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別れ
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グラシアン王子殿下とトリシア王女殿下が婚約を整えるために予定よりも早く帰国した。
“アリス!コルシックに来いよ”
“嫌です。お気を付けて。下着履いてくださいね。皆様によろしく”
“お前が見に来い!”
これが別れの言葉だった。
刺繍の話を絵で描いて教えたらエミリアン様は、“え?商品化した方がいいの?”と困惑した。
オルデンはクラス1つしか上がらず投げ出して荒れているらしい。
「頑張ってなんとかしてくださいよ、お兄様」
「アレは無理だよ」
「だってエミリアン様は主席で卒業したのに、なんでアレだけ?次男で外に出すから放置したのですね。困りますよ。うちは生ゴミ回収業なんてやってません」
「生ゴミって…」
「生きてるし身がついてますから生ゴミです。
骨だけになれば燃えないゴミ?なんだろう」
「いたら何かの役に立つかもしれないじゃないか」
「具体的にどうぞ」
「う~ん…精神の鍛錬?」
「要らん」
「手のかかる野良猫?」
「もう野良になっちゃってるじゃないですか!ちゃんと躾けてくださいよ」
「同じ教師つけたんだぞ?突然変異だから諦めろ」
「だから、何でそんなものを侯爵家に寄越すんですか」
「あ、バレたらしい」
廊下からオルデンの騒ぎ声が聞こえてきた。
私が来ていることがバレたらしい。
「じゃあ、帰りますね」
テラスから帰ろうとした。
「待ってくれ。そっちから出て行ったら私が弟の婚約者と密会していたみたいになるじゃないか」
ニタァ
「な、なんだその不吉な笑みは!」
手招きしてエミリアン様を呼ぶと、彼の頬と襟に唇を付けた。口紅がしっかり残ったのを確認した。
「なっ!!」
「お大事に~」
「え?」
テラスから出てしばらくすると、叫び声が聞こえて来た。
「ち!違う!オルデン!」
「証拠が残ってるだろう!!私のアリスに不埒な真似を!!」
「だから違うって!!」
……ふふっ。
表に回って馬車に乗り、ホッジンズ店長の元へ行った後、リヴウェル伯爵家のシルビア様に会いに行った。
「シルヴェストル殿下が求婚されたと聞いたわ」
「とても美しい方でした」
「仲良くしていたから寂しくなるわね」
「はい」
シルビア様は私の隣に座り直して抱きしめてくれた。
「幸せになって欲しいです」
「そうね」
1ヶ月後、シルヴェストル様とトリシア王女殿下の婚約が発表された。
彼は学園の休みの日にはコルシックの言葉や文化の授業を受けているという。
3年生が始まり、相変わらず私の隣はマチアス様が座っている。1年生や2年生の時とは違い、マチアス様は私に微笑み熱を帯びた眼差しを向ける。
授業中も手を伸ばし髪に触れる。
そんなことをしていても学年トップの成績だった。
屋敷で相当頑張っているのかと聞いたら、“なんとなくやっていた勉強に本気を出しただけだよ”と笑っていた。私もそんなチートが欲しい!
