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リリとクリスのケンカ

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【 リリアナの視点 】


長かった。

やっと婚姻した。

クリス・コンラッド。

私のクリス。



サモール伯爵夫妻とクリスの兄ヘンドリックが参列してくれた。ヘンドリックの妻は出産して王都まで来ることができなかった。


かなりお偉いさん達が集まっていた。クリスも意外と顔を繋いでいたみたい。
辺境伯まで来たのは驚いた。

王太子夫妻は観察するように私とクリスを眺めていた。



さて。

式も食事も終わり、残すは初夜だけ。
湯浴みをして夫婦のベッドで待った。

グゥ。




チュン チュン チチチチッ チュン

あれ?眩しい。朝?

「 !! 」

目覚めると隣に半裸のクリスが寝ていた。

自分の服を見ると支度したまま下着も履いてる。
ベッドも普通に寝た後だし、引き出しを開けても避妊薬や潤滑剤が使われた形跡もない。


まさか、勢い付けようと飲み慣れないお酒を飲んだから、待ってる間に寝ちゃった!?

「おはよう、リリ」

「っ! おはよう」

「気分は? 頭痛くない?」

「喉が渇いたくらい」

クリスは起きてテーブルの上の果実水をコップに注いで持ってきてくれた。
そして自分もゴクゴクと飲んでいる。
その動きがまた男を意識させた。

「ごめんなさい。寝ちゃった」

「気にしなくていいよ。昨日は僕も疲れたから。
なんか偉い人いっぱいいたし」

「うん」

「朝食食べに行こうか」

服を着ようとするクリスの背中にしがみついた。

「今から初夜しよう?」

「朝だし、またにしよう。
焦る必要もないから」

「……」

「リリ、メイドを呼ぶよ」

「ふうっ…ううっ」

「え!? 何で!」

「そうやって、結局…」

「リリ?」

「好きなのは私だけで…
そんなの分かってたけど…」

「リリ」

「私、頑張るから…
他の女に触れないで」

「リリ」

「どんなことでもするから、私だけを見て」

「見てるだろう」

「私とクリスじゃ違うの!」

「リリアナこそ、僕の何を見てるっていうんだ?」

「私は最初からクリスが好きだけど、クリスは違うじゃない。婚約だって私の一存だったもん」

「僕はそんなにおめでたくできていないよ。
いくら格上で上司の娘だからって自分を犠牲にするつもりはない。
確かに君は幼い妹のような存在だったけど、今はそうじゃない。
好きじゃなきゃベルリック卿にいちいちリリアナの喜ばせる方法とか相談したりしない。

閨は無理にすることじゃない」

「初夜はしなくちゃ駄目なの!」

「すぐにでも跡継ぎが欲しいと言うことなら今からでも構わない」

そう言うとクリスはナイトドレスの腰のリボンを解こうとした。

「嫌っ」 
 
クリスはリボンから手を離すと続き部屋の自室に入ってドアを閉めた。


「ううっ…」





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