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公爵の溜息
しおりを挟む【 シュノー公爵の視点 】
エレノアが嬉しそうに、卒業パーティのエスコートを申し込まれたと喜んでいた。だが妻は微妙な顔をしていた。
『エレノアを弄んだ令息なのに何故あなたは許可なさったのですか』
『間違えてはいけない。元々エレノアはフレデリック君に関係なく、見知らぬ男と関係を持ちに出かけたんだ。自らの意思と自らの足で。成人し閨教育も済んだ一人前の女性がだぞ?
フレデリック君はたまたま夜会にいただけでエレノアをどうこうしようと思ったわけではない。寧ろエレノアの誘いを断った。だがエレノアが頼み込んだんだ。途中何度も止めるか聞いた男だぞ?
その後もエレノアはフレデリック君に付き纏い断られても執着した。
もし責めなければいけないのならそれはエレノアだ。被害者はフレデリック君だろう』
『あの子は娘なのですよ?』
『女だからと何でも同情され被害者になるなどと思っているなら改めろ。
おまえはギリアスが関係を持った令嬢の家全てにギリアスを伴い出向いて謝罪をしたというのか?』
『それは…』
『考えを改められないというのなら今からでもギリアスを連れて謝罪巡りをして来い。個人資産から慰謝料を払ってくるといい』
『あなた…』
『フレデリック君を夕食に招待する。
その時に感じ良く接することができなければ本当に謝罪巡りに行かせるからな』
『…はい』
娘可愛さなのは分かる。私もつい娘を被害者だと思ってしまいそうになる。だが娘本人の話を聞いたら、彼は非常に理性的だと分かった。
ここで彼に見切りを付けられたらスタンサー侯爵と話したことは無意味になってしまう。
使用人達にも大事な客だと予め伝えて支度をさせた。
当日、フレデリック君が屋敷に来てくれたが、勝手に迎えの馬車に乗り込んでいたギリアスが早速馬鹿なことを言って彼を不快にさせたようだ。
エレノアと彼の関係を聞いて妹が弄ばれたと判断したのだろう。
エレノアは不安そうに彼を見上げる。嫌われてしまうのではないかと不安でたまらないのだな。
手土産と渡された袋は小さくて軽かった。
袋の中を覗くとあの文具メーカーの紋章だった。
フレデリック君は私のことを調べたのか?
箱を開けるととんでもない逸品が入っていた。
ペン先をつける軸の持ち手の部分は金属で軸の中央は木製、そして軸の尾の部分にまた金属の飾りがついていて そこに希少石がついている。
彫られた柄も軸の曲線も実に見事だった。
フレデリック君が帰った後、ずっと彼に態度が悪かった息子ギリアスを呼び付けた。
「ギリアス、この価値が分かるか?」
「限定品のペンなのは聞きましたよ。希少石といってもこんなに小さいではありませんか」
「遠くの外国にある小さな島で発見されたこの石は最初こそ豊富にあると思われていた。
だがその大半は不純物で価値が出なかった。不安定な色合いを出し濁っているものもあった。だがこの島でしか採れない希少石だったのと、稀に採れるハイクオリティのものは恐ろしいほどの値がついた。
かなり小さくはあるがこの美しい輝きは特級品で間違いない。
このペンのシリーズの中でこの年のペンは幻の逸品と呼ばれた。このペン1つで高級な馬車を買えるほどの販売価格だった。それでも申し込みが多くて抽選になった。私は外れて手に入れられなかった。
その直後、この希少石が採れる層が深くないことが分かりあっという間に廃鉱になった。
この国でこの希少石を持っている者は十数名程度だろう。
今、このペンをオークションに出したらどのくらいの値がつくと思う?
ペンの愛好家か宝石のコレクターで大富豪なら小さな屋敷が建つほどの金を投じるだろう。……ん?」
よく見るとペンを固定している台座が外れ、底には5種類の柄のペン先が2つずつ並んでいた。
「なんと美しいんだ」
このペンのように貴重で価値のある物が他にも侯爵邸で管理されているのだろう。それをどう使うか裁量権を与えられている。跡継ぎの長男ではなく、まだ学生の次男に。
素行調査も問題無しだった。唯一、例の夜会に通っていることくらいだった。
エレノアの件は侯爵の返事を待つだけ。
私は愚かな息子を躾けなければならなかった。
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