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デビューのパートナー

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四年後、

「ティーティア、セイン殿下がお迎えにいらしたのだから観念しなさい」

「そうよ。賭けに負けたのだから大人しく受け入れなさい」

「いいのです。私が大人気なくティアを賭け事に巻き込んだのですから、多少のグズりは覚悟しています」

「いつもごめんなさいね。この子ったらいつまで経ってもこんな調子なんだから」

「ティア、とても可愛いね。ドレス似合ってるよ」

「セイン様こそ」

「これは記念の贈り物だよ」

「まあ!ブルーパールだわ。淡くて光沢があるわね」

「セイン殿下、希少な品をありがとうございます」

「セイン様、ありがとうございます」

「さあ、行こうか。遅く行くと混むからね。
伯爵、夫人、行きましょう」




王家の馬車に家族三人が乗せられて、最後にセイン様が乗って出発した。

すぐそこだけどね。


実は、パートナー権をかけてセイン様は私と勝負をした。

三回中、一度でも私の突きを弾くことができたらデビューのパートナーにして欲しいと言われ、どうせ勝つと受けてしまった。

一回目と二回目は微動だにせず、三回目で弾かれてしまった。

嬉しそうに微笑むと剣を付き添いに渡し、私の手を引いて厩舎に連れて行き、馬に乗せた。

四年前と違って今はセイン様の前に乗っている。長身でしっかりとした筋肉がつき体幹も良さそうだ。だから不安がない。

勝負のことには一切触れず色々な話を振ってくれた。


セイン様とは時々会うけどあの頃とはだいぶ変わった。新作が出た時にお忍びで店に来てくれたが、まるで友人と話すかのようにジョルジーヌ達と気さくに話していた。

話題も豊富でよく勉強しているのが分かる。
それにとても余裕があるように感じる。




天使の匙は今は落ち着いている。
リピーターのおかげで安定した売り上げがあり、二店舗目の出店をいろんな人から声がかかったが出さないと答えた。

その代わり、委託販売が増えた。
トイレの他に、蛇口やドアノブ、網戸や障子、暖簾やパーテーションを委託販売している。デザインは全て考えた。

蛇口やドアノブは素材をガラスにしたり宝石を嵌め込んだり、デザインしたり。

障子は普通のものからレース状のもの、絵の入ったものもある。

暖簾はレースや紐を編んだもの、ビーズを使った。

パーテーションもシンプルなものから絵の描かれたもの、木を掘り込んだものやレースを使った。

天使の匙で増えたアイテムはペーパーウエイトとペーパーナイフだ。

ペーパーウエイトはガラス製も販売した。

いずれも良く売れている。
私の個人資産は増え続け、ジョルジーヌ達にもボーナスをあげられた。





王城の待合室を特別にひとつ貸し切ってくれて、軽くダンスのおさらいをした。

「躓いても滑っても踏んでも大丈夫。私が支えるからティアが転ぶことはないよ」

「ありがとうございます」



時間になり、呼ばれて会場入りするとパートナーの名前を聞いた人達が一斉にこちらに向いた。

色々な感情の混じった目に居辛さを感じるとセイン様がギュッと手を握った。

セイン様を見上げると私を見て微笑んだ。

「ティア、私が側にいる限り大丈夫だよ」

「……はい」


順番を待って国王陛下に挨拶をした。

「ティーティア、おめでとう。もうすぐ成人だな。何か欲しいものはないか?」

「充分でございます、陛下」

「ティアちゃん、それじゃ つまらないわ」

「それでは王妃様の一番好きな花をプレゼントしてください」

「それだけ?」

「(セイン様からいただきました)」

「セインはセインよ」

「では、商品レビューをカードに書いてください。真実だけで結構ですので」

「どう言うことだ?」

「特定の商品を買って使ってみた感想をカードに書いていただき、それを商品の横に置くのです」

「お墨付きということか」

「さあ、それは分かりませんわ。“使い勝手が悪かった”とか、“デザインがイマイチ”だとか、そういった感想もあり得ますから」

「分かったわ。所定のカードがあるなら貰えれば書くわ」

「ありがとうございます」

ああ、視線が痛い。



上位貴族の挨拶が終わるのを待つ間、セイン様と話していた。

「ユリウスも婚約したみたいだね」

「ウィルソン公爵家の令息は全員婚約しましたね」

「寂しい?」

「そんなことないです」

「ティアにも沢山縁談の申し入れがあるみたいだね」

「そのようです。商売のせいでしょうね」

「隣国の王子から縁談があったと聞いた時は驚いた」

「私も驚きました。きっと輸出しているせいですかね。王子が婿入りするような富豪じゃないですし平凡な伯爵家なんですけどね」

「ティアは魅力的だから困っちゃうね」

「会場入りしてからの視線でわかります。
おモテになるのはセイン様ですわ」

「私はたった一人からの愛しか要らないから嬉しくはないな。敬意なら嬉しいけどね」



喉を潤していると挨拶が終了し、ダンスタイムとなった。

「セイン様、よろしくお願いします」

「ティアの大事な節目に側にいられて嬉しいよ。ありがとう」

曲が始まるとセイン様のリードで踊り出した。すごく安定していて踊りやすい。

途中足が縺れて抱き寄せられ、フワッと浮かせて誤魔化してもらったけど、令嬢達の視線が鋭くなりましたよ。


ダンスが終わると令嬢達がセイン様と踊ろうと寄ってきたがセイン様は纏めて断った。

「私は彼女のパートナーだからもう踊るつもりはない。他の者を誘ってくれ」

ガッカリのため息と私への舌打ちと様々な殺気が入り混じる。セイン様は気にもせず、私の手を引いてテラスに出た。




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