【完結】愛する女がいるから、妻になってもお前は何もするなと言われました

ユユ

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公爵邸

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ピアの懇願によって、公爵邸に引っ越した。

“体裁がありますから。

何もしなくていいと言われても、公爵家の体裁を悪くしていいとは書いてないと思います。

メイド長のことは本当に旦那様の意思ではございません。そんな事をすれば大奥様に叱られます”

そう言われたら仕方ない。

エリス達も、逆に私が我儘を言っているとか もっと酷い事を言われるかもと、恋活への影響を口にしたので渋々応じた。
 
その代わり、公爵の部屋のある階ではなく別の階に用意しろと要求した。しかもすぐ下とか嫌だと伝えた。


「お帰りなさいませ。若奥様」

多くの使用人が外に出迎えてくれた。

「アイリーン様ぁ~」

帰りを待ち侘びた飼い犬のように駆け寄ってきた。

「ピア、お部屋に案内してくれる?」

「はい!」


2階の奥の部屋に通された。
入室すると爽やかな香りが漂ってくる。
清潔感ある乙女の部屋という感じに仕上がっている。
夫人ではなく令嬢の部屋になっていた。

「いかがですか?
アイリーン様のイメージに仕上げました」

「ピアがやってくれたの?ありがとう。気に入ったわ」

「私、やる時はやる子なんです」

「そうね。頼もしいわ」

「アイリーン様」

「どうしたの?」

「一応この屋敷の主人がご挨拶をしたいと」

「一応じゃなくて完全に主人の公爵のこと?」

「はい。半人前の旦那様のことです」

「公爵や他の使用人の前で言っちゃ駄目よ」

「は~い」


ピアが呼びに出て10分後、現れた公爵は花を持っていた。

「アイリーン。あの日は申し訳なかった。
公爵夫人の君に無礼な事をしたメイド長は即座に追い出した。退職金も推薦状も渡さなかった。
それでも罰としては甘いかもしれないが、あまり酷くすると逆に君の負担になるかもと思って身体に危害は加えていない。

俺の意思では無いが、主人である俺の責任だ。
この通り、許してくれ」

公爵は深々と頭を下げて謝罪をした。

「分かりましたわ。頭を上げてください、公爵」

「ハロルドと呼んでくれ」

「愛するトリシア様の手前、それはいたしません。
ちゃんと弁えて お二人を応援いたしますのでご安心ください」

「アイリーン…」

「では、荷解きがありますので」

「ピアは」

「?」

「ピアを専属メイドに付けるという事でいいのか?」

「ええ」

「足りないだろう。他にも、」

「エリスがいますから結構ですわ」

「そうか。要望があったらすぐに俺に言ってくれ。午後に商人がくるから好きな物を買うといい」

公爵は花を置いて退室した。


バタン

「……別人だわ。甘やかされて貴族教育を受けなかった馬鹿だと思っていたけど」

エ「生まれつきの癇癪持ちか何かかと思っておりました」

ピ「手紙の内容もこんな感じだったんじゃないでしょうか。婚姻前日の行いも悔いて反省しているようでした」

「どうして分かるの?」

ピ「直接軽く罵りましたから」

「大丈夫なの!?」

ピ「はい。私は貴重な若奥様マタタビを持った使用人ですから。駄目ネコだんなさまはいう事をききます」

「? とにかく無理しないでね」

ピ「お優しいアイリーン様に仕えることができて光栄です」

「貴女が躾けてくれたのね。お礼をしないと」

ピ「では、良くやったと頭を撫でてください」

ピアは私の足元に座り頭を差し出した。

「ふふっ。いい子ね。良くやったわ。ありがとう」

ピアの頭を優しく撫でた。

ピ「えへへ」

本当にこれでいいのかしら。
ピアは童顔で歳下に見えるけど……聞くのが怖いから、実年齢を聞かずに歳下ということにしておくことにした。



昼食はテラスでとり、その後商人が来たと応接間に案内された。

「ウィンター公爵夫人。
お初にお目にかかります。
私どもは王都に店を構えるジニア商会から参りました。ドレスなどを扱っております サリーと申します」

「ジュエリーを扱っておりますジャンと申します」

「その他のものは 私オマリーにお申し付けください」

「こちらこそ よろしくお願いしますわ」

あれこれと皆に薦められたけど、散財する気はない。

ピ「恋活するなら必要です、アイリーン様。
パーティに出るドレス、夜会に出るドレス、茶会に出るドレス、街へデートするときのものなど多種類を何着か揃えませんと。
それに同じようなデザインばかりは駄目です。攻めないとアピールできません。

ほら、お帽子や手袋も。このネックレスとかイヤリングも」

「必要?」

エリス達も首を縦に振った。


そしてサリー達と品を選んだ。

「公爵様がお喜びになります」

「こんなに愛らしい新妻はおりません」

「公爵様が直々に依頼にいらっしゃるはずですわ」

「え?直々って?」

「公爵様が店にいらして、奥様の愛らしい容姿や色、大体のサイズなどを伝え、奥様がお気のすむまで買わせてやりたいと」

「私にですか?」

「はい。聞いた通りのご容姿ですから間違いございません」

トリシア様と私では似つかない。
お詫びということかしら。

その日はかなりの大金を使った気がする。
ピアは大丈夫と言っていたけど…。










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