【完結】私が見つめていたのは貴方ではありません

ユユ

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2人の娘、ルルーナ編

ルルーナ15歳

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2日後にデビュータントを控えているのに明日か明後日に滞在客が来るという。

客間の用意でメイドが慌ただしい。

流石にハミエル兄様は婚約した。
父に怒られたからだ。嫁を見つけないと屋敷から追放して私に会わせないと言われ渋々。

私も5年以内に結婚して屋敷をでないとなぁ。

残念ながらアルゴスは天に召された。私は暫く寝込んだ。食欲もなく泣きっぱなしだった。

そこにエリアス殿下が訪ねて来て、意味不明な慰めをして帰っていった。

「ルルーナ!ぼやぼやしていると、追い抜くぞ!早く元気出せ!」

追い抜くって何を?まさか、まだあの時の勉強のことを根に持っているのかしら。
たくさんのお菓子と果物とアルゴスの好物を置いて帰った。

「お母様、エリアス殿下は生き物を忘れていかれましたわ」

「その子は王宮で飼っている犬が産んだ仔犬で、“どちらが賢く育てるか競争だ!”と言っていたわ」

あのバカ!

「可哀想だから、面倒見てやって。拒否されたら傷付くわ」

まぁ、母犬や兄弟から引き離され置いていかれて可哀想よね。
よし!あのバカを跪かせてやる!

「ルルーナ、悪い顔をしてるわよ。程々にね」

「それほどでもないです。
名前はリアスよ!おいで!」

…抱っこしたらオシッコされた。
エリアスから名前を取ったらダメ犬になるわ

「やっぱりリアムにするわ」





デビュータントの日、昼食前に騒がしくなった。

「お客様がいらっしゃいました。応接間までいらしてください」

「分かったわ」


応接間に行くと青年が立っていた。

面影が少しある。髪と瞳の色は合ってる…

「ウィリアム?」

「ルルーナ!」

ギュッ

「会いたかった!」

ウィリアム!流石に恥ずかしい!

「大きくなったね。ちっちゃいけど」

「ウィリアムもすごく大きくなったわ。
身長差が広がっちゃったわね」

「男だからね。元気にしてた?」

「最近は寝込んでいたの。アルゴスが天国へ行っちゃったから」

「そうか。辛かったな。ルルーナにとっては乳母だったからな……鳴き声が聞こえないか?」

「そうだ。リアムを連れてきて」

「リアム?」

「そうなの。エリアス殿下が置いて行ったのよ。どっちが賢く育てるか競争らしいわ」

「親しくしてるの?」

「そうでもないはず。ほら、この子。
最初エリアスの名前からとってリアスにしたら先行きが不安になったから、ウィリアムから名前をとってリアムにしたの。将来有望よ!」

「ハハッ、そうなんだ。よろしくな、リアム」

カプッ

「ちょっと!リアム!
ごめんなさい。指大丈夫?」

「甘噛みだよ。大丈夫。チビのくせに嫉妬深いな」

「そう?まだリアスの呪いが抜け切れていないのかも。教会に連れて行こうかしら。聖水でもかけてもらおうかな」

「酷いな。エリアス殿下が泣くぞ」

「ふふっ

そうだ、ウィリアム。私、今夜用事があるの」

「デビューだろう。エスコートしに来た」

「そうなのですか?お母様?」

「そうよ。貴女のために来てくださったのよ」

「ありがとう、ウィリアム。なんだか悪いわ」

「大事な節目だ。光栄だよ。
お祝いの品だ。受け取ってほしい」

「ありがとう……ってダメよ!こんな高価なブレスレット」

「もう贈ったんだから身につけて」

「…ありがとう。大事にするわ」

「昼食にしましょう。場所はわかるわね」

「はい、夫人」





夜、デビュータントの会場に着いた。ひとりずつ挨拶に行く。

「国王陛下、王妃殿下、エリアス王子殿下。
ルルーナ・デクスターがご挨拶を申し上げます」

「ルルーナ嬢。相変わらず可愛らしいな」

「美しくなりましたね」

「……」

「エリアス!」

「…元気になったか」

「はい。お陰様で仔犬に振り回されております」

「そうか。ならいい。うちのルナはお座りを覚えたぞ」

「うちのリアムはゴハンの催促を覚えましたわ」

「ハハッ 何を教えているんだお前は」

「勝手に覚えたの!」

「ところで、なんでリアムなんだ?」

「最初、殿下からとってリアスにしたらオシッコかけられたので、ウィリアムから取り直してリアムにしましたの」

「…まだウィリアムなのか」

「えっ?」

「今日はハミエル殿のエスコートか?」

「いえ、ウィリアムです」

「は!?」

「エスコートするために、来てくれたのです」

「公爵家に滞在しているのか」

「今日着きました。そうなりますね」

「…」

「ほら、あそこにいるでしょう。すっかり大きくなって」

「本当に大きくなったな。エリアスとどっちが成長したんだろうな」

止めて陛下!エリアスは負けず嫌いなんだから!

