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泳がせる

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父の用意してくれた3人は強そうだった。
体幹を鍛えているのは分かった。
そして手のひらは剣蛸が出来ていた。


領地で過ごすこと3日目の夜、キラが私の髪をとかしていた。

「あの二人は早速使用人達に私のことを悪く言っていなかった?」

「言っておりました」

「あの二人、特にマリッサの方はいろいろと仕掛けてくるわ。私が殴られても蹴られても静観して欲しいの。

本当のメイド達と同じ様にマリッサ達に同調しているフリをして」

「お怪我をなさるということですか」

「多分毒は盛られないと思うわ。

騎士道に反することもあるかと思うけど、潜入捜査だと思って堪えてもらえると有り難いわ」

「……かしこまりました」

「さて、寝るわね。おやすみなさい」

「おやすみなさいませ」




翌日

ガシャン!

「クリスティーナ、大丈夫?
ダメじゃない。気をつけないと」

「私ではありません」

「素直に謝れないとダメよ」

カチャ

「マリッサ様、片付けは私が、」

「妹の失態は義理でも姉がフォローしないと。
それより着替えさせてあげて欲しいわ」

「かしこまりましたか。他のメイドを呼びますので危ないですからそのまま手を触れないでいただけますか」

「お嬢様、お着替えのお手伝いをいたします」

キラが私を連れ出してくれた。



私室に入ると

「火傷や切り傷はございませんか」

「大丈夫よ。被害はドレスだけよ。
今回、全部安物のドレスだから、汚されても破かれても大丈夫よ」

「陰湿ですね」

「まだまだよ」


連日 ぶつかられたり脚を引っ掛けられたりして転倒し痣が増えていく。



また別の日にはクローゼットのドレスは全部破かれていた。

「クリスティーナ、気に入らないからってドレスを全部破くだなんて」

「私ではありません」

「気に入らないならカーラに下げ渡すか、寄付をして新しいドレスを新調すればいいのよ」

「こんな下等動物のような真似はしません。
生まれ育ちが底辺のクズしかやりません」

2人の顔が急に険しくなった。

「私達が下等動物で底辺のクズだっていうの!?」

「犯人について言っただけなのに、どうして2人が怒っているの?変ね」

「っ!」

「キラ、まだ荷解きしていない箱にドレスがあるから掛けておいてもらえる?」

「かしこまりました」


部屋に戻ると、

「もったいないですね」

「そうね。バネッサかデボラが目撃してくれていることを祈るわ」


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