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サックス家で茶会
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久しぶりのサックス家の茶会に来ている。
叔父様も叔母様も優しく迎えてくれる。
「叔母様、新作はありませんの?」
「あるわよ」
叔母様は刺繍の達人だ。見た目も触り心地も良い。配色も絶妙だ。
「娘はいいわね。こうやって楽しめるもの。アネットのような姿も心も綺麗な子が欲しかったわ」
「これからはミーナ様がいらっしゃるではありませんか。あれ?ミーナ様は」
「まだ婚約しているだけだから来ていないわ」
「そうですか」
「会いたかったの?」
「テオを借りて迷惑かけていますからお詫びを言いたかったのです」
叔母様が新作を取りに席を外した。
「そんな必要はない」
「テオ…ミーナ様に冷たくない?」
「アネット以外こうだよ」
「ミーナ様はテオの妻になる人よ、特別に扱わないと」
「政略結婚することが特別になっているからいいんだ」
「 ? 」
「内容は教えられないが彼女が求めているものを満たしてるから問題ないんだ。
昨日も仕事だろう。疲れてないか」
「大丈夫。楽しいわ。食べ放題だし」
「手は荒れてないか」
「見て、大丈夫でしょう」
テオは私の手を確認すると引き寄せて自分の頬に添えさせた。
「危険なことはするなよ」
「させてもらえないわ」
「人気の無いところに行くなよ」
「はい」
「もうすぐ誕生日だろう?パーティーの招待状が届いてないんだけど」
「今年からはやらないの。結婚したら必要に応じてやるかもしれないけど」
「何故だ」
「仕事が忙しいし、日頃みんなには充分愛情をもらっているもの」
「ミーナのせいか。ミーナがアネットと同じ誕生日だからか」
「そうじゃないけど、テオはおかしいわ。
いつまでも従妹を優先しないで婚約者を優先すべきだわ。
パーティーをやったとしてもテオは呼ばない。
今のままでは私もテオもゲラン家にもサックス家にも良くないわ」
「成程……。では婚約を解消しよう」
「は?」
「彼女には慰謝料を払う」
「こんなことで解消するならテオドールとは絶交よ。今まで私が甘え過ぎていたんだわ。
従兄離れが遅かったのね」
「アネット!!」
「そこまでだ」
「父上」
「叔父様」
「アネット、私はテオドールが幼少の頃から従妹であるアネットを守るように言い聞かせてきた。家族を守ろうとするテオドールが誇らしい。
しかも産まれたのは普通の従妹ではなく、心配になるほど可愛くて美しいお姫様だった。
過分になるのも仕方のないことなんだ。
婚約者はまだ紙の上での結び付き、アネットは血縁だ。どちらを優先するかなんて決まりきってる。結婚しても政略結婚なら血縁を優先してしまうのも仕方ない。
別にミーナ嬢を蔑ろにしているわけではない。予め要望を互いに告げて取引をした。
テオドールはミーナ嬢の要望に応えているし、ミーナ嬢もテオドールの要望に応えている。
そこにアネットが口を出すことこそ過分だ」
「……ごめんなさい」
「テオドール。侯爵家を継ぐなら感情的にならずに言葉を選べ。無闇にアネットを動揺させるな」
「申し訳ありません」
「テオ、ごめんね。酷いことを言って」
「アネットが可愛くて仕方ないんだ。受け入れて欲しい」
「アネット~作品持って来たわよ~」
「叔母様の所に行こう」
ちょっと気まずかったけどテオの手を引いて叔母様の所に行った。
1ヶ月後
「アネット」
「ステファニー。来ちゃダメよ」
「感染らないから大丈夫」
「じゃあ帰る」
「分かった!これ以上近寄らないから!
お花置いたら戻るから」
「毎日変えなくていいのに。昨日のお花はどこに行ったの?まさか捨てたりしていないよね?」
「私の部屋に飾ったから大丈夫」
「もうこのままにして」
「それよりアネットに水をかけた人が捕まったわ。今バトラーズ副隊長が尋問しているらしいわ」
「何でバトラーズ副隊長?」
「第三は王妃の公務の護衛で数日不在だから」
「そうじゃなくて、雑用係が水をかけられたくらいで近衛騎士団の副隊長が動かなくても」
「私の大事なアネットに水をかけて熱を出させたのよ!許せるわけないじゃない!」
「熱が出たのは偶然かもしれないし」
「団長も激怒していて陛下も最優先事項にしてくれたの」
めまいが……
「今度は血の気が引いてるわ!