「ちょっと行ってくる」

「エリアス!挨拶は始まったばかりよ!ここにいなさい!」

「…すみません」

「では、私はこの辺で」

「ルルーナ。後で用事がある。帰る前に顔をだせ」

「嫌な予感」

「ルルーナ?」

「行きます!」





「殿下は元気そうだね」

「陛下達もウィリアムが大きくなったって言っていたわ」

「殿下と何を話していたの?」

「ルナはお座りを覚えたらしいわ」

「ルナ?」

「殿下の犬の名前です」

「へぇ…後は?」

「何か用があるから帰る前に顔を出せって」

「そう」

「面倒くさいこと言い出さなきゃいいけど」

「ルルーナ。ダンスまで時間かかるから、何か飲もう」

「そうね」




桃ジュース美味しい。

「ルルーナ」

「何?…ちょっと!ウィリアム」

近い!近い!近い! 唇が当たっちゃうじゃないの!!

「ルルーナから桃の香りがする」

「桃ジュースだからね」

「ククッ」

「何がおかしいの?」

「いや、確かめただけだ」

「何を?」

「ルルーナは“ルル”と呼ばれるのと“ルーナ”と呼ばれるの、どっちがいい?」

「どっちでも。兄様はルルって呼ぶわ」

「じゃあルーナって呼んでいいかな」

「別にいいけど」

「ウィルって呼んで」

「ウィル」

「ルーナ」

何これ、恥ずかしいな!

「可愛いな」

「もう!止めてよウィリアム!」

「ウィルって呼んで」

「ウィルがウィルじゃない」

「何が?」

「あんな近づいたり、頬を撫でたり、可愛いとか言ったり!」

「成長しただけだ。あの時は抑えていただけで、今は抑えたくない。君はもうデビューした立派なレディなんだから、女性扱いして当然だろう」

「ウィルはいつも優しかったわ。ちゃんと女の子として扱ってくれていたわ」

「それだけでは足りないんだ。女の子扱いと女性扱いは違うよ」



「ダンスが始まるから行こう。君は一番手のグループだろう」

「そうだ!足踏んだらごめんね」

「踏んだら今夜は夜通しで看病してね」

「そんなに重くない!」

「そうじゃないんだけど」

「行くわよ!」





はぁ…エリアス殿下がすごい見てくるわね。
粗探しかしら。

「ウィルはダンス上手なのね」

「猛特訓したからね」

「ルフレールは厳しいの?」

「ルーナのエスコートの為だよ。一応2個上だからね。優雅にリードしないと」

「何だか悪いことしちゃったわ」

「そこは“素敵”とか言って褒めるところじゃないか」

「ふふっ、かっこいいわウィリアム。
今もあの頃も。ウィルは優しくてかっこいい人だわ」

「ルーナ…今こうしていられるのも君のおかげだ。私にとってルーナは一番の女性だ」

「大袈裟ね」

「このダンスが終わったら急いで庭園に行こう。残ったら知らない男に触られる」

「まぁ、ダンスだから多少はね」

「ルーナ」

「分かったわ。庭園ね」

「ありがとう」




庭園を散歩して音楽が聞こえなくなったので急いで戻った。

「ウィル、殿下の所に行ってくる。すぐ戻るから」

「早くね」




エリアス殿下の元へ行くと令嬢達に囲まれていた。

今日は無理だな。

帰ろうとすると呼び止められた。

「ルルーナ!来い!」

「えっ」

「ご令嬢方。今日はデビューおめでとう。私は用があるのでこれで失礼する」

そう言うと私の腕を掴み控え室へ連れていかれた。

「殿下!痛い!」

「っ!」

「どうしたの?」

「何故いなくなった」

「庭園をお散歩していたの」

「ウィリアムとか」

「そうよ」

「お前はあの日の少女じゃない!
夜の庭園など付いて行くな!」

「はぁ!?」

「公爵に聞いてみろ!同じことを言うはずだ


「…帰ります」

「ルルーナ!」

「この密室もダメなんじゃないの?」

「っ!」


「殿下、陛下がお呼びです」

「入ってください!」

「ルルーナ!」

ガチャ

「殿下」

「行くから待ってくれ」

「私は帰りますから、殿下をお連れしてください。失礼します」

「ルルーナ!」






はぁ…なんなの急に。

「ルーナ、大丈夫?」

「ちょっと苛立っているだけ」

「何の用事だったの」

「さぁ。聞かずに出て来たから分からないわ」

「帰ろう。疲れただろう。明日から楽しくすごそう」

「もう足も痛いから早く行こう

ひゃあ!」

「暴れないで、危ないから」

「降ろして!」

「足が痛いんだろう。掴まってお姫様」

「夜通し看病しなきゃいけないくらい重いでしょ」

「ククッ、すごく軽いよ。すぐ攫われそうで心配だ」

「何で笑ってるの!」

「ルーナが可愛過ぎるからだよ」

「はいはい」

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