【完結】王命の代行をお引き受けいたします

ユユ

文字の大きさ
13 / 20

リオナード/謁見

しおりを挟む
【 リオナードの視点 】


パーティを終えて帰ろうとした時に陛下の側近が話しかけてきた。

「ベルナード侯爵。王家の知らない契約があるのなら、明日の謁見の時に陛下にお渡しできるように契約内容を書いて持参願います。原本があるようでしたらそちらをお願いします」

「かしこまりました」



屋敷に戻り、父が契約内容を思い出しながら紙に書いた。原本は領地の金庫にしまってある。

「こうなったら正直に話すしかないわね」

「そうですね」

「しかし、ガーランド子爵夫人ねえ」

「すみません」

「どんな付き合いだったの?」

「お互い独身で、数ヶ月 大人の関係になっただけです」

「体だけ? 気持ちは?」

「ありません」

「耳にはしていたが、どのくらいいるんだ」

「大人の交際のような関係になったのは6人で、その場限りも……それなりに」

「「 はぁ 」」

「すみません」

「夫人のような方が現れるかもしれないってことだな」

「そうね。矛先はエステルになってしまうのね」

「……」




翌日 登城し、謁見の間に通されたが、先にいたのは伯爵夫妻だけだった。

「伯爵夫人、エステルは、」

「屋敷に残してきましたわ。傷がありますから」

「そうですね。
申し訳ございません」

「聞くのが怖いのですが、ガーランド夫人のような方は今後も現れますの?」

「可能性は……あります」

「娘は真っ新ですのよ」

「申し訳ございません」

「ヴァネッサなら扇子で弾いてお終いでしょうけど…エステルには酷かもしれないわね」

「私は過去は戻せませんが、エステルを愛しているんです」

「そうは言っても、」

話の途中で陛下が入室なさった。



国王「契約書を読んだ。これは誰の要望だ」

私「私とヴァネッサ嬢で相談をして作成しました」

国王「そこまで仲が悪かったのか」

私「相性は悪かったと思います」

国王「確かに、婚姻して両家の縁を繋げとしか書かなかったが、これでは縁を繋いだことにはならないじゃないか。

これをエステルにも適用させているのだな?」

父「はい。新婦の入れ替わりが急でしたのでそのままに」

国王「で、エステルもこの内容を知っているから妾の話を口にしたのだな?」

父「はい、陛下」

国王「エステルは別棟で生活しているのだな?」

父「はい、陛下。ただし、食事を一緒にとったり、お茶をしたり、時には領地を観光に連れて行ったり買い物をしたり。

急に嫁がざるを得なかったエステルがゆっくり馴染むように心を配ったつもりです」

伯爵「確かにエステルからもそう聞いていて、リオナード殿がベルナード邸に泊まりにきたこともあります」

国王「だが、エステルはお飾りの妻を受け入れているではないか。
年齢的に初夜や出産は慌てる必要は無いが、最初から妾に産ませるのが前提なのは問題だ。

妻が孕まないから妾に子を産ませたか、愛人を作り妾に迎えて子を産ませたかという目で見られる。
ヴァネッサ嬢はそれでも構わなかったかもしれないが、エステルにそんな視線を受け止めろと?」

私「エステルとの婚姻当時から妾を探すことを止めております。

私はエステルを愛してしまいました。
妾など迎えるつもりはありません」

国王「エステルはそう思っていないではないか。彼女の中では条件は生きているぞ?」

私「怖かったんです。
条件を無効にして欲しいと言って、拒絶されたらと怖くて言い出せませんでした。

ゆっくり私を知ってもらい、ソワールに馴染んでもらえたらと」

国王「まるで初恋のようだな」

私「……」

国王「何人も女と遊んでも、心を奪うものはいなかったのだな。

ちゃんとエステルと話し合いなさい」

私「はい、陛下」


国王「それと、ガーランド子爵は夫人と離縁を決めたそうだ」

そう言い残して退席なさった。


伯爵「リオナード殿。娘は一旦領地に連れ帰り休ませることにした」

私「伯爵、」

伯爵「エステルは気が立っている。今 戻してもいい方向に話が進む気はしない」

父「エステルに謝っておいでください」

私「父上!?」

伯爵「分かりました。では」

伯爵夫妻は立ち去ってしまった。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無愛想な婚約者の心の声を暴いてしまったら

