18 / 24
最後の攻略対象
しおりを挟む
昨日から気配がする。
どこからか視線を感じる。
感じ取れるけど、どこからかは分からない。
成功しないかも知れないけど夜に勝負をかけよう。
普通に過ごし、就寝の為に灯りを消した。
よし、気配がある!
「いるんでしょう」
「……」
「私はこのまま動かないから出てきて」
「……」
「今は行動観察の依頼なのよね」
「……」
「ヤニス」
「 !! 」
「ヤニス、よく聞いて。
貴方の所属する組織が貴方の弟を養っていると思っているのよね?」
「……」
「明日、弟がいると言われている共同施設に前触れ無しで花を持って行ってみるといいわ。聞いて知っていますという態度で行けば騙せると思うから。
“ジェシーの墓に花を添えに来た、墓は何処か”と」
「 !! 」
「ジェシーは入居して1ヶ月もしないうちに死んだわ。誤飲による窒息死だったはず。
貴方を無償で働かせたくて騙しているのよ」
「…証拠は」
「かわいそうに思った女の子が埋葬の時にジェシーの持っていた人形を一緒にしたから、掘り起こせば小さなままの遺骨と人形があるはずよ。
だけど、掘り起こさない方がいいわ」
「……」
「この先、私の学校で卒業パーティがあるの。その帰り道に事故に見せかけて私を殺せと命じられるはずよ。
依頼主はロバート・レイノルズ。
公爵家の嫡男だから組織は引き受けた。だから貴方が監視をしている。
素行に問題が見つかれば追加の手当がもらえるからね。
でも、不貞をして裏切ったのはロバートで公爵家は無事では済まない。
支払いしてもらえるかしら。
金蔓を殺そうとするなんて、依頼する方も受ける方も愚かよね。
事が起きれば王家が動くわよ。第一容疑者はロバートよ。あいつはすぐ口を割るわ。
組織は泥舟に乗ったのよ。貴方を騙し巻き込んで」
「嘘なら戻って殺す」
「花束にするのよ!」
去っていったけど、不安だ。
ヤニスの物語が変わっていませんように!
よく眠れぬ日々を過ごすこと10日。
就寝時に窓がノックされた。
窓の鍵を外し開けると青年がいた。
乙女ゲームでは黒塗りの人型で出てきていたから顔までは知らなかった。
「ニーナ」
「ヤニス?
入って」
椅子に座らせ、私はベッドに腰をかけた。
「行ってきたのね」
「…何故知っていた」
「途中の未来まで、私に関わることを知っているの。予知夢だとでも思ってくれていいわ。本当は複雑だから説明はやめておくわね」
「バカ正直だな」
「貴方に信用されなくなるでしょう?」
「…あの蹴り技もそのせいか」
「そうよ」
「お前の暗殺命令は上層部で止まっていて、俺まできていない。実行日の間際に言うつもりなのか、依頼主の合図を待っているのかも分からない」
「ヤニスはどうしたいの?
……お兄ちゃんに任せてみる?」
「王太子か」
「彼も予知夢を見ているのよ」
「……」
「明日、学校が終わったら馬車で王宮に行くから一緒に行きましょう。
従者と言って忍び込みましょう!」
「何が目的だ」
「だって許せないでしょう?家族を養っている振りをしてタダ働きさせるなんて!
壊滅して、ジェシーのお墓を移してあげないと」
「何故そこまでするんだ。お前には関係ないだろう」
「言ったでしょう!私に関わることを知っていると。つまり、ヤニスは私の未来の一部なの!」
「……服はそれらしいものを着ていく」
「明日学校で待っているからね。着替えと運動着も持ってきてね!」
「え?」
「折角ヤニスがいるんだから、鍛錬が楽しくなるわ!」
「……あんな蹴りは出来ない」
「ふふっ」
翌日学校が終わると、馬車乗り場のベンチにヤニスが座っていた。
紺色の髪にブルーの瞳。なかなかの美男子だ。
「お待たせ」
「お嬢様。お鞄をこちらへ」
「ちょっと怖い!」
「何で夜中が良くてこれが怖いんだよ」
「そうそう、それが安心だわ」
「……」
馬車を走らせて城門をくぐる。
「いいのかニーナ」
「今更」
「姿を消すこともできる」
「私は選択した。後は貴方が選択するだけ。貴方は自由よ、ヤニス」
「ヤニスは組織での名前だ。俺はジスラン」
「ジスラン」
「はぁ~」
「緊張してるのね」
手を繋いであげよう。
「なっ!」
「大丈夫。一緒にいるわ」
「暗殺命令があるのに呑気なもんだ」
「私だって不安なのよ」
ギュッ
「やっぱり優しいのね」
「放せ!」
「お兄ちゃんが心配するだろうなぁ~私が涙浮かべていたら」
「お前!」
「さぁ、着いたわよ!」
「……ニナ、その男は誰だ」
「待ち人よ」
「手を放せ」
「…ニーナ。どっちにしろ俺は怒られるのか?」
「ふふっ」
「ニナ!」
「3人だけで話したい」
応接間で人払いがされ、彼がヤニスで、弟のことなどを話してあると説明した。
「確かに待ち人だな」
「……」
「ロバートは賢くないから作戦は決行されるだろう。ヤニスが引き受けてくれ。狙っている振りをしてニナの側にいろ」
「信用なさるのですか」
「ニナがそうしたいと望んでるし、他の暗殺者を寄越される方が面倒だ。
そっちの決行は卒業パーティの日を指定されるだろう。その日に組織を壊滅させる。
情報を寄越せ」
「はぁ~。王都の地図と、王都から500キロ内の地図をください」
ジスラン(ヤニス)は本部、支部、隠れ家、幹部の自宅、共同施設、訓練施設などを教えてくれた。
どこからか視線を感じる。
感じ取れるけど、どこからかは分からない。
成功しないかも知れないけど夜に勝負をかけよう。
普通に過ごし、就寝の為に灯りを消した。
よし、気配がある!
「いるんでしょう」
「……」
「私はこのまま動かないから出てきて」
「……」
「今は行動観察の依頼なのよね」
「……」
「ヤニス」
「 !! 」
「ヤニス、よく聞いて。
貴方の所属する組織が貴方の弟を養っていると思っているのよね?」
「……」
「明日、弟がいると言われている共同施設に前触れ無しで花を持って行ってみるといいわ。聞いて知っていますという態度で行けば騙せると思うから。
“ジェシーの墓に花を添えに来た、墓は何処か”と」
「 !! 」
「ジェシーは入居して1ヶ月もしないうちに死んだわ。誤飲による窒息死だったはず。
貴方を無償で働かせたくて騙しているのよ」
「…証拠は」
「かわいそうに思った女の子が埋葬の時にジェシーの持っていた人形を一緒にしたから、掘り起こせば小さなままの遺骨と人形があるはずよ。
だけど、掘り起こさない方がいいわ」
「……」
「この先、私の学校で卒業パーティがあるの。その帰り道に事故に見せかけて私を殺せと命じられるはずよ。
依頼主はロバート・レイノルズ。
公爵家の嫡男だから組織は引き受けた。だから貴方が監視をしている。
素行に問題が見つかれば追加の手当がもらえるからね。
でも、不貞をして裏切ったのはロバートで公爵家は無事では済まない。
支払いしてもらえるかしら。
金蔓を殺そうとするなんて、依頼する方も受ける方も愚かよね。
事が起きれば王家が動くわよ。第一容疑者はロバートよ。あいつはすぐ口を割るわ。
組織は泥舟に乗ったのよ。貴方を騙し巻き込んで」
「嘘なら戻って殺す」
「花束にするのよ!」
去っていったけど、不安だ。
ヤニスの物語が変わっていませんように!
よく眠れぬ日々を過ごすこと10日。
就寝時に窓がノックされた。
窓の鍵を外し開けると青年がいた。
乙女ゲームでは黒塗りの人型で出てきていたから顔までは知らなかった。
「ニーナ」
「ヤニス?
入って」
椅子に座らせ、私はベッドに腰をかけた。
「行ってきたのね」
「…何故知っていた」
「途中の未来まで、私に関わることを知っているの。予知夢だとでも思ってくれていいわ。本当は複雑だから説明はやめておくわね」
「バカ正直だな」
「貴方に信用されなくなるでしょう?」
「…あの蹴り技もそのせいか」
「そうよ」
「お前の暗殺命令は上層部で止まっていて、俺まできていない。実行日の間際に言うつもりなのか、依頼主の合図を待っているのかも分からない」
「ヤニスはどうしたいの?
……お兄ちゃんに任せてみる?」
「王太子か」
「彼も予知夢を見ているのよ」
「……」
「明日、学校が終わったら馬車で王宮に行くから一緒に行きましょう。
従者と言って忍び込みましょう!」
「何が目的だ」
「だって許せないでしょう?家族を養っている振りをしてタダ働きさせるなんて!
壊滅して、ジェシーのお墓を移してあげないと」
「何故そこまでするんだ。お前には関係ないだろう」
「言ったでしょう!私に関わることを知っていると。つまり、ヤニスは私の未来の一部なの!」
「……服はそれらしいものを着ていく」
「明日学校で待っているからね。着替えと運動着も持ってきてね!」
「え?」
「折角ヤニスがいるんだから、鍛錬が楽しくなるわ!」
「……あんな蹴りは出来ない」
「ふふっ」
翌日学校が終わると、馬車乗り場のベンチにヤニスが座っていた。
紺色の髪にブルーの瞳。なかなかの美男子だ。
「お待たせ」
「お嬢様。お鞄をこちらへ」
「ちょっと怖い!」
「何で夜中が良くてこれが怖いんだよ」
「そうそう、それが安心だわ」
「……」
馬車を走らせて城門をくぐる。
「いいのかニーナ」
「今更」
「姿を消すこともできる」
「私は選択した。後は貴方が選択するだけ。貴方は自由よ、ヤニス」
「ヤニスは組織での名前だ。俺はジスラン」
「ジスラン」
「はぁ~」
「緊張してるのね」
手を繋いであげよう。
「なっ!」
「大丈夫。一緒にいるわ」
「暗殺命令があるのに呑気なもんだ」
「私だって不安なのよ」
ギュッ
「やっぱり優しいのね」
「放せ!」
「お兄ちゃんが心配するだろうなぁ~私が涙浮かべていたら」
「お前!」
「さぁ、着いたわよ!」
「……ニナ、その男は誰だ」
「待ち人よ」
「手を放せ」
「…ニーナ。どっちにしろ俺は怒られるのか?」
「ふふっ」
「ニナ!」
「3人だけで話したい」
応接間で人払いがされ、彼がヤニスで、弟のことなどを話してあると説明した。
「確かに待ち人だな」
「……」
「ロバートは賢くないから作戦は決行されるだろう。ヤニスが引き受けてくれ。狙っている振りをしてニナの側にいろ」
「信用なさるのですか」
「ニナがそうしたいと望んでるし、他の暗殺者を寄越される方が面倒だ。
そっちの決行は卒業パーティの日を指定されるだろう。その日に組織を壊滅させる。
情報を寄越せ」
「はぁ~。王都の地図と、王都から500キロ内の地図をください」
ジスラン(ヤニス)は本部、支部、隠れ家、幹部の自宅、共同施設、訓練施設などを教えてくれた。
624
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約破棄されたユニコーンの乙女は、神殿に向かいます。
秋月一花
恋愛
「イザベラ。君との婚約破棄を、ここに宣言する!」
「かしこまりました。わたくしは神殿へ向かいます」
「……え?」
あっさりと婚約破棄を認めたわたくしに、ディラン殿下は目を瞬かせた。
「ほ、本当に良いのか? 王妃になりたくないのか?」
「……何か誤解なさっているようですが……。ディラン殿下が王太子なのは、わたくしがユニコーンの乙女だからですわ」
そう言い残して、その場から去った。呆然とした表情を浮かべていたディラン殿下を見て、本当に気付いてなかったのかと呆れたけれど――……。おめでとうございます、ディラン殿下。あなたは明日から王太子ではありません。
「婚約破棄だ」と笑った元婚約者、今さら跪いても遅いですわ
ゆっこ
恋愛
その日、私は王宮の大広間で、堂々たる声で婚約破棄を宣言された。
「リディア=フォルステイル。お前との婚約は――今日をもって破棄する!」
声の主は、よりにもよって私の婚約者であるはずの王太子・エルネスト。
いつもは威厳ある声音の彼が、今日に限って妙に勝ち誇った笑みを浮かべている。
けれど――。
(……ふふ。そう来ましたのね)
私は笑みすら浮かべず、王太子をただ静かに見つめ返した。
大広間の視線が一斉に私へと向けられる。
王族、貴族、外交客……さまざまな人々が、まるで処刑でも始まるかのように期待の眼差しを向けている。
『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!
