【完結】転生令嬢は遠慮いたしません!

ユユ

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デビュータント

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【 第一王子 セインの視点 】


ジョルジーヌ達の助言通り、まずは騎士団に行って副団長に苦労して鍛え上げた騎士をアドバイザーとして借りた。

ほぼ毎日30分指導してもらい後は自主鍛錬をした。

次に剣も今までより頑張ったし、何よりこっそりティーティア対策をした。
矢尻をつける前の弓矢の先に布を少し巻き、私の胸元に向かって射ってもらった。

ほぼ毎日。

後は何でも情報が入ったら教えてもらった。
父上、母上、宰相、侍従長、侍女長、メイド長。

そして各部署長と時折茶を飲むことにした。
それは違う面でも役立った。仕事をしていない者もいて更迭したり、聞き出した重要な困り事を解決できるよう父上に伝えた。

卒業してからは執務室に部署長が相談しに来れる環境にした。仕事の相談事の頻度は少なかったが、妻との結婚記念日はどうしようとか、子供が病気でとかプライベートな相談を親身になって聞いた。

解決できないものもあるが、経過を気にかけることも忘れないようにした。

お陰で色々な話を聞けている。
何がティアの興味を引くか分からないから、パン屋の新作から口にできない内容まで。

未だにティアが食いつく話に自信がない。
予想外な話に反応を示すことが時々あるからだ。だから情報収集も偏らないようにしている。

ミスラへの贈り物には大喜びをしていた。
あんなに目を輝かせたティアを見たの初めてだった。

いや、シゴレーヌ王女を城に迎えた時の軍師中も違う意味で輝いていたな。


ジョルジーヌ達にそれぞれお礼の手紙を書いた。

数ヶ月前、デビューのパートナーの権利を賭けてティアに勝った時は嬉しいというよりは心が痛んだ。あんな悲しそうな顔をするとは思わなかったからだ。

不意打ちのようなものだし、ルール自体私にかなり有利なものだ。一度弾くだけで勝ちだなんて。

それ以来ティアは会いに来てくれなくなってしまって参った。
伯爵が言うには家で剣の練習をしているらしい。

ジョルジーヌ達に相談に行くと怒られた。

『何やってるんですか!』

『歳下の女の子をいじめて!』

『すまない』

『ティア様の得意なことで負かすなんて駄目に決まってるじゃないですか!』

『はぁ……今まで順調だったのに。
この隙に虫が運命の人に変わっても知りませんよ!』

『私だって会えなくて参っているんだ。いじめないでくれ』

『最近ティーティア様はダンスの練習をなさっておいでです。練習相手をさせてもらいたいとお願いしに行く時に、どうやって勝ったのか正直に話すのです。

“パートナーになりたくて卑怯な手を使った”と。本当は卑怯とも言えませんがそう言ってください。

王女を追い返してくれてからティーティア様のデビューのパートナーになりたくてずっと来る日も来る日もこういう練習をしていた。

だから自分にかなり有利だったと打ち明けてください』


それからも会いたいと何度も手紙を送ったが断られ、ついに私は倒れてしまった。

食事が喉を通らなかったのだ。

すぐに伯爵がティーティアを連れてきた。
久しぶりに会えたのにベッドに横になっているなんて。

『負けたくせに意地悪してごめんなさい』

『私が3年半も矢を使ってティア対策をしてしまった結果だ。ティアを傷付けるつもりはなかった。すまなかった。
ティアの大事な節目に側にいたかったんだ』

特訓内容を告げると“ずるい!”といって怒っていたが瞳は怒っていなかった。

その日から毎日ティアは会いに来て介護用のスプーンで薬を飲ませてくれた。

何故か大きなぬいぐるみをプレゼントされてウサギのルナと毎晩寝ることになった。
一緒に寝ていないと悲しそうな顔をするので聞いてみたらいつもティアが一緒に寝ているぬいぐるみだった。

それを聞いてから私はウサギのルナをティアだと思って抱きしめて寝るようになった。
確かにティアの匂いがする。

話を聞くとリリーというウサギのぬいぐるみがもう一体いるらしい。

“ティアと離れてルナが可哀想だから毎日入れ替えないか”

そう言って毎日入れ替えさせた。
これでティアの新鮮な匂いを嗅げるし、ティアも私の匂いを嗅いで寝てくれる。




テラスの月を見ながら苦しくも嬉しい思い出が蘇っていた。

「セイン様、どうかしましたか」

「リリーとルナは何しているかなと思って」

「あ~、セイン様のイビキの話をしてると思うわ」

「ティアの寝相が悪いのはどうやったら治るのか話し合っているよ」

「なんで知ってるの!」

「えっ!そうなの!?」

しまった。冗談じゃなくなってしまった。

「ル、ルナと寝ていた夜に夢を見たんだ。
心配していたよ。風邪を引いたり、ベッドから落ちないかどうか」

「本当?」

嬉しそうに聞き返すティアが可愛くて口付けたくて仕方がない。我慢!我慢!

「ルナは喋るんだ。腕を組んでいたよ」

「動くのね!」

「椅子に座ってお茶を飲み焼き菓子を食べていたよ」

「いいなぁ、私もその夢見たいです」

「じゃあ、一緒に寝ようか」

「えっ?」

「セイン殿下」

振り向くとキャサリーナ・ゾルドフがいた。
彼女はゾルドフ侯爵の娘で同級生だった。
ずっと求婚し続けて、諦めて婚約者を作らない厄介な女だった。

「キャサリーナ嬢、何かな」

「ダンスを誘いに参りましたの」

「悪いが彼女のパートナーをしている時には誰とも踊らない」

「あら、それはよろしくありませんわ。
社交デビューだというのに殿下がつきっきりで社交をさせないだなんて」

「そうですよ殿下。娘の手を取ってください」

「ゾルドフ侯爵、お久しぶりです。
私はデビューしたパートナーのサポート役です。主役を放っておく気はありません」

キャサリーナの父親の家名を口にした瞬間、ティアが私の袖を掴んだ。震えている?

「其方のお嬢さんは私と踊りましょう」

「下がってください、侯爵。
彼女は私の大事なパートナーだ。
私の許可なく連れ出すことは許さない」

「ハハッ、まるで所有物のようですな」

「セイン、帰りたい」

絞り出した声が震えている。ティーティアをこいつと離さねば。

「すぐに退席しよう」

私は護衛騎士に、伯爵に私室に行くと伝えてもらいティアを抱き上げて会場を後にした。













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