せめて数学では負けたくないと頑張った。
「シルヴェストル殿下が夏季休暇からコルシックへ行って残りの学業は向こうに留学になるそうです」
「え?」
「卒業したらそのまま式を挙げると聞きました」
「そう」
「お姉様…」
ペイジが何も言ってこないということは これが正解なんだと自分に言い聞かせて笑顔を作った。
「お祝いの品を用意しないとね。スーザンはリオネル殿下と贈るでしょう?」
「お姉様、今からでも、」
「私にはまだ婚約者がいるし、侯爵家よりコルシックの王家の方がいいはずよ。
それに王族同士の縁談は国同士の縁談ということだもの。余計なことは言ってはいけないわ」
「……」
「そんな顔をしないで。シルヴェストル様が幸せになれるなら私は本望よ。
それにあんな美人に愛されて毎日一緒に過ごせるのよ?王女に比べたら私は霞んでしまうわ」
「霞まない!」
「スーザン?」
「私のお姉様は世界一のお姉様で、世界一の女性です!!」
涙をこぼしながら叫ぶスーザンを抱きしめると、幼子のように泣き出した。
「スーザンは優しくて可愛い世界一の妹よ」
もうすぐ夏季休暇。
オルデンは最近 違法賭博場に出入りし 賭け事を終えると、そこで女性を引っ掛けて体の関係を持っているらしい。
エミリアン様から“荒れている”と聞いたので尾行調査をさせてみた。破棄の理由を作ってくれる素晴らしい男だと感心した。
シャルロットは相変わらず、リオネル殿下やリヴウェル様やブレイル様を狙っている。
図書室で勉強していると同じテーブルに座ってきて“教えて”と甘えたり、登校時を狙って纏わりついている。
3年生になると、係を選んでやらなくてはならない。提出物などを集めたり配布物を配ったり、準備を手伝う助手係。どんな卒業パーティをするか考えて実行に移す卒業パーティ係。美化係。園芸係。最下位クラスの生徒に週に1度90分勉強を教える教育係のいずれかを受け持たなければならない。
第三希望まで書いて発表された。
スーザンは助手係。リヴウェル様は教育係。シルヴェストル様は美化係。私とマチアス様は園芸係。
リオネル殿下とブレイル様は卒業パーティ係で、なんとシャルロットも卒業パーティ係だった。
クラス単位で係の人数が決まっているので 選考も担任が行った。発表後に殿下の係にシャルロットもいて教師は真っ青。
卒業パーティは何度も集まって案を出していき計画を練るのでシャルロットにはご馳走だろう。
その後、同じ係だから拒絶ができず2人は消耗していたが、靡くことは無さそうなのでもう放置。
そしてついにシルヴェストル様との別れの日がやってきた。出発の前日にパーティが行われ、お祝いの品を贈った。
大勢の招待客で一言しか言葉が交わせなかった。
“おめでとうございます”“ありがとう”
翌朝、馬車に乗り込むシルヴェストル様を見つめていた。ドアが閉まりもう出発するというときに、彼は窓を開けて私を呼んだ。
「アリス!」
「はい」
「アリス、本当は、」
彼は何か言いかけたけど、マチアス様が後ろから私の肩に腕を回して引き寄せると、彼は顔を歪めた後に“元気で”と言って窓を閉めた。
走り出す馬車を見つめていると、マチアス様が耳元で囁く。
「殿下の幸せを祈って後腐れのないようにしないと。もう帰ろう」
「はい」
さようなら、シルヴェストル様
“アリス!コルシックに来いよ”
“嫌です。お気を付けて。下着履いてくださいね。皆様によろしく”
“お前が見に来い!”
これが別れの言葉だった。
刺繍の話を絵で描いて教えたらエミリアン様は、“え?商品化した方がいいの?”と困惑した。
オルデンはクラス1つしか上がらず投げ出して荒れているらしい。
「頑張ってなんとかしてくださいよ、お兄様」
「アレは無理だよ」
「だってエミリアン様は主席で卒業したのに、なんでアレだけ?次男で外に出すから放置したのですね。困りますよ。うちは生ゴミ回収業なんてやってません」
「生ゴミって…」
「生きてるし身がついてますから生ゴミです。
骨だけになれば燃えないゴミ?なんだろう」
「いたら何かの役に立つかもしれないじゃないか」
「具体的にどうぞ」
「う~ん…精神の鍛錬?」
「要らん」
「手のかかる野良猫?」
「もう野良になっちゃってるじゃないですか!ちゃんと躾けてくださいよ」
「同じ教師つけたんだぞ?突然変異だから諦めろ」
「だから、何でそんなものを侯爵家に寄越すんですか」
「あ、バレたらしい」
廊下からオルデンの騒ぎ声が聞こえてきた。
私が来ていることがバレたらしい。
「じゃあ、帰りますね」
テラスから帰ろうとした。
「待ってくれ。そっちから出て行ったら私が弟の婚約者と密会していたみたいになるじゃないか」
ニタァ
「な、なんだその不吉な笑みは!」
手招きしてエミリアン様を呼ぶと、彼の頬と襟に唇を付けた。口紅がしっかり残ったのを確認した。
「なっ!!」
「お大事に~」
「え?」
テラスから出てしばらくすると、叫び声が聞こえて来た。
「ち!違う!オルデン!」
「証拠が残ってるだろう!!私のアリスに不埒な真似を!!」
「だから違うって!!」
……ふふっ。
表に回って馬車に乗り、ホッジンズ店長の元へ行った後、リヴウェル伯爵家のシルビア様に会いに行った。
「シルヴェストル殿下が求婚されたと聞いたわ」
「とても美しい方でした」
「仲良くしていたから寂しくなるわね」
「はい」
シルビア様は私の隣に座り直して抱きしめてくれた。
「幸せになって欲しいです」
「そうね」
1ヶ月後、シルヴェストル様とトリシア王女殿下の婚約が発表された。
彼は学園の休みの日にはコルシックの言葉や文化の授業を受けているという。
3年生が始まり、相変わらず私の隣はマチアス様が座っている。1年生や2年生の時とは違い、マチアス様は私に微笑み熱を帯びた眼差しを向ける。
授業中も手を伸ばし髪に触れる。
そんなことをしていても学年トップの成績だった。
屋敷で相当頑張っているのかと聞いたら、“なんとなくやっていた勉強に本気を出しただけだよ”と笑っていた。私もそんなチートが欲しい!
