【完結】貴方のために涙は流しません

ユユ

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成人

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馬鹿な話をしながら待つとやっとお声がかかった。

シルヴェストル様がいるから、王族のパートナーとして一番最後に挨拶となる。

上着を返して、会場入りした。

国王夫妻の前で挨拶をすると王妃殿下が話しかけてきた。

「アリス嬢。何故シルヴェストル殿下と?」

「私がお願いしました」

「知り合いだったかしら」

「友人になりました」

「婚約者は?」

私はポケットから手紙を取り出し、差し出した。
お付きの人が受け取り王妃殿下に渡す。

「これは?」

「その婚約者からの手紙です。何故私がシルヴェストル様をお誘いしたのかが分かります」

王妃殿下が手紙を読むと目つきが鋭くなった。

「シルヴェストル殿下」

「はい、王妃殿下」

「しっかりとアリス嬢をエスコートして側を離れないように」

「仰せのままに」




そのままダンスホールへ行き、名前を呼ばれるとパートナーの手を取って好きな場所へ。

「第二王子リオネル殿下、スーザン・ジオニトロ嬢」

「第三王子シルヴェストル殿下、アリス・ジオニトロ嬢」

その後も次々と公爵家、侯爵家が呼ばれ、演奏が始まった。

王子殿下のリードでステップを踏み出す。
背中に添えた手が緊張気味なのがわかる。

「また、パートナーになってくださいますか」

「まだ踊り始めたばかりだぞ」

「あっという間に終わってしまいます。今のうちに約束を取り付けないと」

「お前、また私に針を千本飲ませるとかいう呪いをかけるつもりか」

「呪いじゃありません。それだけ守って欲しい約束だということです」

「私にがなければ叶えよう」

「やった!」

「そんなドレスを着ていても色気がないな」

「じゃあ、次はレース無しで、」

「アリス」

「はい」

「あまり肌を見せすぎるな」

「嫌ですか?」

「嫌だ」

「もしかして、“俺にだけ見せろ” とかいうやつですか」

「は!?」

「すみません、言ってみただけです」

「そうかもしれないな」

「えっ?」

「アリスの婚約者、見えたら教えてくれ」

「自信ないなぁ」

「何が」

「滅多に会わないので、判別できるかどうか」

「嫌いな奴はわかるさ」

「私達、同じクラスになれるといいですね」

「昼だけじゃないのか」

「そんなに嫌ですか?」

「そんなことは言っていない。ただ、迷惑を掛けてしまう」

「何を心配しているんですか。迷惑をかけられるのはシルヴェストル様の方ですよ。いつかシルヴェストル様は美しい令嬢と婚約なさるでしょう。それまでの僅かな時間を楽しく過ごせたらと思います」

「……私に婚約者ができたらどうなるんだ?」

「もっと距離を置いた友人関係になるでしょう。シルヴェストル様の婚約者が不安にならないように」

「期間限定の友情なんておかしくないか」

「ですがこの世界では、男女の友人関係は距離感を間違えると大変なことになります」

「本当に婚約者との契約を終わらせるつもりなのか」

「はい。そもそも彼は私が嫌いです。爵位だけしか見えていませんから」

「綺麗だ」

「え?」

「とても綺麗だ」

「ありがとうございます」

「信じていないな?」

「私は妹のように綺麗な色でも可愛い顔でもありません。そもそも美人に産まれていたら、ここまで酷い扱いは受けなかったと思います」

「アリス、私が信じられないのか?」

「シルヴェストル様が優しいお気持ちで仰ってくださっているのは分かっています」

「はぁ、まったく……」


曲が終わり、入れ替えになった。

伯爵家から次々と呼ばれ、しばらくすると、

「オルデン・テムスカリン殿、ヤスミン・コーレル令嬢」

オルデンは濃いバターブロンドにアクア色の瞳のなかなかの美男子だった。

チッ 金持ちの家ってだけじゃないのね。

スーザンも美人だし、2人と比べると私は顔立ちも色もパッとしない。まあ、おかげで貴族辞めたとしても生きていけるけど。

コーレルってなんだったっけ。

「伯爵家だな」

「え?」

「コーレル伯爵家の三女だ」

「そうですか」

彼女は婚約者はいないのかな?それとも嫌な相手なのかな?

「アリスちゃん」

声の先に振り向くとガーネット夫妻だった。

「おめでとうアリスちゃん」

「ありがとうございます、ガーネット伯爵、シルビア様」

「シルヴェストル王子殿下、成人おめでとうございます」

「ありがとう、伯爵」

「アリスの婚約者はアレだな」

「そうですね」

「他のご令嬢をパートナーにしてるなんて」

「大丈夫です。私にとってはありがたいですわ」

そう言いながら手紙を見せた。

「ふ~ん、私のアリスちゃんにそういうことをするのね」

「本当に大丈夫ですよ。そういえばご子息にお会いしました」

「学園で困ったことがあればリヴウェルを頼ってくれ」

「お気遣いいただきありがとうございます」

グウ~。

お腹が鳴ってしまった。

「少し腹に入れたらどうだ」

「はい、そうします。
行きましょう、シルヴェストル様」


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