12 / 30
レオナード②
しおりを挟む
晩餐の後、リリアーヌ嬢を伯爵邸に送るために馬車に乗った。
隣を見ると、美しく可憐な令嬢が座っている。
窓から月を見ているようだ。神秘の泉のような瞳。
ずっと見ていても飽きないだろう。
何故彼女が地獄へ向かわなくてはならないのか…あんな殿下のために。
初夜では流石に眼鏡を取るだろう。その時に、あの穢れた体で清らかなリリアーヌを喜んで抱き潰すのだろうな。
そう思ったら、怒りが込み上げてきた。
伯爵邸に着くと執事が慌てて伯爵を呼びに行った。
リリアーヌ嬢が素顔を晒していることに驚いているようだ。
「我が家の犬が、リリアーヌ嬢に飛びついて舐め回してしまいました。大きめの犬で、リリアーヌ嬢は擦り傷とアザができてしまいました。着ていたドレスも破れてしまいました。
大変申し訳ございません」
「デクスター公爵、お入りください。
リリアーヌ、着替えてきなさい」
「はい。公爵様、失礼します」
応接間に通され、座った途端に伯爵が懇願してきた。
「デクスター公爵、お願いです!リリアーヌの変装の件、知らなかったことにしてください!」
「頭を上げてください。大体のことは知っています。そして、目的も」
「…」
「殿下が心変わりをして解消するのを待っているのですね」
「…」
「心配なさらないでください。
私はリリアーヌ嬢に助けていただきました。
私も、息子のハミエルも、リリアーヌ嬢の味方です。協力します」
「公爵…」
「長男のクリストフはニコラ殿下と同い年で側近候補でした。
クリストフは殿下の悪行を咎めませんでした。殿下の言葉を鵜呑みにしていたのです」
「殿下はなんと」
「“意に沿わぬ婚約”だと」
「…そうきましたか」
「私は次期公爵にクリストフを指名していましたが、相応しくないと判断して次男のハミエルに指名を変えました。
私もハミエルも、婚約の経緯とその後の仕打ちに憤りを感じています。
“王命”という脅しをチラつかせなければ、リリアーヌ嬢は、自身の才を惜しみなく発揮し、伸び伸びと自由に生きられたはずです。
大事な少女時代を奪われ、この先は死ぬまで地獄で生きねばならないなど、とても見過ごせません」
「リリアーヌには好きな人と結婚して欲しかったのです。あの子が笑顔でいてくれさえすれば私も妻も、リリアーヌの姉と兄も満足なのです。それなのにあんな不誠実なことを」
「知っておられるのですね」
「学園に4人生徒として忍ばせてします。
不運にも学費が捻出できない貴族と契約をして見守らせているのです」
「そうでしたか」
「娘は楽しく慈善活動をしていますから、娘が続けたいと言っているうちは、そのまま受け入れてくださいませんか」
「こちらこそ、大変優秀なリリアーヌ先生のおかげで、ハミエルが降参するほど孤児達が実力を付けています。本当に素晴らしいご令嬢です」
「そう言っていただけると、安心できます」
「伯爵、うちの犬がドレスを破ったので、新しいドレスを贈りたい。懇意にしている仕立て屋は何処ですか」
「そんな、汚れてもいいドレスで孤児院へ行っていますので、気になさらないでください」
「伯爵が私の立場でしたら何もしないことを選びますか」
「…… “ブイエー”という店です」
「ありがとうございます」
翌日、定時で仕事から逃げるように城を出てブイエーに来た。
「先触れを出していたデクスターだ」
「これは公爵様、奥の部屋でお伺いいたします」
弁償と謝罪と日頃の感謝のためにドレスを贈りたいと相談した。
悩んだ挙句、ようやく4着が決まった。
店主が呆れていた。3時間もかけてしまった。
「仕上がったらこっちの2つを贈り物としてベロア伯爵家に届けてくれ。
残り2つは公爵家に届けてくれ」
「デクスター公爵家ですか?」
「そうだ」
「かしこまりました」
ドレスとワンピースを注文した。また着替えが無くては困るからな。
屋敷に帰り、家令に指示を出す
「ブイエーにドレスとワンピースを1着ずつ頼んできた。届いたら一番いい客間のクローゼットにかけておいてくれ」
「…かしこまりました」
もしや靴も必要だったか。
翌日、伯爵に手紙を送り、靴屋も聞き出した。
隣を見ると、美しく可憐な令嬢が座っている。
