫁のいない隙に反故にしようとするなど、言語道断!
それに婚姻の儀に愛人を連れてくるのは止めなさい。なんと穢らわしい。
奥方が哀れでなりませんよ。
もし奥方と別れて 貴方とその愛人が婚姻したいと言ってもこの国の教会は認めないでしょう。
その時は他国で式を挙げて国に届け出てください」
「っ!!」
「失礼しちゃうわ!行きましょう」
~ 婚姻生活に関わる契約書 ~
互いに愛を求めない
互いに干渉しない
互いに愛人を持っても構わない
子は愛人に産ませるので性交渉はしない
互いの愛人と関わらない
妻はウィンター公爵家の事に口出ししない
パーティなどは愛人を伴う
妻は要望があれば夫に願い出る
夫は妻の衣食住に責任を持ち、妻の予算などの待遇は前公爵夫人と同じ額とする
毎月8割を先に現金支給し、使い道に口出ししない
ただしドレスなどの費用は残りの2割に抑える
オーバーした分は 妻は支給された現金から支払う
夫は妻が指名する使用人を雇わねばならない
その使用人に関しては 主人は妻になり、指示は妻が行うものとする
夫は妻の部屋に許可なく入れない
契約を変える際には双方の承諾が必要で、立会人は司祭様か国の法務関係に長く勤める者とする。
離縁の際、夫は妻に慰謝料を支払うものとする
金額は事由により異なるため 二枚目の表を参照する
新郎「はい、誓います」
司祭「アイリーン・ベロノワ。貴女はハロルド・ウィンターを夫とし、婚前に交わした契約を忠実に守ることを誓いますか」
新婦「はい!誓います!
これがその婚前契約書です!」
新郎「え!?」
司祭「確かに…両名の署名が済んでいますね。
では神殿で契約の箱へお入れいたします」
新郎「あ、」
新婦「よろしくお願いいたします。こちらはハロルド・ウィンター様からの希望をもとにして交わした契約です。私も謹んでお受けいたしましたの」
司祭はさっと契約書に目を通すと新郎を睨んだ。
司祭「アイリーン嬢、本当によろしいのですか?」
新婦「ええ。確実に従いますわ」
司祭「よろしいでしょう。二人を夫婦と認めます。
では、夫は妻のベールをあげて、ご自身の血を妻の額に付けてください」
ハロルド・ウィンターの人差し指に司祭が針で傷を付けた。
ハロルドは無傷の手の方でアイリーンのベールを上げた。
「っ!!」
固まったハロルドを司祭が促すと、ハロルドはアイリーンの額に血を付けた。そしてアイリーンも同じようにハロルドの額に己の血を付けた。
「ハロルドっ」
婚姻の儀が済んだばかりのハロルドの胸に飛び込んだのは ワインレッドの髪にターコイズの瞳の美しい女だった。
「トリシア、ここでは駄目だ。離れてくれ」
「今更手遅れですわ。私は先にお屋敷に参ります。
ハロルド様、トリシア様、ごゆっくりどうぞ」
新妻アイリーンは侍女と侍従を連れて教会から立ち去った。
神の家で、夫婦の誓いをしたばかりのハロルドが別の女とイチャつく様を見た参列者や司祭達は軽蔑の目を向けていた。
「司祭様、さっきの婚前契約書を返して貰いたい」
「は? なりません」
「あれは行き違いがあって、」
「貴方が既に署名したものではありませんか。
異議があるなら式が終わる前に申し出なければ撤回はできません。
奥方が去った後にそのような事を申されるなら、婚姻の儀を白紙にして貴方を破門にしますぞ」
「そんな大袈裟な」
「不誠実極まりない。
神に誓った数分後に 花嫁のいない隙に反故にしようとするなど、言語道断!
それに婚姻の儀に愛人を連れてくるのは止めなさい。なんと穢らわしい。
奥方が哀れでなりませんよ。
もし奥方と別れて 貴方とその愛人が婚姻したいと言ってもこの国の教会は認めないでしょう。
その時は他国で式を挙げて国に届け出てください」
「っ!!」
「失礼しちゃうわ!行きましょう」
~ 婚姻生活に関わる契約書 ~
互いに愛を求めない
互いに干渉しない
互いに愛人を持っても構わない
子は愛人に産ませるので性交渉はしない
互いの愛人と関わらない
妻はウィンター公爵家の事に口出ししない
パーティなどは愛人を伴う
妻は要望があれば夫に願い出る
夫は妻の衣食住に責任を持ち、妻の予算などの待遇は前公爵夫人と同じ額とする
毎月8割を先に現金支給し、使い道に口出ししない
ただしドレスなどの費用は残りの2割に抑える
オーバーした分は 妻は支給された現金から支払う
夫は妻が指名する使用人を雇わねばならない
その使用人に関しては 主人は妻になり、指示は妻が行うものとする
夫は妻の部屋に許可なく入れない
契約を変える際には双方の承諾が必要で、立会人は司祭様か国の法務関係に長く勤める者とする。
離縁の際、夫は妻に慰謝料を支払うものとする
金額は事由により異なるため 二枚目の表を参照する
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