【完結】愛する女がいるから、妻になってもお前は何もするなと言われました

ユユ

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【 ハロルドの視点 】


夕刻。

「旦那様、若奥様がお会いしたいと仰っております」

ガタッ

「今すぐ行く!」


急いでアイリーンの部屋へ行くとピアが入り口で“落ち着いてください。深呼吸ですよ”と言うので深呼吸して入室した。

「どうした?」

「薦められるがまま購入してしまいましたが、大丈夫でしょうか。前日受け取ったお金はほとんど残っていますので返しましょうか」

「何を言うんだ。
100着買おうが構わない。アイリーンが着たいと思ったものを買うといい。着てみせてくれたら嬉しいが。

来月の末に王宮主催のパーティがある。
陛下に公爵夫人を紹介することになる。
着て行くドレスは別途 俺が注文するから、気持ちの準備だけしておいて欲しい。

他の貴族達の相手は俺がする。
気負わなくていい」

「はい。よろしくお願いします」

「不自由はしていないか?
もし怪我をしたり具合が悪くなったら医者を呼ばせる。遠慮せずピアに申しつけてくれ」

「ありがとうございます。それでは失礼します」

「夕食を一緒に食べないか」

「トリシア様とお召し上がりください。では」

ドアの淵にアイリーンの手が当たった瞬間、

「痛っ」

「アイリーン!」

「アイリーン様!」

アイリーンの指を見たら棘が刺さっていた。

「医者だ!医師を呼べ!」

「止めてくださいっ、棘が刺さっただけでお医者様にかかるなんて恥ずかしいです」

「恥ずかしくなんかない!指が腫れたりしたらどうするんだ」

「……」

「ピア。茶を入れてやってくれ。消炎効果のあるハーブティーがいい。

エリス。診察が終わったら着替えさせてやってくれ。

ロザリーナ達はアイリーンが起きないよう見張っていてくれ」



指示を出してエントランスに行き医者を待つ。

「何でこんなに遅いんだ!」

「まだ呼びにでて数分です。あと30分はかかります。他に患者がいたり、往診に出ていたら別の医師を当たりますので」

「専属医はどうした」

「高齢で引退しました。
次の医師を紹介されましたが、お気に召さないと旦那様が拒絶なさって、選考は今度でいいと」

そうだった。

「直ぐに決めよう。若い男は駄目だ。
女医をアイリーンの専属にしよう」

「女医は空きがございません」

「なら若くない医師にしてくれ」

「かしこまりました」


「公爵様、どうなさったのですか」

そこにようやく敬語を使い始めたトリシアがやってきた。

「何でもない」

「商人が来ていたようですが」

「呼んだがなんだ」

「私は呼ばれませんでした」

「買い過ぎたのはお前だろう。先の分まで買ったのだから呼ぶはずがない。

そもそも買う必要があるのか?
何のために?」

「夜会とか」

「当分その予定はない」

「来月末は王太子殿下の誕生記念のパーティがあると仰って、」

「アイリーンと出席する」

「え?」

「アイリーンは公爵夫人だ。
初披露目に連れて行く」

「……私は」

「ここで作法などの勉強をしていろ」

「結婚してから変わったわ」

「いい加減にしろ」

「今更尻尾を振る相手を変えても手遅れよ!
白い結婚なんだから!
子は私が産むしかないの!
もっと私を大事にしなさいよ!」

「……アイリーンが産まないなら、別にトリシアじゃなくてもいいんだ。別の女を迎えてこを産ませるだけだ」

「愛してるって言ったじゃない!
あの女に何を吹き込まれたの!」

バチン

「いっ!」

「ウィンター公爵夫人を“あの女”などと呼ぶな。
平民のお前とどれだけ差があると思っているんだ。
不敬が過ぎる。

母上に言われたんだ。
トリシアは何を持っているのかと。

顔と若い体だけだ。有効期限が若い時だけの女だと言われて気が付いた。その通りだなと。

お前の身体はそう魅力的ではない。
若い肌と若い穴を持っているだけ。

それにアイリーンは17歳になるところだ。お前はいくつだ?
アイリーンと比べたら、もう武器ではない。

せめて歳上としての大人の魅力を持ったらどうだ」

「酷い!

口説いたのは貴方じゃない!
一生の愛を誓い、一生面倒をみると言ったのは貴方よ!」

「愚かだったよ。
だから追い出さないでいるだろう。
郊外の貸し部屋に押し込んで月々微々たる生活費を渡してもいいんだ。

お前の奉仕で勃たなくなったら そうする。
屋敷に留まりたければ身の程を弁えて、礼儀に気を付けながら一生懸命奉仕するんだな」

「ううっ」

トリシアは泣きながら去っていった。


しばらくして医者が到着した。

アイリーンを診せた。

「……棘ですな」

「申し訳ございません。棘如きでお呼びだてしてしまいました」

「俺が呼んだんだ。
妻に何かあってからでは遅いからな。

先生。残らないように抜いてしっかり消毒してくれ」


棘を抜いて消毒して帰っていった。

「ピア。夕食は片手で食べられるようなメニューにさせる。しっかり世話をして安静にさせてくれ」

「かしこまりました」

「アイリーン。寝る前にもう一度見舞いに来る。
ハーブティーを飲み切るように」


名残惜しいが、退室した。

その後が長く感じた。

寝る前に見舞いに行って熱がないか確認をして、アイリーンの部屋を後にした。

そのままトリシアの部屋に向かった。

アイリーンの寝巻き姿と、湯浴み後のいい香りでその気になってしまった。










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