【完結】2人の幼馴染が私を離しません

ユユ

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ヴィフノワ家の使用人が走ってきた。

「ジョージ?」

「こんなところにいらっしゃったのですか!坊ちゃまが誰かを血祭りにあげないうちにお戻りください」

「何を言っているの?そんな怖い状況ならヴィフノワ家の私兵に言ってよ」

「その通りだ」

「こ、これはメット公子、お話中でございましたか、失礼いたしました。
ですがアリスティーネ様はエミリオ坊ちゃまのパートナーでして」

「………」

「………」

私と彼は顔を見合わせた。

「婚約者、いないって言ったよね」

「はい。おりません」

「エミリオの、」

「エミリオは仕方なく私と幼馴染になっているだけで、今日は頼まれてパートナーになっただけです」

「そんな、お嬢様。仕方なくだなんて…坊ちゃまが聞いたら何と仰るか…。どうか急いで会場までお越しください」

「変ね。エミリオは美人の令嬢と仲良くしていたはずよ?それに私のことを“何でもない”人だと言っていたもの」

「そんなはずは、」

「すぐ隣で言われたの。間違いないわ。その令嬢がパートナーに相応しいわ。私は最後だけ顔を出すから」

「エミリオ坊ちゃまを呼んで参ります」

「その必要は無いよ。一緒に行こう」

「……」

「大丈夫。嫌なら私の後ろに隠れるといい」

「それ、効果ありますか?」

「メット家と私を知らないのだな」

「申し訳ございません、公子様」

「いいんだ。むしろ嬉しいよ」

そう言って彼は腕を差し出した。私は手を添えた。



会場に入るとエミリオが怖い顔をしてツカツカと私の前まで来た。

「どこに行っていたんだ」

「庭」

「パートナーだろう」

「違う」

「違くない」

「何で怒っているの?」

「約束しただろう」

「以前に約束をして守るつもりで来たけど、さっき私のことを“何でもない”って他人に言ったのはエミリオでしょう?私をパートナーから何でもない者に格下げしたのはあなた自身よ?……いえ、失礼いたしました ヴィフノワ公子」

「っ!! 俺が悪かったが その呼び方は止めろ!」

「エミリオ、君は何様なんだ?
いくらヴィフノワ家の息子だからといって、恋人でも婚約者でもないレディに何なんだ」

「レオナルド様には関係ありません」

「関係あるかないかの問題ではない。人として駄目だと言っているんだ。
自身が悪いと思っている態度じゃない。
貴族令嬢にパートナーを頼んでおいて“何でもない”なんて言うのは、パートナーを降りろと言ったと同義だ。
彼女がこの衣装を着ているからか?ならすぐに脱がせて私の服を着せて 彼女の屋敷に送り届けよう」

「彼女は俺の幼馴染です」

「幼馴染か。
幼馴染って、何の権利も無いよな?」

「っ!」

「エミリオはパーティ前に失敗をした。それなのにアリスティーネに怒りをぶつけるのはおかしいだろう。
そう思うのは私だけか?」

「……アリス、すまなかった」

「パーティが終わる頃まではおりますが、出席者の一人として端にいるだけです」

「……分かった」

「よし、じゃあアリスティーネちゃん、あっちに行って私とお喋りしよう」

「そうですね。お付き合いください」

「喜んで」

「……」


会場の端に連れて来てもらった。

エミリオは悲しそうな顔を見せた気がする。
気のせいなんだろうけど。

エミリオが引き下がる相手ってことは、同じ公爵家でもこの方の方が格上ってこと?

こんなに無知なのだから きっと昼食会のすっぽかしが無かったとしてもノエル様の婚約者にはなれなかったわね。


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