【完結】仮面の令嬢と秘密の逢瀬

ユユ

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エレノアの兄

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馬車の中ではエレノアが申し訳なさそうにしていた。

「ギリアス・シュノーだ。エレノアが世話になっているそうだが」

「初めまして、スタンサー侯爵家次男のフレデリックと申します。
エレノアとは仲良くさせていただいております」

「“エレノア”?」

「……」

「うちのエレノアを呼び捨てか?」

「お兄様!」

「公子の納得なさる呼び方を教えていただけましたらそのように呼ばせていただきます」

「それくらい分かるだろう」

「分かりません」

俺から言えば後一回は難癖を付けるだろう。

「公女様とか、シュノー嬢とか」

「どちらでも構いません。指定してください」

「ふん。ならば公女と呼べ」

「お兄様っ!」

「承知しました。敬語も必要ですか?」

「当然だろう」

「公女。学友の仲間達で敬語は無しでファーストネームを敬称など無しで呼び合うことを決めましたが、公女だけはそれが出来なくなりました。今後、公女だけ余所余所しくなりますが仲間外れにした訳ではありません。公子のご命令です。ご了承ください」

「フレデリック」

「となれば、公女もスタンサーとお呼びください」

「お兄様、私とフレデリックの間のことに口出しなさらないでください」

「エレノア!?」

「失礼なことを言わないでください!」

「普通だろう」

「普通じゃないです!
ごめんなさい、フレデリック」

「構いません。最終判断は公爵がなさるでしょうが従います」

「それはどういう意味だ?」

「公女のことについて決めるのは公爵だと、のことを申したまでです。間違いがあるようでした仰ってください」

「生意気だな」

俺はニッコリ微笑んだ。
エレノアが不安そうだな。だが俺が指摘していたことはこういうことなんだよ。公爵もこんな感じなら卒業パーティの件は取り消そうと思っていた。

だが、

「フレデリック君、久しぶりだね。よく来てくれた。さあ、入りなさい、疲れただろう?」

「3年ぶりでしょうか。お元気そうで何よりでございます。今夜はご招待いただきありがとうございます」

「もっと早く誘うべきだったな」

公爵は大歓迎をしてくれた。エレノアは嬉しそうに驚いているし、公子にいたっては青天の霹靂といった感じなのだろう、口まで開いていた。

まだ時間が早いので通されたのは居間だった。
応接間じゃなくて?

「さあ、座って楽にしてくれ。飲み物は何がいいかな?」

「皆様と同じものでお願いします」

「遠慮しなくていいんだぞ?酒でも飲むか?」

「お酒はあまり得意ではなくて…果実酒を嗜む程度です。そうですね、では公女の好きなお茶をいただけますか」

「フレデリック君は娘を公女と呼んでいるのか?」

「先程、敬語を使って公女とお呼びするようにと公子よりご指導を賜りました」

「ギリアス、おまえは何をしに行ったんだ」

「父上っ」

「すまなかったね。失礼した。どうか今まで通りでいてくれないか」

「敬語を使わずに“エレノア”と呼んでもよろしいのですか?」

「ぜひ そうしてやって欲しい」

「分かりました。
こちらは公爵に手土産をお持ちしました」

「私に?」

「はい」

袋の中の箱を取り出し蓋を開けた。

「これは…」

「これのどこが手土産になるんだ?」

公子は馬鹿にしたような口調で中身を覗き込んだ。

「黙れギリアス。これは私でも入手出来なかった物だ…」

「え?」

「確かに公爵が使うにはちょっとシンプルかもしれませんが、これは30年ほど前に製造されたペンです。このシリーズは10年間 毎年宝石の色を変えて12本ずつ製造されました。
このペンの年は夕焼け色の宝石を使いました。
ここから国をいくつも越えた先の国の離島で採れる希少石で、この宝石は今ではもう採掘できません。元々の採掘量が少なかったのです。

公爵、もちろん未使用です。お気に召してくださいましたか」

「いや…これは…受け取ってはいけない物だ」

まるで欲しかった玩具をやっと買ってもらった子供のような顔をしているのに?

「たまたま購入できた物です。父がこういう時のために集めているだけですから」

「侯爵が許可を?」

「敢えて許可を取る必要はありません」

「感謝する。こんなに素晴らしい物を手にできるなんて、心臓が止まるかと思ったよ」

「今回はたまたまです。
3年前にアルメット王子殿下の側近候補や婚約者候補の顔合わせの時に エレノアが公爵の話をしていたのです。ペンに拘っていると」

「席、近くなかったのに」

「エレノアの声は聞こえたよ」

「っ!」

エレノアは頬を染め、公子は悔しそうだった。

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