【完結】仮面の令嬢と秘密の逢瀬

ユユ

文字の大きさ
10 / 36

三度の衝撃

しおりを挟む
夜、湯浴みをしてから秘匿夜会に出席した。

黒いハーフマスクを着けて入場して果実酒を手に取った。今夜は杏の果実酒のようだ。

壁際の椅子に座れば声を掛けないルールだ。座って待っていると彼女が現れた。
元処女という呼び名ではなく仮の名を付けないといけないな。
慌てているのか入口側の壁にいる俺が見えていないらしい。少し肩が揺れている。走った?

「ゴホン」

咳払いをすると振り向いた。黒いアイマスクのあの子だ。笑顔になったのが分かる。だけど…

俺は立ち上がり止まれと合図を送った。彼女が駆け寄るのを阻止してゆっくり歩いて目の前に立った。

「今夜のお相手をお願いしてもいいですか」

「喜んでお願いします」

彼女と一緒に会場を出て階段を登り部屋に入った。

触れると肌が冷たい。

ここに来る前に湯浴みをする決まりがある。きっと彼女には時間が無くて、湯浴みをしてから直ぐに来たのだろう。髪が生乾きだ。これでは風邪を引いてしまう。

部屋の案内をしたメイドにお茶を注文した。

ドレスを脱がせガウンを着せると暖炉の前に毛布を敷いて彼女を座らせた。髪をほどき、髪に空気を入れながら乾かし始めた。

「女性は髪が長いから乾くのに時間がかかるからな」

「……はい」

「お茶をご用意しました」

「ここに置いてくれないか」

「トレイに乗せたまま置かせていただきます」

「ありがとう」

「それではごゆっくりどうぞ」

メイドが退室したので注意事項を伝えた。

「此処は一夜限りの出会いを提供しているから、待ち合わせの雰囲気を出してはいけないよ」

「あ、すみません」

「もし次を約束したとしても、初めて誘うようなフリをしてくれ」

「はい」

「君のことは何で呼べばいい?」

「え?」

「流石に三回目だからね。本名じゃなくていい。呼ばれたい名を言ってくれたらいい」

「ノアと呼んでください」

「俺はリックだ。俺達は歳が近そうだ。部屋の中では敬語は使わない」

「分かったわ」

「その仮面…ハーフマスクじゃないんだな」

「……リックにキスをしてもらえるかなって」

髪を乾かしているから彼女は背を向けているのに後頭部で恥ずかしがっているのが分かるだなんて。

「だが積極的と見られて他の男を寄せてしまう。赤いマスクの男達の中には 赤いマスクの女の他に黒いアイマスクの女も誘う者もいるんだ」

「私に声を掛けてきた赤いマスクの男も?」

「多分屈服させるのが好きなんだろう。だから赤いマスクよりキスもできる黒いアイマスクの女性に声を掛け、ベッドで、」

「聞きたくない」

「……」

「気持ち悪いわ」

「そんなんで よくこんな出会いを選んだね」

「正体を知られないから」

「公に恋人を作れないのか…家が厳しいのかな?」

「…はい」

「お茶を飲んで」

30分ほどで髪はしっかりと乾いた。

「ありがとうございます」

「ノア。俺はキスの経験がない。だから君が望むようなキスはできない」

「それって、リックの初めてを私に捧げてもらえるということ?」

「良く言えばそうだな」

「リック…貴方の初めてが欲しい」

彼女の頬に手を添えて唇を重ねた。
ゆっくり唇を離すと彼女の瞳は煌めいていた。

これではまるで恋人だと思った。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。 しかし、仲が良かったのも今は昔。 レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。 いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。 それでも、フィーは信じていた。 レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。 しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。 そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。 国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

病弱な幼馴染を守る彼との婚約を解消、十年の恋を捨てて結婚します

佐藤 美奈
恋愛
セフィーナ・グラディウスという貴族の娘が、婚約者であるアルディン・オルステリア伯爵令息との関係に苦悩し、彼の優しさが他の女性に向けられることに心を痛める。 セフィーナは、アルディンが幼馴染のリーシャ・ランスロット男爵令嬢に特別な優しさを注ぐ姿を見て、自らの立場に苦しみながらも、理想的な婚約者を演じ続ける日々を送っていた。 婚約して十年間、心の中で自分を演じ続けてきたが、それももう耐えられなくなっていた。

あなたに嘘を一つ、つきました

小蝶
恋愛
 ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…  最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

初恋にケリをつけたい

志熊みゅう
恋愛
「初恋にケリをつけたかっただけなんだ」  そう言って、夫・クライブは、初恋だという未亡人と不倫した。そして彼女はクライブの子を身ごもったという。私グレースとクライブの結婚は確かに政略結婚だった。そこに燃えるような恋や愛はなくとも、20年の信頼と情はあると信じていた。だがそれは一瞬で崩れ去った。 「分かりました。私たち離婚しましょう、クライブ」  初恋とケリをつけたい男女の話。 ☆小説家になろうの日間異世界(恋愛)ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18) ☆小説家になろうの日間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/18) ☆小説家になろうの週間総合ランキング (すべて)で1位獲得しました。(2025/9/22)

処理中です...