雪嶺さとり
恋愛
「違うんだルーシャ!俺はルーシャのことを世界で一番愛しているんだ……っ!?」 「え?」 伯爵令嬢ルーシャの婚約者、ウィラードはいつも無愛想で無口だ。 しかしそんな彼に最近親しい令嬢がいるという。 その令嬢とウィラードは仲睦まじい様子で、ルーシャはウィラードが自分との婚約を解消したがっているのではないかと気がつく。 機会が無いので言い出せず、彼は困っているのだろう。 そこでルーシャは、友人の錬金術師ノーランに「本音を引き出せる薬」を用意してもらった。 しかし、それを使ったところ、なんだかウィラードの様子がおかしくて───────。 *他サイトでも公開しております。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜

よどら文鳥
恋愛
 伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。  二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。  だがある日。  王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。  ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。  レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。  ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。  もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。  そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。  だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。  それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……? ※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。 ※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)

公爵令嬢「婚約者には好きな人がいるのに、その人と結婚できないなんて不憫」←好きな人ってあなたのことですよ?

ツキノトモリ
恋愛
ロベルタには優しい従姉・モニカがいる。そのモニカは侯爵令息のミハエルと婚約したが、ミハエルに好きな人がいると知り、「好きな人と結婚できないなんて不憫だ」と悩む。そんな中、ロベルタはミハエルの好きな人を知ってしまう。

あなたは愛を誓えますか?

縁 遊
恋愛
婚約者と結婚する未来を疑ったことなんて今まで無かった。 だけど、結婚式当日まで私と会話しようとしない婚約者に神様の前で愛は誓えないと思ってしまったのです。 皆さんはこんな感じでも結婚されているんでしょうか? でも、実は婚約者にも愛を囁けない理由があったのです。 これはすれ違い愛の物語です。

『話さない王妃と冷たい王 ―すれ違いの宮廷愛

柴田はつみ
恋愛
王国随一の名門に生まれたリディア王妃と、若き国王アレクシス。 二人は幼なじみで、三年前の政略結婚から穏やかな日々を過ごしてきた。 だが王の帰還は途絶え、宮廷に「王が隣国の姫と夜を共にした」との噂が流れる。 信じたいのに、確信に変わる光景を見てしまった夜。 王妃の孤独が始まり、沈黙の愛がゆっくりと崩れていく――。 誤解と嫉妬の果てに、愛を取り戻せるのか。 王宮を舞台に描く、切なく美しい愛の再生物語。

【完結】ハーレム構成員とその婚約者

里音
恋愛
わたくしには見目麗しい人気者の婚約者がいます。 彼は婚約者のわたくしに素っ気ない態度です。 そんな彼が途中編入の令嬢を生徒会としてお世話することになりました。 異例の事でその彼女のお世話をしている生徒会は彼女の美貌もあいまって見るからに彼女のハーレム構成員のようだと噂されています。 わたくしの婚約者様も彼女に惹かれているのかもしれません。最近お二人で行動する事も多いのですから。 婚約者が彼女のハーレム構成員だと言われたり、彼は彼女に夢中だと噂されたり、2人っきりなのを遠くから見て嫉妬はするし傷つきはします。でもわたくしは彼が大好きなのです。彼をこんな醜い感情で煩わせたくありません。 なのでわたくしはいつものように笑顔で「お会いできて嬉しいです。」と伝えています。 周りには憐れな、ハーレム構成員の婚約者だと思われていようとも。 ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 話の一コマを切り取るような形にしたかったのですが、終わりがモヤモヤと…力不足です。 コメントは賛否両論受け付けますがメンタル弱いのでお返事はできないかもしれません。

お飾りな妻は何を思う

湖月もか
恋愛
リーリアには二歳歳上の婚約者がいる。 彼は突然父が連れてきた少年で、幼い頃から美しい人だったが歳を重ねるにつれてより美しさが際立つ顔つきに。 次第に婚約者へ惹かれていくリーリア。しかし彼にとっては世間体のための結婚だった。 そんなお飾り妻リーリアとその夫の話。

処理中です...