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クリスはリリのもの

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【 リリアナの視点 】


私の婚約者は可愛い。初心で真っ新。

強面の顔って言うけど、私には凛々しいとしか映らないし、瞳を見ると優しさを感じる。
大きくてがっしりとした身体は安定感があって落ち着くし、触れ方も優しい。

私に近寄ってくる男の子は、私の外見で勝手に夢をみる気持ち悪い存在か、未来のコンラッド侯爵を夢見る欲深い存在だ。

相次ぐ家族の死をチャンスとばかりに寄ってくる貴族達が嫌で心を閉ざしたことにした。
跡継ぎがいなくなってチャンスと思う貴族、ママがいなくなって侯爵夫人の座を狙う貴族が私を利用しようとする。

“頼れるお婿さんが必要よね”

“お母様がいないと寂しいでしょう”

お悔やみをと言いながら自分達の欲を優先する魔物にしか見えなかった。

そんな中でクリスは見た目も体格も好みで優しいところもいい。

歳下とはいえ格上として扱おうとするし、要求をしてこないし、利用しようともしない。
そして私の容貌で気持ちを動かさない。

子守りとして一緒に過ごしてみると性格の良さがよく分かった。


そしてパパは私にお願いをした。
クリスが学校を卒業した後、補佐にするためには陛下の許可が必要だけど条件を出されてしまった。

『これからクリスは5年間辺境で生活をする。彼が学校に通っている間、交流や見合いを再開して欲しい。
無理をして仲良くなる必要はないし、選ぶ必要も無い。
気に入らなきゃ気に入らないでいいし、縁を繋がなくていい。だが、個別に応じて判断して欲しい。
もちろん気に入ればそれでもいい。

やってくれるか?』


『クリスは私のものです』

『え?子守りはもう無理だよ?』

『結婚するからです』

『ええ!? どうして』

『私が口にしたからです』

私が口にしたのだからなの。

『お気に入りなのは知っていたが異性としてか』

『クリスは女の子じゃないよ?』

『そうだけど…クリスは何て?』

『大丈夫』

私がクリスを手放すとでも?クリスはわたしのものなの。

『そうか。口約束ではあるが婚約したのだな?
ふむ。では釘を指す必要があるな』

『クリスに釘? パパでも怒るよ?』

『浮気をしないよう言い聞かせるという意味だ』

は?浮気?

『なんで?』

『リリにこの話は早い』

『教えて』

『駄目だ』

『ふ~ん』



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