せめて数学では負けたくないと頑張った。
「シルヴェストル殿下が夏季休暇からコルシックへ行って残りの学業は向こうに留学になるそうです」
「え?」
「卒業したらそのまま式を挙げると聞きました」
「そう」
「お姉様…」
ペイジが何も言ってこないということは これが正解なんだと自分に言い聞かせて笑顔を作った。
「お祝いの品を用意しないとね。スーザンはリオネル殿下と贈るでしょう?」
「お姉様、今からでも、」
「私にはまだ婚約者がいるし、侯爵家よりコルシックの王家の方がいいはずよ。
それに王族同士の縁談は国同士の縁談ということだもの。余計なことは言ってはいけないわ」
「……」
「そんな顔をしないで。シルヴェストル様が幸せになれるなら私は本望よ。
それにあんな美人に愛されて毎日一緒に過ごせるのよ?王女に比べたら私は霞んでしまうわ」
「霞まない!」
「スーザン?」
「私のお姉様は世界一のお姉様で、世界一の女性です!!」
涙をこぼしながら叫ぶスーザンを抱きしめると、幼子のように泣き出した。
「スーザンは優しくて可愛い世界一の妹よ」
もうすぐ夏季休暇。
オルデンは最近 違法賭博場に出入りし 賭け事を終えると、そこで女性を引っ掛けて体の関係を持っているらしい。
エミリアン様から“荒れている”と聞いたので尾行調査をさせてみた。破棄の理由を作ってくれる素晴らしい男だと感心した。
シャルロットは相変わらず、リオネル殿下やリヴウェル様やブレイル様を狙っている。
図書室で勉強していると同じテーブルに座ってきて“教えて”と甘えたり、登校時を狙って纏わりついている。
3年生になると、係を選んでやらなくてはならない。提出物などを集めたり配布物を配ったり、準備を手伝う助手係。どんな卒業パーティをするか考えて実行に移す卒業パーティ係。美化係。園芸係。最下位クラスの生徒に週に1度90分勉強を教える教育係のいずれかを受け持たなければならない。
第三希望まで書いて発表された。
スーザンは助手係。リヴウェル様は教育係。シルヴェストル様は美化係。私とマチアス様は園芸係。
リオネル殿下とブレイル様は卒業パーティ係で、なんとシャルロットも卒業パーティ係だった。
クラス単位で係の人数が決まっているので 選考も担任が行った。発表後に殿下の係にシャルロットもいて教師は真っ青。
卒業パーティは何度も集まって案を出していき計画を練るのでシャルロットにはご馳走だろう。
その後、同じ係だから拒絶ができず2人は消耗していたが、靡くことは無さそうなのでもう放置。
そしてついにシルヴェストル様との別れの日がやってきた。出発の前日にパーティが行われ、お祝いの品を贈った。
大勢の招待客で一言しか言葉が交わせなかった。
“おめでとうございます”“ありがとう”
翌朝、馬車に乗り込むシルヴェストル様を見つめていた。ドアが閉まりもう出発するというときに、彼は窓を開けて私を呼んだ。
「アリス!」
「はい」
「アリス、本当は、」
彼は何か言いかけたけど、マチアス様が後ろから私の肩に腕を回して引き寄せると、彼は顔を歪めた後に“元気で”と言って窓を閉めた。
走り出す馬車を見つめていると、マチアス様が耳元で囁く。
「殿下の幸せを祈って後腐れのないようにしないと。もう帰ろう」
「はい」
さようなら、シルヴェストル様
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