【完結】魔がさした? 私も魔をさしますのでよろしく。

ユユ

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アレクセイの憂鬱

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【 アレクセイ・キューレイの視点 】

キューレイ侯爵家の跡継ぎとして厳しい教育を受けた。

当時の王太子妃が妊娠すると、まだ2歳だった私は早々にキューレイ家の利になるような家門の令嬢と婚約させられた。
王太子妃の産んだ子が王女の場合、キューレイ家も輿入れ先の候補に上がる。光栄なことではあるが王女の教育が失敗した場合、嫁ぎ先に選ばれてしまえばキューレイ家は地獄と化す。まだ産まれてもいないのにそれを恐れて両親は私を婚約させたのだ。

母は王太子妃よりも1ヶ月早く第二子を妊娠していた。もし母の産む子が男児でも次男になるから王女が嫁いでくる可能性は極めて低い。

結果 王太子妃は王女を産み、母は妹を産んだ。
王女に嫁ぎ先を奪われては困ると、乳飲み子の長女を婚約させた。

五つ歳下の次女いもうとは長女のときと違って直ぐには婚約させることができなかった。王女が先に決めなくてはならないからだ。伯爵家から公爵家までの跡継ぎで未婚約の令息は選定が終わるまで婚約できなかった。
次女は公爵家の長男に憧れた。ユリウス・セロー。
次女と同い歳だった。
早々にユリウス公子が王女の婚約者候補から外れると妹は両親に公子との婚約を願った。だが断られた。妹はもう少し待って また求婚したいと言ったが、王女の婚約者候補から早々に外された理由が重度のマザコンとシスコンだと分かった。妹は縁戚の長男と婚約した。

一方で六歳下の弟は自由に育てられた。教育も厳しいものではなかった。そのせいで初対面の令嬢にいきなり抱き付いて離れないという行動をとり結果嫌われてしまった。
ゼインは彼女と結婚したいと言ったので、縁談を申し入れたが断られてしまった。 
ランドール伯爵家と縁を繋ぎたい貴族は多い。争奪戦と言えよう。中でもキューレイ家は良物件といえるはずなのに即日断ってきた。つまりエヴリン嬢の夫になれるかどうかはエヴリン嬢次第ということだろう。

諦めたくないというゼインに対し、エヴリン嬢に好きになってもらうしかないと教えてあれこれ助言した。
成果はあって、徐々に警戒を解き仲良くできるようになった。
初めてキューレイ家の夕食会に現れたエヴリン嬢を見て驚いた。かなりの美少女だった。一緒に来た伯爵夫妻に大事にされていることも分かったし、エヴリン嬢は素直な良い子だった。

申し分の無い ゼインの婿入り先に家族で喜んだ。
その反面、ゼインが羨ましかった。好きな子と結ばれる為に応援してもらえるのだから。

数年後、エヴリンと婚約が叶った。
だが あくまでも主導権は先方にある。
両親はゼインに“絶対に嫌われるようなことはするな”と忠告した。

だが、あれだけエヴリンに夢中だったゼインは浮気をしていた。私も両親も安心していて油断してしまった。
知ったのはランドール伯爵とエヴリンが訪ねてきて、ゼインの素行調査報告書を見せられたときだった。

私は領地にいて立ち会えなかったが、先方は立腹していて、特にエヴリン嬢は“触れるな”と拒絶したと聞いた。
慌てて領地から駆けつけると、両親は頭を抱えていた。

「ゼインが他の令嬢と交わっているところをエヴリンが見てしまったのよ」

「え!?」

「2週間で解消の気持ちが変わらなければ解消の同意書に署名しろと言われた。署名しないなら破棄の手続きを取ると言われてしまった。
ゼインは魔がさしただの 愛しているのはエヴリンだけだなどと言い繕うだけで話にならん」

「しかも今の令嬢が3人目で、一夜限りだった令嬢は1人だけ。
見つかった日は観劇と食事のデートの後に馬車の中で交わっていたところをエヴリンに見られてしまったの」

「好きになって求婚して、エヴリン嬢の気持ちを変えて婚約しておいて…なんて馬鹿なんだ。
我慢できないなら娼館に行けば秘密は守られたのに」

「今から別の婿入り先を探さなくてはいけないだなんて」

ユリウス公子が黙っていない…そう思った。

ユリウス公子はマザコンでもシスコンでもないことが分かった。うちやうちの縁戚の催し以外はユリウス公子がエヴリンをエスコートしていたからだ。
兄か保護者のように接していたが、公子は男としてエヴリン嬢を愛していて独占していたのだ。

ユリウス公子はセロー公爵家の跡継ぎ、エヴリンはランドール伯爵家の跡継ぎ。結ばれることはない。
だが、公子の行動を見ると狙っているとしか思えなかった。


学園で話しかけても拒絶されてしまうと落ち込むゼインに自業自得だと思うが、ランドール家との縁続きになれるチャンスを逃してもらいたくないという考えからゼインに慎重になるよう忠告した。

なのに……


父「何をやっているんだ、おまえは!!」

弟「あれは誤解で、」

父「だが学園側はおまえとカレス嬢の関係を認めた上で処罰しているではないか!!」

弟「昼休みにマリーがエヴリンに絡んで水をかけたのです。それを咎める為に外階段で話し合いをしていたのです」

私「問題の浮気相手と外階段に出ていたところを見つかって処罰されたのか!?」

父「停学10日間だ。理由は 禁止されている外階段に出て逢い引きをしていた為と理由が記載されている。これは記録に残るし掲示板にも張り出されるのだぞ!」

弟「ですが、」

母「あの子に知られたら終わりよ」

弟「…実は、」

ゼインが何か言いかけたときに家令が手紙を届けに来た。

「旦那様、ランドール伯爵からお手紙が届きました」

父上は開封し読むと母上に渡した。
父上は酒を手に取り、母上は目眩を起こしていた。
その手紙を読んだ瞬間に終わったと思った。

外階段の逢引きはエヴリンが見つけたということ。
ゼインは浮気相手のカレス嬢に、エヴリン嬢との婚約は政略結婚だと説明していたこと。
カレス子爵家の方がいいとゼインが言っていたと、カレス嬢がエヴリン嬢に伝えたこと。
次の逢瀬の約束をキャンセルしただけで、別れていなかったこと。
これらの不誠実な対応を受け、明日までに解消の同意書を渡さねば、破棄の手続きを取ること。
エヴリン嬢は既に新たな相手を探し始めたことが書いてあった。

「ゼイン」

「はい」

「浮気相手にエヴリン嬢とは政略結婚だと言ったのだな?」

「……誤解を与えたかも知れません」

「外階段に浮気相手と2人でいたところを見つけたのはエヴリン嬢なのだな?」

「……はい。ですが逢引きなどではありません」

「まだ別れていないんだろう?」

「タイミングを見て別れを切り出そうと…」

「終わりだ ゼイン」

「兄上っ」

「おまえは婿にもらっていただく立場なのに、こうも裏切っては手立ては無い。エヴリン嬢はおまえを見限って、新しい婿探しを始めたそうだ」

ゼインは手紙を取り上げて、文字を目で追った。

「同意書に署名をする」

「父上!!」

「これは おまえが選んだ結果だ。覆りようがない」

「疲れたわ。今日はもう休ませてもらうわね」

母上はメイドに支えられて退室した。

ゼインはそれでも騒いでいたので自室に監禁することになった。

父上は同意書を書き上げるとランドール家に直接渡しに出かけてしまった。



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