窓から月を見ているようだ。神秘の泉のような瞳。
ずっと見ていても飽きないだろう。
何故彼女が地獄へ向かわなくてはならないのか…あんな殿下のために。
初夜では流石に眼鏡を取るだろう。その時に、あの穢れた体で清らかなリリアーヌを喜んで抱き潰すのだろうな。
そう思ったら、怒りが込み上げてきた。
伯爵邸に着くと執事が慌てて伯爵を呼びに行った。
リリアーヌ嬢が素顔を晒していることに驚いているようだ。
「我が家の犬が、リリアーヌ嬢に飛びついて舐め回してしまいました。大きめの犬で、リリアーヌ嬢は擦り傷とアザができてしまいました。着ていたドレスも破れてしまいました。
大変申し訳ございません」
「デクスター公爵、お入りください。
リリアーヌ、着替えてきなさい」
「はい。公爵様、失礼します」
応接間に通され、座った途端に伯爵が懇願してきた。
「デクスター公爵、お願いです!リリアーヌの変装の件、知らなかったことにしてください!」
「頭を上げてください。大体のことは知っています。そして、目的も」
「…」
「殿下が心変わりをして解消するのを待っているのですね」
「…」
「心配なさらないでください。
私はリリアーヌ嬢に助けていただきました。
私も、息子のハミエルも、リリアーヌ嬢の味方です。協力します」
「公爵…」
「長男のクリストフはニコラ殿下と同い年で側近候補でした。
クリストフは殿下の悪行を咎めませんでした。殿下の言葉を鵜呑みにしていたのです」
「殿下はなんと」
「“意に沿わぬ婚約”だと」
「…そうきましたか」
「私は次期公爵にクリストフを指名していましたが、相応しくないと判断して次男のハミエルに指名を変えました。
私もハミエルも、婚約の経緯とその後の仕打ちに憤りを感じています。
“王命”という脅しをチラつかせなければ、リリアーヌ嬢は、自身の才を惜しみなく発揮し、伸び伸びと自由に生きられたはずです。
大事な少女時代を奪われ、この先は死ぬまで地獄で生きねばならないなど、とても見過ごせません」
「リリアーヌには好きな人と結婚して欲しかったのです。あの子が笑顔でいてくれさえすれば私も妻も、リリアーヌの姉と兄も満足なのです。それなのにあんな不誠実なことを」
「知っておられるのですね」
「学園に4人生徒として忍ばせてします。
不運にも学費が捻出できない貴族と契約をして見守らせているのです」
「そうでしたか」
「娘は楽しく慈善活動をしていますから、娘が続けたいと言っているうちは、そのまま受け入れてくださいませんか」
「こちらこそ、大変優秀なリリアーヌ先生のおかげで、ハミエルが降参するほど孤児達が実力を付けています。本当に素晴らしいご令嬢です」
「そう言っていただけると、安心できます」
「伯爵、うちの犬がドレスを破ったので、新しいドレスを贈りたい。懇意にしている仕立て屋は何処ですか」
「そんな、汚れてもいいドレスで孤児院へ行っていますので、気になさらないでください」
「伯爵が私の立場でしたら何もしないことを選びますか」
「…… “ブイエー”という店です」
「ありがとうございます」
翌日、定時で仕事から逃げるように城を出てブイエーに来た。
「先触れを出していたデクスターだ」
「これは公爵様、奥の部屋でお伺いいたします」
弁償と謝罪と日頃の感謝のためにドレスを贈りたいと相談した。
悩んだ挙句、ようやく4着が決まった。
店主が呆れていた。3時間もかけてしまった。
「仕上がったらこっちの2つを贈り物としてベロア伯爵家に届けてくれ。
残り2つは公爵家に届けてくれ」
「デクスター公爵家ですか?」
「そうだ」
「かしこまりました」
ドレスとワンピースを注文した。また着替えが無くては困るからな。
屋敷に帰り、家令に指示を出す
「ブイエーにドレスとワンピースを1着ずつ頼んできた。届いたら一番いい客間のクローゼットにかけておいてくれ」
「…かしこまりました」
もしや靴も必要だったか。
翌日、伯爵に手紙を送り、靴屋も聞き出した。
応援ありがとうございます!
33
お気に入りに追加
1,298
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる