【完結】愛する女がいるから、妻になってもお前は何もするなと言われました

ユユ

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ピアの探り

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ピ「え? カトリス侯爵令息とですか?」

翌日、差し入れを持ってきたピアにクリストファー様のお誘いのことを話した。

「そうなりそうなの」

ピ「でも、旦那様が」

「公爵? 恋人を作っていいと言ったのは公爵なのよ?気にしないわ。
まあ、婚約者持ちの学生に手を付けるつもりはないけど」

ピ「おいくつの方なのですか」

「私のひとつ上ね」

ピ「学生じゃないですか!」

「そんなに驚くこと?
ちょっとその辺を見て回るだけよ」

ピ「(報告したくない)」

「え?」

ピ「ずるいですぅ。ピアもお優しいアイリーン様とお供したいですぅ。

アイリーン様がお屋敷に戻ってきてくださったら、ピアがアイリーン様付きのメイドになれるはずなんですぅ」

ピアは立ち上がると 私の足元に跪き、私の手に手を重ねて涙を浮かべた。

「あの意地悪なメイド長は引き摺って追い出されましたから、戻って来てください」

「でもねぇ……」

ピ「いざとなったら私が少量 旦那様のお食事に下し草を混ぜますから」

「ちょっと。そんなことを口に出したら投獄されるわよ」

ピ「かまいません。アイリーン様が時々様子を見に来てくだされば」

「だけど、トリシア様だっけ?
彼女との生活のためには私がいない方がいいと思うわよ?」

ロ「外聞が悪いからですかね」

セ「確かに。新妻が初日から度宿暮らしをしていたら公爵家としては問題ですね」

エ「ですが、メイド長は公爵様の意を汲んであんな事をなさったのでは?」

ピ「あの、旦那様からのお手紙は…」

「もちろん読んでないわ」

宿の案内やルール、メニューなどを立てかけたブックスタンドを指差した。
未開封の手紙もそこに立てかけていた。

ピ「どうしてですか」

「変な事が書いてあって、腹立ちのあまり帰国したくなったら困るもの」

ピ「そんなことはないはずですが」

「だって婚姻の儀の前日に、愛人がいるからお前は大人しくしてろ。女主人もやらなくていいし 社交も不要で 閨事も不要、子も産まなくていいって言いに来たのよ?

言い捨てて帰ろうとするから 引き止めて、こちらの条件も付け足して書面にして署名させたんだから」

ピ「下し草じゃ甘いですね」

「でしょう!?」

ピ「下着の内側に 触れると痒くなる樹液を塗っておきます」

「すごく見てみたいけど、間違いなく貴女達が怒られるわよ」

ピ「二人になればお互いを疑うんじゃないですか」

「?」

ピ「お互いに、相手に性病をうつされたと思って揉めるという意味です」

「駄目よ。二人には仲睦まじく生きてもらわないと。公爵家の子を何人か産んでもらわないといけないもの」

ピ「いいんですか!?」

「もちろんよ。
愛なんて無いもの。

何もしなくていいのに 公爵夫人の予算と衣食住の保証をしてくれると言うのだから、屋敷に入れてもらえなくて婚姻当日に家無し夫人にされても文句言わないわ。宿や食事の請求は公爵家にいってるし」

ピ「お屋敷の方が…」

「しかも恋人を作っていいのだから、別居の方が動きやすいわね。

知人や友人を増やして夜会に行かなくちゃね」

ピ「そんな!」

「公爵の条件だし、契約書を教会に提出しちゃったから守らないと」

ピ「うちの旦那様はなんてお馬鹿様なのでしょう」




【 夕刻のピアの報告 】

「は? クリストファー・カトリスと出かける!?」

「はい。婚約者はいるようですが 学生ながら積極的なご様子。
知らぬ土地だろうと案内してくださるそうです」

「俺の妻だぞ!!」

「お言葉ですが、互いに恋人を持つ事を条件に入れたと伺いました。アイリーン様は知人や友人を増やして、夜会などに参加して恋愛をし 恋人を作るそうです。

旦那様が、トリシア様がいらっしゃるから、アイリーン様に何もしなくていいと仰ったのですよね?

もしかしたら屋敷に戻ってもらえるかもしれませんが、旦那様が約束を破り干渉なさるようなら、離縁なさるかもしれません」

「帰ってきそうなのは本当か!」

「恋活を邪魔せず干渉しなければ」

「コイカツ?」

「恋人を作る活動で恋活だそうです」

「俺はなんで あの時、アイリーンの顔を確認しなかったのか」

「はい?」

「婚姻の日の前日に会いに行ったら、スカーフで髪を隠しベール付きの帽子で顔を隠していたんだ」

「それ、何時ですか」

「朝の8時になる前だ」

「約束は?」

「しなかった」

「先触れは?」

「出さなかった」

「はぁ。いいですか。翌日のためにゆっくり身体を休ませていたレディの部屋に突然朝に押し掛ければ、整えていない髪をスカーフで隠し、化粧をしていない、もしくは起きたてか起こされたかで洗えなかった顔をベールで隠したのでしょう。

何をなさっているのですか!」

「……すまん」

「その上で、ご自身の都合のいいように婚姻生活の決まり事を告げたのですよね?
そりゃ、メイド長の愚行は旦那様の意を汲んだ結果だと思い込みますよ」

「……」

「激しく反省してください」

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