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不義の子?

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【 ユリウスの視点 】

私は公爵家の三男として産まれた。

だが気が付いたときには既に二人の兄達の虐めに遭っていた。

暴力、暴言、無視が当たり前だった。
それは他の者がいない時か、言いなりになる使用人達の前でしかやらない。
父や母、側近や執事などの前ではやらない。

“不義の子”

しばらくは何のことか分からなかった。
数年が経ち、その意味を知ることとなる。


公爵夫人から産まれた三男なのだが両親の色と全く違う色合いのユリウスに公爵家は戸惑ったようだ。

怪我が絶えないユリウスのことが心配で、子供達を担当するメイド達に観察と報告を義務付けると、三つ上の兄ダリウス、二つ上の次兄セヴランは、そのメイド達に口止めをした。

“不義の子のために次期公爵を敵にまわすな”

いつまで経っても真相が分かる報告もなく、ユリウスの状況が変わらないため、公爵と執事が話し合った結果、執事の姪が新人と称してメイドの仲間入りをした。

その結果、何処から覚えたのかわからない言葉を使って暴言を浴びせ、暴力を振るっていたという報告があがり、公爵は激怒した。

使用人達には

『君達が仕えているのも契約しているのも公爵だ。報告も上げずに子供を虐げる行為を黙認するなどあってはならない』

次はクビにすると通告した。

ダリウスとセヴランには厳しく罰を言い渡した。

『剣術の禁止と付き添い無しにユリウスと会うことを禁止する。そして学園に入るまでの間は慈善活動をするように』

剣術が大好きな二人には大事だった。

『何故ですか!騎士団長の息子に剣術を習わせないなんて変です!』

『そうです!私達は由緒正しきウィルソン家の子なのですよ!』

『ダリウス、セヴラン。私が騎士で団長職に就いているからといってお前達が騎士にならなくてはならないわけではない。世襲制を用いるほど騎士は生温いものではない。

現にお前達の祖父は騎士ではない。お前達に習わせていたのはやりたいと言ったからだ』

『続けさせてください!』

『駄目だ。お前達には騎士の資格が無い』

『先生は将来有望だと、』

『公爵家の息子達にお世辞を言ったのだ。
私から見ればお前達は凡人だ。猛練習を重ねて王宮騎士団に入れるかどうかといったところだ。

そもそも、騎士は弱い者虐めは絶対にしてはならない。ユリウスの体は傷だらけだった。
騎士の資格のないお前達に講師をつけるのは金の無駄だ。

慈善活動をしなければお前達の生活に直結するような制裁を与えよう』

兄達は受け入れざるを得なかった。
表立って暴力を振るわれることは無くなったが、通りすがりの暴言や無視は続いていた。




そして12歳の時に事件は起こる。

父の従弟の娘が10歳の誕生日にお披露目をすることになった。
サンセール王国では10歳にならないと令嬢は屋敷から出してはならないとされている。

文字通りではない。買い物などにも連れて行くが、異性や他家との交流をさせないための制限なのだ。

両親と一緒にデビューを控えた15歳の長兄ダリウスと、14歳のセヴランも一緒にヴェリテ伯爵の領地へ出向いた。

隣なので三時間程度で着いた。



とても可愛い子だった。ダリウス達も頬を染めてティーティアを見つめていた。

伯爵夫妻に溺愛された少女は不思議な雰囲気を出していた。時々子供とは思えない言葉を使っていた。

事前には我儘なところがあると聞いていたがそんなことはなかった。

挨拶と食事を終えて子供達だけの空間となった時にそれは起きた。

『俺達は剣術が得意なんだ』

『不義の子が原因で禁止されたけどな』

『これから婚約者を探すんだろう?
公爵夫人になるか?』

『……不義の子って?』

ああ、またか。そう思った。

『こいつだよ。ユリウスだ』

『ご両親は何と?』

『不義の子だなんて認めないよ』

『それはそうでしょう。ユリウス様は公爵様に似ていますから』

『はぁ!?』

『寧ろお二人よりも似ておられます』

『色を見ろよ!』

『色が何ですか?形は隔世遺伝というものがあり、色は遺伝子による悪戯というものがあります』

『カクセイ?』

『イデンシ?』

『まだお二人には早い話でしたわね。だから公爵様もお二人には詳しく説明をなさらなかったのでしょう』

これ10歳か?

『もしかして馬鹿にしているのか』

『ん~、愚かだなとは思っています』

『伯爵家の分際で生意気だぞ!』

『ですよね!公爵夫人なんて務まりませんから、さっきの言葉は聞かなかったことにします。それに卑怯者を夫になんてごめんですわ』

『卑怯者!?』

『ご両親の前では大人しく尻尾を垂れ下げておいて、いないところで牙を剥くような者は卑怯者でしょう?』

『剣術の得意な私達にそれを言うのか?』

『では、勝負をしましょう。うちにある練習用のサーベルで先に心臓を突いた方の勝ち』

『勝てばティーティアは妾だ』

『ダリウス様は勝負は?』

『兄上が勝てば意味がない』

『お二人とも私を娶りたいというのですね』

『もはや妻ではないがな。その生意気な口を矯正してやる』

『ではダリウス様に負けたらお二人のお好きになさってください』

『あと8年も待たないがな』

『私からの条件は態度の改を要求します。
お二人は今後一生、私に敬語を使い、家名で呼んでください。私は呼び捨てにして敬語は使いません。

そしてユリウスに皆の前で地に額をつけて1時間謝り続けてください。そして二度と危害を加えず“不義の子”などと言わないでください』

『はいはい、何でもいいぞ』

『それと、事故か態とかに関わらず、頭・顔・首に剣が当たれば重大な反則として手首を切り落とします。
先に勝負がついた後に攻撃をしても同様に重大な反則として手首を切り落とします』

『はあ!?』

『卑怯な真似をせず心臓だけを狙い、勝負がついた後も逆上しなければ何の問題もありませんよ』

『よし分かった』

『では準備を始めます』

そう言って呼び鈴を鳴らした。


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