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甘やかされる
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お父様達に領地に連れて帰ってきてもらった。
ベッドに丸くなって毛布を被っている。
「エステル? 起きないのか?」
セヴィアン兄様がベッドに腰をかけて、毛布の上から私を撫でていた。
モソモソと動き、お兄様の膝の上に頭を置いた。
「可愛いお顔が見えないなぁ」
「(可愛くないです)」
「おかしい言葉が聞こえてきたなぁ」
「(グスン)」
兄様は私のワキに手を差し込むと毛布ごと自分の膝の上に乗せて抱きしめた。
頭を撫でて背中をゆっくり優しくトントンする。
「セヴィアン様、お食事をお持ちしました」
「こっちに持ってきて」
「かしこまりました」
ちょっとだけ毛布を捲られて口元が出た。
「小鳥ちゃん。お口を開けて」
パクっ
「うちの可愛い小鳥ちゃんはお利口さんだね」
そんなことを繰り返して完食させられた。
「よ~し。小鳥ちゃんのお散歩に連れて行こう」
毛布に包まった私を抱っこしたまま立ち上がり、外に出た。
「小鳥ちゃん。お花が綺麗に咲いてるよ。
匂いを嗅いであげようね。お花が咲いている期間は短いからね」
毛布から鼻を出した。
クンクン
「小鳥ちゃんが嗅いでくれてお花は嬉しそうだね」
ギュッ
「小鳥ちゃん。池に鴨の他にカワセミも遊びに来ているよ」
今度は池に連れて来られた。
毛布から目を出した。
「綺麗」
耳を出し囀り声も聞こえた。
「小鳥ちゃんにキスがしたいな」
頭も毛布から出した。
お兄様は頭にキスをした。
「私の可愛い小鳥ちゃん」
「お兄様、大好き」
「次はどこに行こうか」
「ミルク」
「ミルクの所に行こうね」
飼育小屋に行くとミルクが寄ってきた。
ミルクとはキツネだけど、突然変異か真っ白だった。
この辺りのキツネで白はいない。
目立つし襲われやすい。
仲間外れにされたのか、1匹で敷地内を歩いているところをエステルとセヴィアンが餌付けをして慣らした。
飼育小屋と言っても出入り自由。
最初は何度も消えたが、暫くすると痩せて汚くなって戻って来た。
何度か繰り返すうちに住み着くようになった。
経験をして、1匹では生きていけないと学んだのだろう。
「ミルクが抱っこして欲しいって」
お兄様が私を傾けた。
私は手を伸ばしてミルクを掴み抱っこした。
上半身は毛布から出ていた。
「ミルクも嬉しそうだね」
「はい」
「そういえばマロンが寂しがってたよ」
ミルクを降ろして厩舎へ向かった。
「ヒヒ~ン」
薄茶色の馬が近寄って来た。
「鞍を付けてくれ」
「かしこまりました」
鞍が装着されるとお兄様は私を乗せた。
毛布を使用人に渡し 自分の上着を脱いで私に羽織らせて 自分も跨った。
「マロンを散歩してあげようね」
「マロン、久しぶり」
「ぶるっ」
その姿を見守っていた伯爵夫妻は喜んだ。
「流石セヴィアンだな」
「毛布から全身出させたわね」
セヴィアンとヴァネッサは年が近く、ヴァネッサは気が強くて我儘だった。
対してエステルは歳が離れていて甘えん坊で素直で優しい子だった。
セヴィアンはエステルを溺愛していた。
ヴァネッサの王命には何も反応しなかったが、エステルが代わりに指名されたときに ずっと怒っていたのはセヴィアンだ。
婚姻後も頻繁にクリスに報告の手紙を出させていた。
いっそリオナードを殺せばと思うこともあった。
「セヴィアンみたいな人が居たらエステルをお嫁にやりたいと思っていたのに」
そのまま夫妻は兄妹を見守った。
ベッドに丸くなって毛布を被っている。
「エステル? 起きないのか?」
セヴィアン兄様がベッドに腰をかけて、毛布の上から私を撫でていた。
モソモソと動き、お兄様の膝の上に頭を置いた。
「可愛いお顔が見えないなぁ」
「(可愛くないです)」
「おかしい言葉が聞こえてきたなぁ」
「(グスン)」
兄様は私のワキに手を差し込むと毛布ごと自分の膝の上に乗せて抱きしめた。
頭を撫でて背中をゆっくり優しくトントンする。
「セヴィアン様、お食事をお持ちしました」
「こっちに持ってきて」
「かしこまりました」
ちょっとだけ毛布を捲られて口元が出た。
「小鳥ちゃん。お口を開けて」
パクっ
「うちの可愛い小鳥ちゃんはお利口さんだね」
そんなことを繰り返して完食させられた。
「よ~し。小鳥ちゃんのお散歩に連れて行こう」
毛布に包まった私を抱っこしたまま立ち上がり、外に出た。
「小鳥ちゃん。お花が綺麗に咲いてるよ。
匂いを嗅いであげようね。お花が咲いている期間は短いからね」
毛布から鼻を出した。
クンクン
「小鳥ちゃんが嗅いでくれてお花は嬉しそうだね」
ギュッ
「小鳥ちゃん。池に鴨の他にカワセミも遊びに来ているよ」
今度は池に連れて来られた。
毛布から目を出した。
「綺麗」
耳を出し囀り声も聞こえた。
「小鳥ちゃんにキスがしたいな」
頭も毛布から出した。
お兄様は頭にキスをした。
「私の可愛い小鳥ちゃん」
「お兄様、大好き」
「次はどこに行こうか」
「ミルク」
「ミルクの所に行こうね」
飼育小屋に行くとミルクが寄ってきた。
ミルクとはキツネだけど、突然変異か真っ白だった。
この辺りのキツネで白はいない。
目立つし襲われやすい。
仲間外れにされたのか、1匹で敷地内を歩いているところをエステルとセヴィアンが餌付けをして慣らした。
飼育小屋と言っても出入り自由。
最初は何度も消えたが、暫くすると痩せて汚くなって戻って来た。
何度か繰り返すうちに住み着くようになった。
経験をして、1匹では生きていけないと学んだのだろう。
「ミルクが抱っこして欲しいって」
お兄様が私を傾けた。
私は手を伸ばしてミルクを掴み抱っこした。
上半身は毛布から出ていた。
「ミルクも嬉しそうだね」
「はい」
「そういえばマロンが寂しがってたよ」
ミルクを降ろして厩舎へ向かった。
「ヒヒ~ン」
薄茶色の馬が近寄って来た。
「鞍を付けてくれ」
「かしこまりました」
鞍が装着されるとお兄様は私を乗せた。
毛布を使用人に渡し 自分の上着を脱いで私に羽織らせて 自分も跨った。
「マロンを散歩してあげようね」
「マロン、久しぶり」
「ぶるっ」
その姿を見守っていた伯爵夫妻は喜んだ。
「流石セヴィアンだな」
「毛布から全身出させたわね」
セヴィアンとヴァネッサは年が近く、ヴァネッサは気が強くて我儘だった。
対してエステルは歳が離れていて甘えん坊で素直で優しい子だった。
セヴィアンはエステルを溺愛していた。
ヴァネッサの王命には何も反応しなかったが、エステルが代わりに指名されたときに ずっと怒っていたのはセヴィアンだ。
婚姻後も頻繁にクリスに報告の手紙を出させていた。
いっそリオナードを殺せばと思うこともあった。
「セヴィアンみたいな人が居たらエステルをお嫁にやりたいと思っていたのに」
そのまま夫妻は兄妹を見守った。
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