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夜会
会場で挨拶を受けるのだが、何故か公爵が私の腕を離してくれず、一緒に挨拶をさせられている。斜め後ろのユーグ様を見るも微笑み返されるだけ。
「久しぶりです公爵」
「お元気でしたか、ナセリ伯爵、伯爵夫人」
「お陰様で元気に過ごしております。お隣の淑女は、」
「彼女はエレナ・セブレスターです」
「セブレスター…あの異色の領法のセブレスター子爵家の!?」
「セブレスターです。領法は私が変えました」
「こ、公爵。グラソンの領法は現状維持でお願いします」
「ハハッ 安心してくれ」
おっ。公爵が笑うと無邪気な感じになるのね。
5組目は
「カリフォン夫人、子爵はその後良くなったか?」
「はい。ゆっくりですが快方に向かっております。
ところでお隣の夫人はどなたでしょう」
「彼女はエレナ・セブレスターといって、私の側近の一人だ」
「では、次期公爵夫人ではないのですね?」
「私の大事な女性だ」
言い方が変だけど、確かに側近は公爵にとって大事な人間よね。
「公爵様、娘のティファーナです。21歳の乙女ですわ」
ええ!?こんなところで“乙女”とか言うの!?こっちの世界では処女って意味よね。“うちの娘は処女です”って?恥ずかしくないのかな。
ホルスタインみたいな乳をしてるわね。肩凝りそう。私には無縁の苦労だなぁ。
「ティファーナが公爵様にご挨拶を申し上げます」
「良き縁談に恵まれるといいな」
「っ! グラソンの生活に順応できる女性をお求めのはずですわ。私は領内で生きてきましたもの。逃げ出したりしません。
それに子を産んで差し上げられます」
何でこっち見るの?
「私に乙女も子も必要ない。既に男児を2人産ませているのだから充分だ。子もいて婚歴もあるいい歳をした私に乙女の妻など意味を成さない。若いことが価値ではない。公爵家や公爵領に有益かどうかで選ぶつもりだ」
「私だって、お役に立ってみせますわ」
「なら、領内のエヴリー男爵家に嫁いでくれ」
「え?」
「まだ嫁が見つかっていないし、初婚だ。
誰か、エヴリー男爵達を呼んでくれ」
「そ、そんな」
現れたエヴリー男爵夫妻と息子は性格が良さそうだった。ちょっとおデブだけど可愛いと思う。
「エヴリー男爵、子息のレオはまだ嫁探しの最中だな?」
「はい、公爵様」
「歳はいくつだったかな?」
「29歳になりました」
「こちらのティファーナ・カリフォンは21歳で乙女らしい。レオとティファーナの婚姻を命じよう」
「ありがとうございます」
「嫌です!私は公爵様と結ばれたいのです!」
「私は必要としていない。役に立ってみせると言っただろう」
「いくらなんでもデブは嫌です!」
あ~。男爵令息が悲しそうな顔をしちゃったじゃない。
「私なら喜んでお嫁さんになるのに」
「は?」
つい口に出した言葉に反応したのは公爵だった。
「失礼。…だって、ご令息は可愛らしいお顔をしていますし、生まれる子だって可愛いと思うのです。それに、ご両親もご子息もとても人柄が良さそうですし、穏やかな幸せを与えてくれそうですもの」
「ありがとうございます、セグレスター様」
「ううっ…」
子息は頬を染めてるけど、夫人は泣き出してしまった。
「年齢も釣り合いませんし、跡継ぎをお望みでしょうから、お若いご令嬢の方がよろしいですわね」
「エレナ、君はレオが好みなのか」
「好みというか、可愛いなって」
「可愛い男がいいのか」
「可愛いから選ぶとかそうではありません。ただ初対面の印象としては性格の良さそうな可愛い方だなと思ったのです」
「ぼ、僕はエレナ様さえよろしければ、」
「よし、決まりだ。封鎖前にティファーナ・カリフォンはエヴリー邸に引っ越して妻としての務めを果たせ。雪解け後に追って婚姻の儀をすればいい。レオもいい歳だ。早く子を作りたいだろう?
