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学園生

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学園生になりました。

「ほら、抱っこするか」

「自分で降りるよ」

私をチビ扱いして過保護に変化したのはノエルくん。

数ヶ月違いの私達は同級生で、何かと側に居て世話をしてくれる。
何故かこのマメさは他の人に向くことはない。

「手」

「転ぶかもしれないだろう」

うっ…

入試で学園に来た時に派手に転んだ私は、ノエルくんの手を振り払えず 幼稚園児のように手を繋いで登校した。遠回りしてファーズ邸に馬車で迎えに来たのだ。



私達は双子の兄妹のような、親友のような感じになった。

ノエルくんは私を否定しない。怪我や健康、異性に関することでなければ。

偏った食事や、よく噛まないで飲み込むと注意される。 ドレスで走ると転ぶと注意される。
この世界ではとんでもない格好でくつろいでいても、もう何も言わない。廊下に出たりしなければ。

ノエルくんの隣に私の部屋ができていて、ファーズ邸にもノエルくんの部屋がある。

夜中にオヤツを摘みながら二人で寝こけるなんて普通の光景になった。


3日前にデビュータントがあった。
父のエスコートで行くはずが、公爵おじ様にノエルにして欲しいと懇願された。

夫人は?と聞くと、ノエルくんと公爵夫人の確執が明らかになった。

女児が欲しかった夫人は3人目が男児ノエルだったのと、医師からもう出産は無理と告げられて心の病を患った。矛先はノエルに向かった。
赤ちゃんの頃に顔に枕で押し付けていたところをメイドに見つかり、以降領地の別邸で療養という名の幽閉となっている。

それはノエルくんも知っていると説明があった。

父と相談した結果

『ノエルくん。デビューのエスコートして』

侯爵おじ様は?』

『私じゃ嫌?』

『嫌なはずがないだろう。だけど娘と父親の大事な、』

『グスン』

『う、嬉しいよ!
ダンス!ダンスの練習しなきゃ!』

その日から猛特訓をしたらしく、おじ様が笑っていた。

ノエルくんはしっかりとエスコートをして、ダンスもリードして、異性を追い払う番犬のようだった。



ゴーン ゴーン

「式が始まるぞ。急ごう」

講堂へ入り座ると学園長の挨拶から始まり、来賓の挨拶もあった。

今年はウィリアム王子殿下が入学だから特別に陛下の祝辞なんだって。

新入生代表はウィリアム王子殿下だった。

「1位ってこと?」

「かもしれないな」


入学案内書類に入試の順位とクラスが書いてあって、私とノエルくんはBクラスだった。

チラッとノエルくんを見るとニッコリ微笑む。

多分手を抜いたのだろう。

数学と歴史は高得点だったが、他は……。
歴史と数学しかやる気のない私の実力を把握しているのだろう。

だって彼は屋敷でのテストはどれも満点だったから。

「過保護だなぁ」

「野放しには出来ないからな」

「そこまで言うならしっかり面倒見てもらおうかな」

「そのつもりだよ」


そしていつの間にか居眠りをしていた私はノエルにくっついていた。

「ティナ。みんな教室に移動し始めてるぞ」

「目を開けると新入生達が私を見ながら外に向かって歩いていた」

「ごめん」

「大丈夫。涎は出なかったから」

「こんなことをしていたら、ノエルくんが学園で出会いを探せなくなっちゃう」


Bクラスの教室に入るとジロジロ見られて、必ず下の方に視線が落ちる。

視線の先を見るとノエルくんと手を繋いだままだった。

しまった~!!
いつものクセで!!

その日は説明と席決めで終わった。

私の後ろの席がノエルくんだった。



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