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五国統一
南国 ファヴール
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南のファヴール王国は躊躇っていた。
今まで何の問題もなく栄えてきたのに突然何故と。
「元の一つの国にしたく奪われた土地を返していただきたいだけです。
条件をのめば王族でいられます」
「断ったらフォルスのようになると?」
「はい」
「娘を嫁がせよう。
美しく従順だ。16歳になったばかりだからお喜びになるだろう」
「ファヴール国王。この戦いの要の人物はそのようなことを嫌います。
少女に頼らないとならないほどファヴールの男達は弱いのでしょうか。
娘に背負わせるなどと恥ずかしいことは止めた方がよろしい。短絡的な案を口に出すくらいなら今すぐ引退したらどうですか」
「王族や貴族の政略結婚は当たり前だ!」
「こんなのは政略とはいいませんよ」
「兎に角、其方はただの使いだろう。持ち帰って主人に聞くのが務めだ」
「では聞いて戻ってまいります」
使者はフォルス城のソーサ団長とノアの元へ向かった。
1週間後
「ノア、団長がお見えです」
「どうぞ」
「ノア、南のファヴール王国から使者が戻ったが王女を差し出すからそれでおさめて欲しいと言ってきた。
批難したが主人に聞いてこいと言われたそうだ」
「ふ~ん。じゃあ行こうかな。
ガブリエル!」
「はっ!」
「南へ行くから二人にも準備させて」
「直ぐにいたします」
「団長、揉めると思うからよろしく」
「気を付けてくれ」
数日後、ノア達はファヴール城で色とりどりの花に迎えられた。
「よく来た」
「私はノア・ヒート。フロワ国王から全権を任されて参りました」
「いくつなのだ」
「15歳です」
「子供に委ねたというのか」
「貴方も16歳の娘頼りでは?」
「成人した」
「僕と大して変わりませんよ。成人して出直せば納得ですか?」
「では返事を聞こう。
王女の他にも未婚の貴族も用意した。ひとりか二人、フロワ王の好みの女を連れていって可愛がってくれ。
滞在中に其方達を癒す女を部屋に向かわせよう」
「要らない」
「ああ。未経験か。奉仕に長けた女を向かわせよう。横になっているだけで腰が抜けるほど気持ちよくしてくれるから安心するがいい」
「要らないと言っただろう。お前は娼館の支配人か?」
「なっ! 不敬だぞ!!」
「娼婦の斡旋しかしていないだろう」
「おい!こいつを捕えろ!!」
「触れようとすれば死ぬぞ。忠告はしたからな」
「ギャアアアアッ!!」
衛兵がノアに触れようと手を伸ばすと炎に包まれた。
「ひぃっ!!」
「分かりやすくフォルスを落としたんだけど」
「ひいいいいっ!」
「王太子を呼べ。最初の書簡を読ませてここに立たせろ」
しばらくすると王太子が現れた。
子供だった。
「王太子殿下。歳はいくつですか」
「13歳です」
そう言うとノアに近寄り跪いた。
「僕のお姫様…お嫁さんになってください!」
頬を染め瞳をキラキラさせてノアを見上げた。
王太子を連れてきた大人は王太子に耳打ちをした。
「殿下、そのお方は男性です」
「そんな馬鹿なことがあるか!これほど可愛くて綺麗な姫はいない!何処に目を付けているんだ!」
「しかし殿下」
「そ、そうだミシェル!お前が彼を娶って…熱い!!」
男に男を娶れと言い出した国王の眉を燃やした。
「今のは?」
「殿下、フロワ王国の魔法使いです」
「姿だけじゃなくて魔法まで美しい!
おい!何故茶や菓子を用意して持て成さないのだ!
立たせっぱなしでは疲れてしまうだろう!
気が利かないな!
姫、我がサロンへいらしてください。
貴女のことを教えてください。
ああ、まだ婚約してなくて良かった!
2年前から見合いがあったのですが運命の女性が現れると信じていたのです!」
ノアは唖然としていると間にエイダンが割り入った。
「国と国との話し合いの最中です」
「なんと素晴らしい!縁談のですね!
受けます!今すぐ貴女と婚約します!
ミーと呼んでください」
「ミシェル王太子殿下」
「ミーと!是非ミーと呼んでください!」
「ミー……」
「ああっ!最高だ!」
「ノア…何やってるんですか」
ノアは子供のキラキラに弱かった。
パァッと屈託なく微笑むミシェルにノーが言い辛かった。
「ちょっと見張ってて。お茶してくる」
「ノア!?」
「ガブリエルついてきて」
「ノア姫、お手をどうぞ!」
「あ、はい」
ノアはミシェルの手を取って謁見の間を出た。
王太子のサロンに着くと茶や菓子が用意された。
「僕が毒味をしよう」
そう言ってノアのカップを手に取り一口飲んだ。菓子も半分に切ってノアに好きな方を選ばせた。
「姫はいくつですか」
「ノアです」
「ノアはいくつですか」
「15です」
「2歳違いか。5年後には歳の差など気にならなくなっている。
婚約者は?恋人がいたことは?」
「ありません」
「では間接キスは私が初めてでしょうか」
「なっ!」
「真っ赤だ。可愛いな。やっぱり女の子なんだね。
女の子に危険な任務を与えるなんてどうかしている」
ノアは気が付いた。
謁見の間では子供を装っていたが、王太子は切れ者ではないかと。
「何故子供のフリをなさるのですか」
「まだ子供で力がないからだ。
元は7歳離れた兄が王太子だったんだが、兄は優秀で無能な国王を隠居させて兄を国王に望む声が大きくなってしまった。
去年殺されたよ。落馬事故と言われたが目撃者がいて、近衛が犯人だった。
その日は何故か、父の護衛が兄に着いていたらしく二人になったところでジャケットの背を掴み引き倒し馬に何かをした。
多分針だろう。馬は暴れて兄を踏みつけた。
命は助かったが半身が不自由になり、顔も踏まれたために崩れてしまった。
あそこに掛かっているのが兄と僕の肖像画だ。
美しく賢く民を思う心優しい…兄は素晴らしい王になれたはずなのに毒で死んでしまった。自殺なのか他殺なのか分からない」
肖像画を見上げる王太子は拳を握りしめていた。
今まで何の問題もなく栄えてきたのに突然何故と。
「元の一つの国にしたく奪われた土地を返していただきたいだけです。
条件をのめば王族でいられます」
「断ったらフォルスのようになると?」
「はい」
「娘を嫁がせよう。
美しく従順だ。16歳になったばかりだからお喜びになるだろう」
「ファヴール国王。この戦いの要の人物はそのようなことを嫌います。
少女に頼らないとならないほどファヴールの男達は弱いのでしょうか。
娘に背負わせるなどと恥ずかしいことは止めた方がよろしい。短絡的な案を口に出すくらいなら今すぐ引退したらどうですか」
「王族や貴族の政略結婚は当たり前だ!」
「こんなのは政略とはいいませんよ」
「兎に角、其方はただの使いだろう。持ち帰って主人に聞くのが務めだ」
「では聞いて戻ってまいります」
使者はフォルス城のソーサ団長とノアの元へ向かった。
1週間後
「ノア、団長がお見えです」
「どうぞ」
「ノア、南のファヴール王国から使者が戻ったが王女を差し出すからそれでおさめて欲しいと言ってきた。
批難したが主人に聞いてこいと言われたそうだ」
「ふ~ん。じゃあ行こうかな。
ガブリエル!」
「はっ!」
「南へ行くから二人にも準備させて」
「直ぐにいたします」
「団長、揉めると思うからよろしく」
「気を付けてくれ」
数日後、ノア達はファヴール城で色とりどりの花に迎えられた。
「よく来た」
「私はノア・ヒート。フロワ国王から全権を任されて参りました」
「いくつなのだ」
「15歳です」
「子供に委ねたというのか」
「貴方も16歳の娘頼りでは?」
「成人した」
「僕と大して変わりませんよ。成人して出直せば納得ですか?」
「では返事を聞こう。
王女の他にも未婚の貴族も用意した。ひとりか二人、フロワ王の好みの女を連れていって可愛がってくれ。
滞在中に其方達を癒す女を部屋に向かわせよう」
「要らない」