国には私から届けを出しておこう」
「公爵様!」
「異論は認めない」
結局 話は保留になりそうだが、小娘から睨まれる変な役割になってしまった。
そして公爵の機嫌が悪い。
「エレナは再婚の意思があるのか?」
「良縁があれば無くはないです」
「……男爵家の方がいいのか」
「はい?」
「エレナにエヴリー家では物足りないはずだ」
「私がエヴリー家に嫁ぐことはありません。跡継ぎを必要としていましたでしょう?私は選ばれません。
それに物足りないとは何ですか。
私の父は“当主に従え”“男に従え”という典型的な時代遅れの愚かな男でした。だから無能なマルクを婿に迎えることになってしまいました。そしてマルクは女を性の道具にしか見ていないくせに、その女に仕事も何もかもさせるカス。
そういうの、もううんざりなんですよ。
もし嫁ぐなら相手と相手の家族の人格を重視します。借金もなく、お金に困っていなければ平民でもかまいません。残りの人生は人として敬われて生きたいのです。それが叶わぬ婚姻をするくらいなら仕事をしながら一人で生きていきます」
「……私の人柄はどう思う」
「分かりません。仕事面では真面目だと思いますが、私的な部分は分かりません」
「分からない?」
「丁寧に扱ってくださる一方で、女性を下に見た行動をなさったので、“分かりません”」
「下になど、」
「先日の夜のことをお忘れですか?」
「あ、あれは」
「例え公爵の妻の座を求めて来たとしても、何の話し合いも説明もなく、閨の支度をさせて 寝ている女性の身体を勝手に弄る権利は公爵にはありません。
ですが、公爵である男なら、それが許されると思ってそうした。違いますか?」
「お互い婚歴もあって経験もあるし いい大人だからそういう始め方も有りだと思ってしまった」
「同意が無ければ強姦というのです」
「反省している。悪かった」
「今夜だけで3名の女性が言い寄ったではありませんか。彼女達の中から選んではいかがですか」
「今度ゆっくり話そう」
話したくないんだけどな。
「久しぶりです公爵」
「お元気でしたか、ナセリ伯爵、伯爵夫人」
「お陰様で元気に過ごしております。お隣の淑女は、」
「彼女はエレナ・セブレスターです」
「セブレスター…あの異色の領法のセブレスター子爵家の!?」
「セブレスターです。領法は私が変えました」
「こ、公爵。グラソンの領法は現状維持でお願いします」
「ハハッ 安心してくれ」
おっ。公爵が笑うと無邪気な感じになるのね。
5組目は
「カリフォン夫人、子爵はその後良くなったか?」
「はい。ゆっくりですが快方に向かっております。
ところでお隣の夫人はどなたでしょう」
「彼女はエレナ・セブレスターといって、私の側近の一人だ」
「では、次期公爵夫人ではないのですね?」
「私の大事な女性だ」
言い方が変だけど、確かに側近は公爵にとって大事な人間よね。
「公爵様、娘のティファーナです。21歳の乙女ですわ」
ええ!?こんなところで“乙女”とか言うの!?こっちの世界では処女って意味よね。“うちの娘は処女です”って?恥ずかしくないのかな。
ホルスタインみたいな乳をしてるわね。肩凝りそう。私には無縁の苦労だなぁ。
「ティファーナが公爵様にご挨拶を申し上げます」
「良き縁談に恵まれるといいな」
「っ! グラソンの生活に順応できる女性をお求めのはずですわ。私は領内で生きてきましたもの。逃げ出したりしません。
それに子を産んで差し上げられます」
何でこっち見るの?
