【完結】ずっと好きだった

ユユ

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バトラーズ副隊長(バイト令嬢を観察)

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【 レヴィン・バトラーズの視点 】


バトラーズ公爵家の長男で近衛騎士団に勤めている。

身分のせいもあるだろうが若くして第一の副隊長にまでなった。

幼少から厳しい教育を受けた結果、学園で習うようなことは既に習い終わっていた。
学園に行っても煩わしく女達に付き纏われるだけ。私は騎士学校を選んだ。

早々に騎士学校も卒業してしまい、成人になるのを待って騎士団に入った。
騎士になるつもりはなかったが、学校側が推薦枠をくれると言う。まだ父も若いし継ぐ時期じゃないので受けた。

見習騎士からすぐに抜け出し20歳の今は副隊長だ。去年父が選んだ候補の中から当たり障りのない令嬢を選んで婚約者した。

何もかもが順調だと思っていた。



ある日雑用係を募集する話になった。
1ヶ月しないうちに4名が決まった。
平民のピーター、男爵家のザック、子爵家のエリザベス、伯爵家のアネット。

アネット・ゲランは王女殿下のお気に入りで王女が時折城に招いていた。国王夫妻も気に入ったようだ。

王女殿下の警護についた者はアネット嬢の話を口にする。気さくな子らしい。
側で見たことがあったが確かに騒ぐのは分かる。そのうち王女殿下はアネット嬢を泊まりに来させるようになり、下心のある騎士達にきつく忠告した。

「気を付けろ。簡単に首が飛ぶぞ」

脅しではない。王女を見ていれば分かることだ。

デビュータントで国王の警護に就いた時に驚いた。ちょっと見ない間に可愛い蕾が妖艶に開花していた。女とはこんなに変わるものなのか。王女もその花の虜のようだ。

王女殿下の婚約者の参加する夜会で事件が起こった。
非番の我々は後から聞かされた。
馬鹿なことをしたものだ。第三の隊長と副隊長は、王女であっても令嬢が療養している部屋に入室させなかった。


果たして、この令嬢に雑務など務まるのだろうか。第三はあの事件で仲良くなったのか大喜びだった。
どうせ碌な仕事をさせず愛でるのだろうと思っていた。

次の出勤日には大きな手提げ袋に荷物を入れて重そうに歩いていた。話をしてみると仕事道具を探して持ち込んでいた。騎士達の体を気遣って飴も持っていた。

宣伝か、採用してもらって王宮という客を得たいのか。どうやら違うらしい。鎧の実験に興味が湧き見に行くと言ってしまった。

第三の執務室に送り届けたときに部屋を見て驚いた。1日でこんなに変わるものか!?
空気まで爽やかだ。

第一の執務室に入り気が滅入る。

「挨拶もなく浮かない顔は止めろ」

「おはようございます」

「おはよう」

「第三に寄ってきたのですがあまりの違いに驚きまして。空気まで違いますよ」

アシュラル隊長はすっと立ち上がると出ていかれた。少しして戻ると浮かない顔になっていた。

「どういうことだ。第三は当たりを引いたのだな」

私は鎧の実験の話をした。

「9日後か。調整がついたらアネット嬢にお願いしよう」

隊長も見たいようだ。
昼に見かけて話しかけると顔を胸元に寄せた。お誘いかと思ったら洗剤には興味があるようだが公爵家に興味がないらしい。私自身にも。

だがこんなに意味のない会話を令嬢と楽しめたのはいつぶりか。…初めてか。

食堂では厨房の平民と既に仲良くなっていて、伯爵令嬢が平民をさん付けしていた。
ケイトはケイトでしかないと言われ驚いた。

次々と第三の騎士達が座っていく。余所者感がすごい。皆が彼女を可愛がっているのがよく分かった。

初めてみる近衛騎士団専用食堂の特別はネコ型デザートだった。可愛くて食べられないと瞳を潤ます彼女の口に自身の使っていたスプーンで給餌しだした。

次から次へと。

バーンズ副隊長は幼い娘のように扱っているように見えるし、彼女も何も言わない。
何事もなかったかのように食事の時間が終わった。第三の中ではこれが普通!?



評判の悪いエリザベスが休んだ穴埋めはアネットが任された。 

「いいな。アネット嬢が欲しい」

アシュラル隊長が獲物を狙う目になっていた。団長室の書類を届けに巡った時についでに第一宛の書類や家族からの預かり物まで届け、着替えだと知るとハンガーにかけますかと聞いたらしい。

「ゲラン邸に私も行くことになった」

アシュラル隊長が動いてくれるなら実現するかもしれない。

夕方、誰もいないと思いノック無しに団長室の扉を開けたらぶつかる音がして女性の声がした。アネットにぶつけてしまったようだ。

大丈夫だと言うが何かおかしい。
少し圧をかけると舌を噛んだと白状した。
血が出ているようだ。
送ると言っても不要だと去ってしまった。


屋敷に戻り、メイド長を呼んだ。

「16歳の令嬢に不注意で怪我をさせてしまった」

メイド長の目が怖い。

「どの程度でございましょう」

「ノック無しに扉を開けて、扉の向こう側に居た令嬢の頭に当たり舌を噛んだようだ。
血が出たようだ」

「……ご令嬢は?」

「大丈夫と言って去ってしまった」

「はぁ……」

分かってる。反省してるから追い詰めないでくれ!

「お詫びの品を贈りたい。数日後に別件で令嬢の屋敷に行くことになっている」

「………」

「違う!上官も一緒だ!仕事の延長だ!」

「容貌を教えてください」

「髪はホワイトブロンドで触れた時に柔らかく艶やかだった。
瞳は大きく澄んだ泉の様な青。小さな鼻とぷっくりとした唇。肌は白く滑らかだ。

可愛いという顔に反して体は芸術品の…」

「レヴィン様!」

「な、なんだ」

「体のことは聞いておりません。
美しくも可愛くもある美少女と言うことですね?怪我をさせたご令嬢は」

「抉るな」

「いくつか届けさせますので明日の夜にその中からお選びください」

「テレサが選んでくれ」

「それではお詫びとは言えません」

「すまない」

「意外ですね」

「何が」

「もっと器用な方だと思っておりました」

「どう言う意味だ?」

「すぐに分かると思いますよ。
では、準備がありますので失礼いたします」



翌日、仕事から帰るとメイド長に呼ばれた。
テーブルの上には宝石の付いた置物、宝石の付いたペン、宝石の付いた髪留め、宝石の付いた小物入れがそれぞれ3種並べてあった。

「この中からお選びください」

昨日からネックレスやイヤリングを付けたアネットを想像していたので拍子抜けしてしまった。

「ネックレスやイヤリングは?」

「それは恋人か婚約者に贈るものです」

それでも身に付けるものをと思い髪留めを手に取った。

「青い宝石ばかりだな。紫はないのか」

「それは恋人か婚約者に贈るものです」

「そうか。じゃあ、これにしよう」

「かしこまりました。お包みして他は店に返します」

「助かった。ありがとう」

「………」












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