【完結】些細な呪いを夫にかけ続けている妻です

ユユ

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贖罪

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夫ハミエルに呼ばれて居間に入るとハミエルは私を座らせることなく用件を告げた。

「セシル、離縁してくれ」

「離縁ですか」

「属性無し魔力無しのお前との婚約を解消できず婚姻してしまったことを後悔している。
セヴリッジ伯爵家の未来のために別れてくれ」

「分かりました」

「え?」

「慰謝料はいただきますね」

「いいだろう」

「少しお待ちください」

私は紙にさっと誓約書を書いた。
“貴族法執行官の査定に従い慰謝料を即日支払う”というものだった。

「これに署名してください。離縁届は持ってきてくだされば即署名します」

「署名すればいいんだな」

「はい」

馬鹿な男。本当に何も分かっていないのね。

「では、離縁届をご用意ください」

「直ぐに撮りに行かせる」

使用人に離縁届を取りに行かせている間に荷造りをした。一先ず金庫の中にある現金をキリのいい額だけ鞄に詰めた。
使用人達に簡単な引き継ぎと指示を出すと不安な声を漏らした。
“転職先を探さないといけないのですね”
“若旦那様を追い出したいです”
“若奥様の次の嫁ぎ先について行きたいです”

執務を補佐してくれた人達は顔色が悪く強張っていた。

直ぐに離縁届が用意されて、ハミエルと一緒に提出しに行った。窓口で誓約書を見せて、“後日査定後に慰謝料を決めていただきます”と告げるとの絵が彫られたハンコがおされた。

「なんだそれは」

「慰謝料が決まり支払われるまで執行官が案件として担当します」

「離縁はどうなる」

「離縁は今を持って完了します。後日執行官がお屋敷に調査に伺います。邪魔をするとペナルティを科しますのでお気を付けください」

「あとこちらも」

「あ、はい。慰謝料の先払いですね?」

「なんだそれは」

「当面の生活費に充てます。
セヴリッジ伯爵、まさか私を無一文で追い出そうと?」

周囲の人々がパッと伯爵を見た。

「そ、そんなわけがない」

「では屋敷に戻り荷物を持って出て行きますわ」

「分かった」

屋敷に戻り、お義父様宛の手紙とお義母様宛の手紙を出すよう使用人にお願いして、屋敷を出て王都のホテルに部屋をとった。

今後はどうしよう。実家に戻るか別の土地で大人しく暮らすか。

お兄様宛の手紙をフロントに託して併設のカフェで昼食をとっていた。

「ご覧になって。第二王子殿下にお仕えしている貴族出身の者達が次々と異動願や退職届を出してしまい、急遽募集をしているという噂は本当でしたのね」

「新聞に載せるということは、新人を殿下に就けようと?」

「呪いの一族の血を引いては誰もが嫌がりますわ」

処刑された元王妃の息子でミカエル第二王子殿下はやはり影響を大きく受けたのだと確信した。

夫人達が去ったあと、新聞を手に取り募集記事を隅々まで読んだ。
その足で王城へ向かいミカエル第二王子殿下の侍女の応募した。素人ならメイドかもしれないけど、どちらかというとメイド業の方が素人なので足手纏いになる。図々しくも侍女に応募した。


夕方にはお兄様から先触れが届き、夜にレストランで食事を共にした。

「ミカエル殿下の侍女に応募したのだな」

「新聞に載っていましたので」

「王族の専属使用人は魔法使いであることが原則だ。正体を明かすのだな?」

「はい。殿下は水、土、風の稀な三属性持ちでいらっしゃるので、火魔法と記載しました。属性書けとは書いてありませんでしたので」

「判定道具はどうするんだ」

「先に火を出せばいいだけです。怒られるかもしれませんが。それでも駄目でしたら軽く火魔法を使いながら判定道具に触れます」

「そうか。リオネル殿下が悔しがるな」

「悔しがる?そんなはずはありません。私に次期国王の侍女の職は回ってきません。愚かな夢は見ませんわ」

「……順調に行けば2週間後に面接だな」

「そうですか」

「やることがなければ研究所に来て手伝ってくれないか」

「はい」



そして2週間後。
無事貴族法執行官の調査を経て完全に離縁が成立した私はセシル・ハーゼルとして面接を受けていた。

「離縁をされたばかりなのですね」

「はい」

「調査報告書では、ハーゼルさんがタウンハウスでの伯爵家の執務を担当なさっていたようですね」

「はい。夫が働かず、いい加減なことをして損を出すので仕方なく。領地の執務は引き受けておりませんので義父の方が大変かと」

「…伯爵は女性関係が派手だったとか」

「婚約中からです。彼の希望で自由恋愛承諾契約もしました」

「では貴女も?」

「私は純潔です」

「恋人は作らず白い結婚だったと?」

「はい。彼は私を毛嫌いしておりましたので」

「暴力も受けていたのですね」

「はい。証拠を残しました。彼は私を殴ったあと、証拠に日時と署名を書いてくださいました」

「………そ、そうですか。借金はありますか?」

「離縁のおかげで潤っております」

「では何故応募を?」

「私は魔力判定で反応しませんでした。それ故にかなりの差別を受けて参りました。ですが実際はご覧の通りです」

手のひらを上に向けて天井に届く手前までの火柱を出し、蛇のようにクネクネと部屋を徘徊させ消した。

「こ、これは」

「ハーゼル…魔術研究所のナンバー3の…」

「はい。アレクセイ・ハーゼルの妹です」

「なるほど」

「今、ミカエル殿下は差別に苦しみ、今後も苦しみ続けるでしょう。内容は異なりますが 差別や誹謗中傷を受けた経験者の私がお役に立てればと応募いたしました」

「よく分かりました。結構です。追って合否をお知らせします」

「ありがとうございました」


ホテルで待機していると翌日には合格通知と持ち物や日程が書かれた書類が送られてきた。

お兄様がお祝いをしてくれて、両親に報告の手紙を書いた。二度と縁談を持ってこないで欲しいとも書いた。

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