【完結】そろそろ浮気夫に見切りをつけさせていただきます

ユユ

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白い闇

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仕方ない、行ってくるか。 

すっかり雪の季節になったグラソンは白銀の世界になっていた。
 
資料について補佐室で聞いたら、渡り廊下の先の倉庫にあるという。持ち出し禁止だから倉庫で読んで帰ってくるしかないと言われ、倉庫へ続く渡り廊下の前にやって来た。

防寒具を着用し前に進む。
少し風が強いから、その分体感温度が低い。
 
倉庫の中に入り目的の資料を探すも、なかなか見つからない。具体的な場所を聞かなかったのが悪かった。

また聞きに戻ってここに来るのは避けたくて粘っていたが、時間が経ち過ぎたのでついに諦めて渡り廊下に出た。少し歩くと白い闇に包まれた。
ロープを探すも見当たらず、倉庫に戻ったが鍵穴が見つからない。

その内、鍵を上手く持つことができず落としてしまい、拾おうにも見えない。探しているうちに動きが鈍くなっていく。

這い蹲りながら、本館へ向かった。ロープが貼られていて掴めれば本館へ戻れるのだが、無いので地面の感触で判断することにした。渡り廊下は石畳。外れたら凍った土だろう。なんとかその感触の差で渡り廊下から外れることなく本館に戻れたらと思っていたが、体温が奪われる方が早かった。
途中で身体が動かなくなってしまった。

白い闇の中で息絶えるのかと覚悟を決めた。

「…!!」

「…ナ!!」

「エレナ!!」

「公爵?」

公爵の幻覚と幻聴を見聞きした気がした。



次に目を開けた時は誰かに抱きしめられていた。

温かい。それにお互い裸で、相手は男だ。
上を見ると公爵の顔が見えた。

「エレナ」

「一体コレは」

「体調はどうだ」

「少し頭痛と怠さがあります」

「渡り廊下で凍死しかけたんだ」

「倉庫の鍵を落として…すみません」

「後で聞く。先ずは医師を呼ぼう」


公爵がガウンを羽織り部屋の外に出ると、メイド長を含む3人のメイドとが入室した。

数分後に医師が部屋に入り脈診をしたりして薬湯を用意してくれた。

「危なかったのですよ。公爵様が助け出して連れて来た時は凍死寸前でした。公爵様が一生懸命に温めてくださったのですよ」

「公爵が助けてくれたのですか?」

「そうです。何故かロープが切れていて誰も探しに行けない状態でした。白い闇で視界ゼロでしたから。ですが反対を押し切って自らエレナ様を探しに行かれたのです。真ん中よりも本館側に倒れていらしたのが幸いでした。
ですがエレナ様のお身体は冷え切っていて、公爵様がずっと温め続けていたのです」


診察を終え、入室した公爵にお礼を伝えた。

「命を助けてくださり ありがとうございました」

「君に死なれたら立ち直れそうにもない。二度としないでくれ」

「ですが、資料が倉庫にあって、持ち出し禁止だから直に見に行くしかないとロバートに言われて仕方なく。探しても見つからず、帰りには天候が荒れていてすぐに白い闇に包まれました。何故か本館側から倉庫まで貼られたロープが無くて、視界が無くて鍵穴も見付からず倉庫の中にも戻れず、その内 指も上手く動かせなくて鍵を落としてしまいました。最後の望みをかけて、地面の感触を頼りに本館へ向かいました」

「事情は分かった。このまま此処で休みなさい」

「はい」


公爵が医師と退室するとメイド長達が世話を始めた。

「公爵様の慌てようは大変だったんですよ」

「羽交締めにする使用人達を振りきって、いるかどうか分からない倉庫への渡り廊下へ向かって行きましたから」

いるかどうか分からない?

「札を掛けたはず」

「札は落ちていました。だから他の渡り廊下の可能性もあったのですが、足跡が薄く残っていて、公爵様は躊躇わずに助けに向かいました。
顔色が白くなって動かないエレナ様を抱えて戻られた公爵様は、それはもう大騒ぎで。ご自身の寝室に運び込んで服を脱いで丸一日 エレナ様を温め続けたのです。その間、一切の食事を拒否なさって」

……。



その日の夜、私はまだ公爵のベッドに寝かされていた。食事をしてずっと寝ていた。

ノックの後に入って来たのは公爵だった。

「食事をしたと聞いたが、少しは良くなったか」

「はい。助けて下さりありがとうございました」

「そうか。まだゆっくり休むといい」

「公爵?」

「私は別の部屋で寝るから安心してくれ」

「…まだ少し寒いから…温めてくださいませんか」

「エレナ?」

「一人は怖いのです」

公爵は服を脱いでベッドに入り抱きしめてくれた。
だけど硬いモノが当たってる。

「あの」

「どうした?」

「身体の中から温めてくださいませんか」

「エレナ?」

「もう そんな気にはなりませんか」

「後悔するなよ」

「しません」





翌朝、医師とメイド長に叱られた公爵はずっとニコニコしていて、2人を呆れさせていた。

「あの、私が悪いのです」

「例えエレナ様が誘ったとしても、我慢すればいいことです。エレナ様は死にかけたのですよ!」

「そうです。就寝前よりグッタリしてるではありませんか!」

だって、そんな風には見えないのに体力が化け物みたいにあって、時間をかけてたっぷり3回して、眠って、夜明けにまた挿入で起こされたんだもの。

チラッと公爵を見ると、微笑まれた。

「全部私が悪い。エレナは悪くない」

医師とメイド長は呆れながら診察をしたり世話をしてくれた。
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