お医者様を呼んでくるわね!」
「呼ばないで!駄目!ひとりで寝るから!」
「何かあったら呼び鈴を鳴らすのよ」
「どこからこんな大きな呼び鈴を持って来たの?普通の10倍近くあるじゃない」
「聞こえなかったら困ると思って」
「何かあった時に巨大な呼び鈴を振れなくて大事になるかも」
「うっ…普通の呼び鈴も置いておくわね」
私は3日前、仕事中に冷たい水を大量にかけられた。
外を歩いていて上の階からやられたみたい。
びちゃびちゃだし、水気を切ろうとそのまま雑巾や布巾を洗って干した。その後着ている服を絞って裏にまわって建物に入った。
その時に団長にバレる。
水をかけられてから着替えるまで1時間。
拭いただけでは体は冷えたまま。だけど勤務中だ。お風呂入ってあったまったのは夕方。
翌日勤務中に倒れ、貴賓室に強制収容。
高熱がでていた。
叔父様も叔母様も優しく迎えてくれる。
「叔母様、新作はありませんの?」
「あるわよ」
叔母様は刺繍の達人だ。見た目も触り心地も良い。配色も絶妙だ。
「娘はいいわね。こうやって楽しめるもの。アネットのような姿も心も綺麗な子が欲しかったわ」
「これからはミーナ様がいらっしゃるではありませんか。あれ?ミーナ様は」
「まだ婚約しているだけだから来ていないわ」
「そうですか」
「会いたかったの?」
「テオを借りて迷惑かけていますからお詫びを言いたかったのです」
叔母様が新作を取りに席を外した。
「そんな必要はない」
「テオ…ミーナ様に冷たくない?」
「アネット以外こうだよ」
「ミーナ様はテオの妻になる人よ、特別に扱わないと」
「政略結婚することが特別になっているからいいんだ」
「 ? 」
「内容は教えられないが彼女が求めているものを満たしてるから問題ないんだ。
昨日も仕事だろう。疲れてないか」
「大丈夫。楽しいわ。食べ放題だし」
「手は荒れてないか」
「見て、大丈夫でしょう」
テオは私の手を確認すると引き寄せて自分の頬に添えさせた。
「危険なことはするなよ」
「させてもらえないわ」
「人気の無いところに行くなよ」
「はい」
「もうすぐ誕生日だろう?パーティーの招待状が届いてないんだけど」
「今年からはやらないの。結婚したら必要に応じてやるかもしれないけど」
「何故だ」
「仕事が忙しいし、日頃みんなには充分愛情をもらっているもの」
「ミーナのせいか。ミーナがアネットと同じ誕生日だからか」
「そうじゃないけど、テオはおかしいわ。
いつまでも従妹を優先しないで婚約者を優先すべきだわ。
パーティーをやったとしてもテオは呼ばない。
今のままでは私もテオもゲラン家にもサックス家にも良くないわ」
「成程……。では婚約を解消しよう」
「は?」
「彼女には慰謝料を払う」
「こんなことで解消するならテオドールとは絶交よ。今まで私が甘え過ぎていたんだわ。
従兄離れが遅かったのね」
「アネット!!」
「そこまでだ」
「父上」
「叔父様」
「アネット、私はテオドールが幼少の頃から従妹であるアネットを守るように言い聞かせてきた。家族を守ろうとするテオドールが誇らしい。
しかも産まれたのは普通の従妹ではなく、心配になるほど可愛くて美しいお姫様だった。
過分になるのも仕方のないことなんだ。
婚約者はまだ紙の上での結び付き、アネットは血縁だ。どちらを優先するかなんて決まりきってる。結婚しても政略結婚なら血縁を優先してしまうのも仕方ない。
別にミーナ嬢を蔑ろにしているわけではない。予め要望を互いに告げて取引をした。
テオドールはミーナ嬢の要望に応えているし、ミーナ嬢もテオドールの要望に応えている。
そこにアネットが口を出すことこそ過分だ」
「……ごめんなさい」
「テオドール。侯爵家を継ぐなら感情的にならずに言葉を選べ。無闇にアネットを動揺させるな」
「申し訳ありません」
「テオ、ごめんね。酷いことを言って」
「アネットが可愛くて仕方ないんだ。受け入れて欲しい」
「アネット~作品持って来たわよ~」
「叔母様の所に行こう」
ちょっと気まずかったけどテオの手を引いて叔母様の所に行った。
1ヶ月後
「アネット」
「ステファニー。来ちゃダメよ」
「感染らないから大丈夫」
「じゃあ帰る」
「分かった!これ以上近寄らないから!
お花置いたら戻るから」
「毎日変えなくていいのに。昨日のお花はどこに行ったの?まさか捨てたりしていないよね?」
「私の部屋に飾ったから大丈夫」
「もうこのままにして」
「それよりアネットに水をかけた人が捕まったわ。今バトラーズ副隊長が尋問しているらしいわ」
「何でバトラーズ副隊長?」
「第三は王妃の公務の護衛で数日不在だから」
「そうじゃなくて、雑用係が水をかけられたくらいで近衛騎士団の副隊長が動かなくても」
「私の大事なアネットに水をかけて熱を出させたのよ!許せるわけないじゃない!」
「熱が出たのは偶然かもしれないし」
「団長も激怒していて陛下も最優先事項にしてくれたの」
めまいが……
「今度は血の気が引いてるわ!
お医者様を呼んでくるわね!」
「呼ばないで!駄目!ひとりで寝るから!」
「何かあったら呼び鈴を鳴らすのよ」
「どこからこんな大きな呼び鈴を持って来たの?普通の10倍近くあるじゃない」
「聞こえなかったら困ると思って」
「何かあった時に巨大な呼び鈴を振れなくて大事になるかも」
「うっ…普通の呼び鈴も置いておくわね」
私は3日前、仕事中に冷たい水を大量にかけられた。
外を歩いていて上の階からやられたみたい。
びちゃびちゃだし、水気を切ろうとそのまま雑巾や布巾を洗って干した。その後着ている服を絞って裏にまわって建物に入った。
その時に団長にバレる。
水をかけられてから着替えるまで1時間。
拭いただけでは体は冷えたまま。だけど勤務中だ。お風呂入ってあったまったのは夕方。
翌日勤務中に倒れ、貴賓室に強制収容。
高熱がでていた。
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