「ああ。未経験か。奉仕に長けた女を向かわせよう。横になっているだけで腰が抜けるほど気持ちよくしてくれるから安心するがいい」
「要らないと言っただろう。お前は娼館の支配人か?」
「なっ! 不敬だぞ!!」
「娼婦の斡旋しかしていないだろう」
「おい!こいつを捕えろ!!」
「触れようとすれば死ぬぞ。忠告はしたからな」
「ギャアアアアッ!!」
衛兵がノアに触れようと手を伸ばすと炎に包まれた。
「ひぃっ!!」
「分かりやすくフォルスを落としたんだけど」
「ひいいいいっ!」
「王太子を呼べ。最初の書簡を読ませてここに立たせろ」
しばらくすると王太子が現れた。
子供だった。
「王太子殿下。歳はいくつですか」
「13歳です」
そう言うとノアに近寄り跪いた。
「僕のお姫様…お嫁さんになってください!」
頬を染め瞳をキラキラさせてノアを見上げた。
王太子を連れてきた大人は王太子に耳打ちをした。
「殿下、そのお方は男性です」
「そんな馬鹿なことがあるか!これほど可愛くて綺麗な姫はいない!何処に目を付けているんだ!」
「しかし殿下」
「そ、そうだミシェル!お前が彼を娶って…熱い!!」
男に男を娶れと言い出した国王の眉を燃やした。
「今のは?」
「殿下、フロワ王国の魔法使いです」
「姿だけじゃなくて魔法まで美しい!
おい!何故茶や菓子を用意して持て成さないのだ!
立たせっぱなしでは疲れてしまうだろう!
気が利かないな!
姫、我がサロンへいらしてください。
貴女のことを教えてください。
ああ、まだ婚約してなくて良かった!
2年前から見合いがあったのですが運命の女性が現れると信じていたのです!」
ノアは唖然としていると間にエイダンが割り入った。
「国と国との話し合いの最中です」
「なんと素晴らしい!縁談のですね!
受けます!今すぐ貴女と婚約します!
ミーと呼んでください」
「ミシェル王太子殿下」
「ミーと!是非ミーと呼んでください!」
「ミー……」
「ああっ!最高だ!」
「ノア…何やってるんですか」
ノアは子供のキラキラに弱かった。
パァッと屈託なく微笑むミシェルにノーが言い辛かった。
「ちょっと見張ってて。お茶してくる」
「ノア!?」
「ガブリエルついてきて」
「ノア姫、お手をどうぞ!」
「あ、はい」
ノアはミシェルの手を取って謁見の間を出た。
王太子のサロンに着くと茶や菓子が用意された。
「僕が毒味をしよう」
そう言ってノアのカップを手に取り一口飲んだ。菓子も半分に切ってノアに好きな方を選ばせた。
「姫はいくつですか」
「ノアです」
「ノアはいくつですか」
「15です」
「2歳違いか。5年後には歳の差など気にならなくなっている。
婚約者は?恋人がいたことは?」
「ありません」
「では間接キスは私が初めてでしょうか」
「なっ!」
「真っ赤だ。可愛いな。やっぱり女の子なんだね。
女の子に危険な任務を与えるなんてどうかしている」
ノアは気が付いた。
謁見の間では子供を装っていたが、王太子は切れ者ではないかと。
「何故子供のフリをなさるのですか」
「まだ子供で力がないからだ。
元は7歳離れた兄が王太子だったんだが、兄は優秀で無能な国王を隠居させて兄を国王に望む声が大きくなってしまった。
去年殺されたよ。落馬事故と言われたが目撃者がいて、近衛が犯人だった。
その日は何故か、父の護衛が兄に着いていたらしく二人になったところでジャケットの背を掴み引き倒し馬に何かをした。
多分針だろう。馬は暴れて兄を踏みつけた。
命は助かったが半身が不自由になり、顔も踏まれたために崩れてしまった。
あそこに掛かっているのが兄と僕の肖像画だ。
美しく賢く民を思う心優しい…兄は素晴らしい王になれたはずなのに毒で死んでしまった。自殺なのか他殺なのか分からない」
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