「私に乙女も子も必要ない。既に男児を2人産ませているのだから充分だ。子もいて婚歴もあるいい歳をした私に乙女の妻など意味を成さない。若いことが価値ではない。公爵家や公爵領に有益かどうかで選ぶつもりだ」
「私だって、お役に立ってみせますわ」
「なら、領内のエヴリー男爵家に嫁いでくれ」
「え?」
「まだ嫁が見つかっていないし、初婚だ。
誰か、エヴリー男爵達を呼んでくれ」
「そ、そんな」
現れたエヴリー男爵夫妻と息子は性格が良さそうだった。ちょっとおデブだけど可愛いと思う。
「エヴリー男爵、子息のレオはまだ嫁探しの最中だな?」
「はい、公爵様」
「歳はいくつだったかな?」
「29歳になりました」
「こちらのティファーナ・カリフォンは21歳で乙女らしい。レオとティファーナの婚姻を命じよう」
「ありがとうございます」
「嫌です!私は公爵様と結ばれたいのです!」
「私は必要としていない。役に立ってみせると言っただろう」
「いくらなんでもデブは嫌です!」
あ~。男爵令息が悲しそうな顔をしちゃったじゃない。
「私なら喜んでお嫁さんになるのに」
「は?」
つい口に出した言葉に反応したのは公爵だった。
「失礼。…だって、ご令息は可愛らしいお顔をしていますし、生まれる子だって可愛いと思うのです。それに、ご両親もご子息もとても人柄が良さそうですし、穏やかな幸せを与えてくれそうですもの」
「ありがとうございます、セグレスター様」
「ううっ…」
子息は頬を染めてるけど、夫人は泣き出してしまった。
「年齢も釣り合いませんし、跡継ぎをお望みでしょうから、お若いご令嬢の方がよろしいですわね」
「エレナ、君はレオが好みなのか」
「好みというか、可愛いなって」
「可愛い男がいいのか」
「可愛いから選ぶとかそうではありません。ただ初対面の印象としては性格の良さそうな可愛い方だなと思ったのです」
「ぼ、僕はエレナ様さえよろしければ、」
「よし、決まりだ。封鎖前にティファーナ・カリフォンはエヴリー邸に引っ越して妻としての務めを果たせ。雪解け後に追って婚姻の儀をすればいい。レオもいい歳だ。早く子を作りたいだろう?
国には私から届けを出しておこう」
「公爵様!」
「異論は認めない」
結局 話は保留になりそうだが、小娘から睨まれる変な役割になってしまった。
そして公爵の機嫌が悪い。
「エレナは再婚の意思があるのか?」
「良縁があれば無くはないです」
「……男爵家の方がいいのか」
「はい?」
「エレナにエヴリー家では物足りないはずだ」
「私がエヴリー家に嫁ぐことはありません。跡継ぎを必要としていましたでしょう?私は選ばれません。
それに物足りないとは何ですか。
私の父は“当主に従え”“男に従え”という典型的な時代遅れの愚かな男でした。だから無能なマルクを婿に迎えることになってしまいました。そしてマルクは女を性の道具にしか見ていないくせに、その女に仕事も何もかもさせるカス。
そういうの、もううんざりなんですよ。
もし嫁ぐなら相手と相手の家族の人格を重視します。借金もなく、お金に困っていなければ平民でもかまいません。残りの人生は人として敬われて生きたいのです。それが叶わぬ婚姻をするくらいなら仕事をしながら一人で生きていきます」
「……私の人柄はどう思う」
「分かりません。仕事面では真面目だと思いますが、私的な部分は分かりません」
「分からない?」
「丁寧に扱ってくださる一方で、女性を下に見た行動をなさったので、“分かりません”」
「下になど、」
「先日の夜のことをお忘れですか?」
「あ、あれは」
「例え公爵の妻の座を求めて来たとしても、何の話し合いも説明もなく、閨の支度をさせて 寝ている女性の身体を勝手に弄る権利は公爵にはありません。
ですが、公爵である男なら、それが許されると思ってそうした。違いますか?」
「お互い婚歴もあって経験もあるし いい大人だからそういう始め方も有りだと思ってしまった」
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