【完結】仮面の令嬢と秘密の逢瀬

ユユ

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エレノアの兄

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【 ギリアスの視点 】

父上がフレデリックからもらったペンの入った箱をを机の上に置いた。

「誰に何を聞いたのか知らないが、エレノアとフレデリック君の間に起きたことは全てエレノアが引き起こしたことだ。
フレデリック君は巻き込まれた側だ。敵意を向けるのは間違っている。
そもそも お前達が迂闊に話した夜会の話を聞いてエレノアは会員になったのだぞ?そこには触れないのか?」

「っ!」

「普通の夜会やパーティでフレデリック君がエレノアを口説いて関係を重ねたなら怒ってもいい。
だが実際は違う。エレノアが行ったのは秘匿性のあるセックスの会なんだ。そこで自らフレデリック君に声をかけ、断られても誘った。その後も断られてもエレノアが誘い続けていたんだ。

エレノアはフレデリック君の元へ嫁ぐことを希望している。断られたら一生エレノアから恨まれるぞ」

「でも彼は次男ですよ?」

「アルメット王子が産まれた瞬間から王子に近い歳の男女は婚約を凍結された。さらに2、3人は王子の側近として選ばれる。
スタンサー家の長男モーガンが跡継ぎとして公表されたのはいつだか分かるか?フレデリック君が側近候補に指名された日の翌日だ。その意味が分かるか?」

「まさか、スタンサー侯爵家の跡継ぎは元々フレデリックが!?」

「侯爵はそう考えていたのだろう。
ギリアス。
本来の侯爵家の跡継ぎ、国王陛下から指名された側近、モーガンが跡継ぎと公表されても侯爵家の秘蔵品の裁量権をフレデリック君が握っている。
意味が分かるか?」

「……」

「フレデリック君がエレノアを好きなのは間違いないが、我々シュノー家の反対を無視してまでエレノアを娶る気はない。おまえが態度を改めなければ二人の関係は完全に終わる。
国王陛下はちゃんと見定めてから側近候補に指名したんだ。つまり未来の国王の側近だぞ?情を切り捨てた判断ができると思った方がいい。

シュノー公爵家の跡継ぎとして賢い行動をしてくれないと困る。歳上で格上のおまえが筋違いな不満の感情を向けている間中、まだ学生のフレデリック君は我々を観察していたんだ。おまえの無礼を無かったことにしているわけではない。エレノアのため、歓迎している私と妻のために保留にしただけだ。

フレデリック君はボルスト公爵から公認をもらったらしい。ジェイク殿の友人で公認を貰えたのはただ一人。繋がりのことも考えろ」


疲れた…。こんなに叱られたのはいつぶりだろう。

使用人が父上達の話を耳にして、エレノアが弄ばれたと聞いたのに…。

妻のフローラも。

「私も貴方の態度はどうかと思います。まるで子供ですよ」

「なっ!」

「客観的に今夜のご自分の姿を見ることができないから分からないかもしれませんが、冷静に振る舞ったフレデリック様の方が素敵でしたわ。顔もいいですし。エレノアの気持ち、分かるわぁ。私がエレノアだとしてもフレデリック様に抱かれたいと思うもの」

「は!?」

「あの支配的な。ゾクゾクするわぁ」

「フローラ、絶対にあいつと2人きりになるなよ!目も合わせるな!」

「そんなの無理よ。これからはシュノー家の行事にお呼びするでしょうから、ダンスを踊ってもらえるわね」

「フローラ!!」


翌日、

「ああ、フレデリックか。何が聞きたいんだ?」

「ジェイク殿の友人としてボルスト公爵の公認を得たと聞いたんだ」

ボルスト公爵家の長男サミュエルに話を聞きに、王宮騎士団の執務室まで面会に来た。

「確かに父上はそう言っていたな。“フレデリックが困っていたら助けるように”と」

「本当だったのか…」

「友人の公認を取れたのは、私の親友のコンロット伯爵家の長男とジェイクの親友のフレデリックだけだな」

「三兄弟中で公爵公認の友人がたった二人!?」

「そうだ。私はギリアスも公認されると思っていたけど、父の見方は違った。どういう基準なのか分からないよ。
ただ、フレデリックと一緒に側近候補になってから弟は笑うようになったし肩の力も抜けた感じだ。父も母も祖父母も喜んでいるよ」

「……」

「気に入らないのか?」

「……」

「だとしたら、ぶつかるな。避けて視界から外すようにしろ」

「え?」

「フレデリックは団長達がスカウトしたかった子だ。リストにして提出したら陛下が却下なさった。彼を側近から外すことはできないってさ」

「あいつが剣術を?」

「団長達が特別講師として学園に出向いているだろう?私達の時も2年生の終わりに来ていたじゃないか。その時に戦士の卵を探しているんだよ」

「知らなかった。つまりサミュエルはリストに載ったのか?」

「載ったけどボルスト公爵家の跡継ぎだから内勤じゃないと駄目だと父上が断ったんだ。だから団長達の補佐をしながら育成に力を入れているよ。

フレデリックは基礎を侯爵家で教わっただけだった。授業は当たり障りなくやっているという感じだ。相手の動きが読めているから、防御をして隙ができたら急所に寸止めをするんだ。
相手はクラスメイトや教師だろう?怪我をさせるのが嫌だと言っていた。
手加減して成績は上位。才能を持って生まれてきたのだろうな。

ギリアス。意味が分かるか?」

「何のことだ?」

「フレデリックが、敵だと思った相手に手加減すると思うか?
フレデリック達が2年生の時に団長達と一緒に行って、実際に剣を交えたのは私だ。一本取られて団長と交代した。さすがに団長には敵わなかったが、私の首には寸止めをしてきたよ」

「……」

「つまり敵に回すなということだ。酔って手袋なんか投げ付けるなよ。死ぬぞ?
もしフレデリックのことが気に入らないなら気付かれないように避けろ。出来るだけ関わらなければいい」

「分かった。ありがとう、サミュエル」


1週間ほど経った後、エレノアが私の部屋に来ると、跪いた。

「エレノア?」

「お兄様、お願いします。フレデリックのことを認めてください」

「何か言われたのか」

「彼に妻になりたいと気持ちを伝えたら、シュノー家の許しが必要だと」

「父上や母上は反対していなさそうだぞ」

「フレデリックはお兄様の気持ちも大事だと考えているの。お兄様の許しがなければ私との婚姻は無いって……お願いです、お兄様。私…」

「分かった。分かったから泣くな」

「でも、」

「安心しろ」

「ありがとうございます、お兄様」

私の気持ちが大事……あの生意気なフレデリックにそんなことを言われたら折れるしかないじゃないか。



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