【完結】公子が好きなのは王子ですよね? 私は女ですよ?

ユユ

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愛の告白

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今日も渡り廊下を歩いて騎士団の建屋に向かっている。

「おはようございます、リナ様」

「おはようございます、エマ様」

「おはようございます、リナ様」

「おはようございます、ゼモア卿」

「おはよう、リナちゃん」

「おはようございます、グリスター書記官」

食堂での一件以来、いろんな城勤めの方が話しかけてくるようになった。名前が覚えきれない。

「私は見えていないのか?」

「!!」

お兄様が一緒に歩いているのに、みんなが私にだけ挨拶しているのに今気が付いた。

「お兄様は私が独り占めしているからです」

「そうか。気を利かせているのだな」

「さすがですね、気が利いてます」

セーフ!


お兄様と出勤し、討伐の事務所に放牧される。

「皆様 おはようございます」

「おはよう、リナちゃん」

「おはよう。ちゃんと食べてきた?」

「おはよう。ちゃんと眠れた?」

「おはよう。そろそろ俺の部屋で イテッ」

「おはよう、リナ。体調は大丈夫か?」

「はい。今日も頑張ります」


うん。少しずつ報告書が減ってしかも戻ってきてない。

「嬉しそうだね」

「もちろんです。報告書が減っていってますから。
でも書き直しも結構あるので、手が痛くならないか心配です」

4人「リナちゃん!」

「余所見すると間違えるぞ」

報告書の訂正箇所は一枚につき二箇所までと定められている。だから誤字脱字が多いと書き直しを余儀なくされる。

それに この時代の紙は手軽とは言えない。
フリクションインキがあっても公式書類は許されないだろうし。やっぱり修正液が使えるといいな。
最後に“修正液使用何箇所”って書けば良いんじゃないかな。

書き直す時間ももったいないよね。
この世界では作れないだろうなぁ。


かれこれ三週間になる。

さっき、エリオット殿下とレオナルドが帰ってきたのは知っている。

二人が結ばれたら、やっぱり私は偽りの妻になるのかな。だとしたらつまらない結婚生活を屋敷でおくるより働いてた方が気晴らしになる。

だけど、

「私も強かったら討伐隊に入れてもらえましたか」

「リナちゃん?剣を握りたいの?」

「重いよ?」

「危ないよ」

「野宿 イテッ! 叩くの早いですよ!」

「みなさんが命懸けでお仕事をしているのに動機が不純なことを言いました。ごめんなさい」

「リナ。今日は早めに切り上げて飲みに行こう。
リナはジュースだけどな」

「でも、許してもらえません」

「ディオンも誘うから」

「はい」



1時間早く切り上げて、近くにある食事処へ来ている。平民が多そうなお店だが、2階の席は仕切りの個室になっているらしい。

だが、隣に聞こえてしまうために名前など特定される名称は使わないように言われた。

私「お酒も強くないと駄目なんですか?」

お酒をグイグイと飲んでいくみんなに質問をした。 

「そんなことはないけど、お兄ちゃんが代わりに飲んであげるから心配しなくていいよ」

「お兄ちゃん達がお仕事もするからね」

「そうだよ。狩りで調達しなきゃいけないときも俺達が狩って捌いて焼いてあげるからね」

「水浴びの手伝い イテッ!」

兄「どういうことだ?」

ウ「うちの子はメンバーに加わる想像をしているみたいだ」

兄「天使。本当か」

私「私の英雄様。有り得ないことは分かっています。私にはみなさんのような能力はありませんから」

ウ「なんか惚気に聞こえてならないな」

「なんで“英雄様”なの?」

私「いつも私を助けてくれるからです。
優しくカッコよくて強くて。

学園で颯爽と助けてくれたときは痺れました。
兄じゃなければ跪いて求婚しましたね。
あ、でも既に結婚していますから 結局間に合いませんけど」

兄「私の天使。天使が妹じゃなければ産まれてすぐ求婚するよ……天使が元気ないのはソレか」

“産まれてすぐ求婚”に反応したのをお兄様は見逃さなかった。

ウ「どういうことだ?」

兄「天使と悪魔の申し子の婚約は一瞬で決まった。
3歳の彼がまだ産まれて半年に満たない天使に求婚した。

彼は天使に恐ろしい執着をみせているのに、天使は彼を信じていない。心変わりをするはずだと信じている」

ウ「彼が浮気を?」

兄「天使は最初から思い込んでいるんだ。理由は勘らしい」

ウ「王都から離れたいのか」

私「同じ職場お城はどうかなって」


〈お客様、困ります!〉

バン!

「リナ!」

「レオ!?」

「僕が愛してるのはエリオットじゃない!君だリナ!」

「ブーッ!!!!!!」

全員がお酒を吹き出した。

「オシメを変えて欲しいくせに恥ずかしがって我慢する姿も」

「馬鹿!」

「寝ながらクッキーを食べて咽せる姿も」

「ちょっと!」

「キラキラ輝くその瞳も大好きだ!!!」

「っ!」

「演技だと分かっているお強請りも、エリオットと僕がカップルになると思い込んでいることも、僕に罪を擦りつけようとするところも大好きだ!!!」

「っ!!」

「だからどうしてリナが壁を作るのか教えて欲しい」

「エリオット殿下と結ばれるレオを好きになっても私が辛いだけじゃない。

貴公子と王子様よ?
二人は見つめ合って愛を囁き合うの。“私を理解できるのはレオナルドだけだ”“エリオットは僕の太陽だ”って

勝てるはずない」

兄・5人「(ククッ……)」

「鞭で打たれても言わないよ」

「彼と仕事を始めてからほとんど会いに来なくなった!」

「仕事が終わる時間がいつも遅いんだ。リナは次の日学園だから遠慮した。会いたいに決まってるだろう」

「うそ。二人で避暑地に旅行に行ったじゃない!」

「僕は仕事で行ったんだよ」

「目眩しの妻にするなら自由にさせて!」

「本気で迫って良いってことか」

兄「早い!」

「じゃあディオン殿からも説得してください」

兄「天使。証拠があるのか?」

「彼と手を繋いで歩いていたもの!」

討伐隊の5人は目を逸らした。

「3歳の時だろう!」

「4歳も!」

「5歳からは無いだろう」

「でも」

「未成年のリナに合わせるんじゃ駄目なんだな。

リナを束縛するのが何の為だか分からないのか?
危険な目にも遭って欲しくないし、他の男に心を寄せて欲しくないからだ。

目眩しでも偽りでもない。リナとは恋愛結婚でみんなが羨ましがる仲のいい夫婦になりたいんだ」

「……」

「愛してるよ リナ」




それから私達は有名なカップルになった。

“エリオット殿下をレオナルドが振った”

“エリオット殿下を捨ててリナにレオナルドが跪いた”

“エリオット殿下に飽きてリナにレオナルドが鞍替えした”

そんな噂が流れていたみたいだけど。


デビュータントには熱く見つめ合う二人がいた。
レオナルドを狙う令嬢もリナを狙う令息も入り込む余地はない。

あれからリナが学生の間は、学園のある日の半分はレオナルドがアブリック邸に帰り翌朝出勤していた。

卒業すると二人はすぐに婚姻した。


エ「私は君達に謝罪を要求する」

レ「何故殿下に?」

私「何かしましたか?」

エ「私は、男で友人で部下でもあるレオナルドに 振られて捨てられて飽きられた男だと認定された。

それは店で実名を出して痴話喧嘩をしたからだ」

レ「否定をしたのに?」

私「レオは殿下と手を繋いで歩いたのは4歳までだと訂正していました」

エ「いいから謝ってくれ」

私達「申し訳ございません」

エ「男から何通もラブレターをもらったんだぞ」

私「私、偏見はありません」

エ「だから、違う!」

レ「僕の妻に強く言えば違う噂が広まりますよ」

エ「どんな」

レ「“未練の断ち切れない殿下が恋敵を威圧した”って」

エ「もういい。帰れ。新婚旅行?行ってこい」

レ「それでは行って参ります」

私「お土産買ってきますね」


バタン



~二人が去ったエリオットの執務室~

「討伐隊第一を呼んでくれ」

「隊長ですか?」

「全員だ。

あいつらが面白おかしく話題にしてるから、まだ払拭できないんだろう」

「かしこまりました」


後日。

陛下父上?」

「すまんすまん。面白くてな。ついつい話題にしてしまうんだ」

「……」





















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