志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」
皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。
そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?
『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!
【完結】よりを戻したいですって? ごめんなさい、そんなつもりはありません
ノエル
恋愛
ある日、サイラス宛に同級生より手紙が届く。中には、婚約破棄の原因となった事件の驚くべき真相が書かれていた。
かつて侯爵令嬢アナスタシアは、誠実に婚約者サイラスを愛していた。だが、サイラスは男爵令嬢ユリアに心を移していた、
卒業パーティーの夜、ユリアに無実の罪を着せられてしまったアナスタシア。怒ったサイラスに婚約破棄されてしまう。
ユリアの主張を疑いもせず受け入れ、アナスタシアを糾弾したサイラス。
後で真実を知ったからと言って、今さら現れて「結婚しよう」と言われても、答えは一つ。
「 ごめんなさい、そんなつもりはありません」
アナスタシアは失った名誉も、未来も、自分の手で取り戻す。一方サイラスは……。
【完結】真実の愛に気付いたと言われてしまったのですが
入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済みです!!!】
かつて王国の誇りとされた名家の令嬢レティシア。王太子の婚約者として誰もが認める存在だった彼女は、ある日、突然の“婚約破棄”を言い渡される。
――理由は、「真実の愛に気づいてしまった」。
その一言と共に、王家との長年の絆は踏みにじられ、彼女の名誉は地に落ちる。だが、沈黙の奥底に宿っていたのは、誇り高き家の決意と、彼女自身の冷ややかな覚悟だった。
動揺する貴族たち、混乱する政権。やがて、ノーグレイブ家は“ある宣言”をもって王政と決別し、秩序と理念を掲げて、新たな自治の道を歩み出す。
一方、王宮では裏切りの余波が波紋を広げ、王太子は“責任”という言葉の意味と向き合わざるを得なくなる。崩れゆく信頼と、見限られる権威。
そして、動き出したノーグレイブ家の中心には、再び立ち上がったレティシアの姿があった。
※日常パートとシリアスパートを交互に挟む予定です。
【 完結 】「婚約破棄」されましたので、恥ずかしいから帰っても良いですか?
しずもり
恋愛
ミレーヌはガルド国のシルフィード公爵令嬢で、この国の第一王子アルフリートの婚約者だ。いや、もう元婚約者なのかも知れない。
王立学園の卒業パーティーが始まる寸前で『婚約破棄』を宣言されてしまったからだ。アルフリートの隣にはピンクの髪の美少女を寄り添わせて、宣言されたその言葉にミレーヌが悲しむ事は無かった。それよりも彼女の心を占めていた感情はー。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい!!
ミレーヌは恥ずかしかった。今すぐにでも気を失いたかった。
この国で、学園で、知っていなければならない、知っている筈のアレを、第一王子たちはいつ気付くのか。
孤軍奮闘のミレーヌと愉快な王子とお馬鹿さんたちのちょっと変わった断罪劇です。
なんちゃって異世界のお話です。
時代考証など皆無の緩い設定で、殆どを現代風の口調、言葉で書いています。
HOT2位 &人気ランキング 3位になりました。(2/24)
数ある作品の中で興味を持って下さりありがとうございました。
*国の名前をオレーヌからガルドに変更しました。
婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです
秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。
そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。
いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが──
他サイト様でも掲載しております。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる