【完結】ずっと好きだった

ユユ

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求婚

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「無理しなくていいんだぞ」

「大丈夫です。ゆっくり休みましたから」

復帰して鎧を磨いているとヒューゼル隊長が声をかけてくれた。

「最近お忙しそうですね」

「ちょっと私用でな。
じゃあ、少しでも具合が悪くなったら早く帰るんだぞ」

「はい」

熱4日とステファニーの懇願3日も休んだので十分元気だ。

「アネット」

今度はバトラーズ副隊長がやってきた。

「明日のデートは11時に迎えに行く。
護衛付きになるがいいかな」

「はい…デートじゃないですけど」

「迎えに行くから」

「お願いします」





そして翌日。

「バトラーズ公爵令息。態々ありがとうございます」

「姫君をお迎えに上がるのは当然のことです。午後一番に父が参りますのでよろしくお願いします」

「何のお話かちょっと怖いですけど」

「怖くありませんよ」

「ごきげんよう、レヴィン様」

「ごきげんよう。素敵なドレスだね。よく似合う」

「何か最初の頃と感じが違いません?
前は肩に腕を回して酔っ払いみたいに絡んでいましたよね」

「おかしいことを言うね。
あれは部下としての扱いで、今はデート相手の扱いだ」

「デートじゃ無いって言ってるじゃないですか」

「私は言ってない」

「どうしよう」

「アネット!早く行きなさい。護衛の方々もお待たせしているのよ」

「は~い」





馬車に乗り30分程走ると王都の外れに隠れ屋敷のような建物があった。

中に入るとレストランになっていた。
2階の個室を案内された。

「アネット、その窓を開いて下を覗いてごらん」

「あ!池になってる!お魚も見えますよ」

「さあ、メニューを見て」

「……まさかこのメニューの魚は下の池の子達じゃ」

「違うよ。魚は海のものだからね」

「じゃあ、これにします」

「分かった」

出てきたお料理はとてもおいしかったし、盛り付けも芸術的だった。

魚も臭みが少ない。デザートも美味しかった。

食後のお茶を飲んでいると。

「アネット。
謝らなければならない。
君が水をかけられて熱を出したのは私のせいだ。すまなかった」

「レヴィン様が水をかけたのですか!?」

「違う。私の元婚約者が君に嫉妬して王宮メイドを抱き込んで水をかけさせた」

「元婚約者」

「そう。今は元だ」

「何で私なんですか。上官と部下なだけなのに」

「それは私の気持ちを元婚約者が知ってしまったからだ」

「気持ちですか」

「アネット。私は君が好きだ。
最初のやり取りから徐々に惹かれていったみたいだ。最近になってやっと君への気持ちに気が付いた。

結婚を前提にして私の恋人になって欲しい」

「急に…

レヴィン様は職場の上官じゃないですか」

「規則で禁止されていない。職場内結婚も時々ある」

「恋人って、私は上官としてしか見ていません」

「これから見てくれたらいい。試用期間と同じだ。それにバルギル公爵から手紙が届いたと聞いている。そろそろ入国するだろう」

「っ!」

「私が守る」

「私には分かりません」

「政略結婚ならいいのか?」

「父が認めたらそうなります」

「伯爵が許可すればアネットも頷いてくれるね?」

「はい」

「よし、では図案を見に行こう」





***** 一方 伯爵邸では *****

「お時間をいただき感謝します。
まず先に報告とお詫びがあります。
内容が酷いのでアネット嬢には今頃、水をかけられた事だけをお話ししてお詫びしているはずです」

そう切り出したバトラーズ公爵は事件の一部始終を話した。

「では、首謀者、協力者、実行犯は既に処刑されたのですね」

「はい」

「警備を非常時並みにしてくれとはそのことだったのですね」

「申し訳ありません」

「分かりました。逆恨みですから、それ以上は謝らないでください」

「もうひとつ、長男のレヴィンは20歳です。職は近衛騎士団の第一の副隊長です。
こちらは釣書です」

「求婚ということですか」

「はい」

「では逆恨みとは言い切れないと?」

「逆恨みです。息子はどうも恋をしたことが無かったのでアネット嬢に惹かれていると気が付かなかったようです。

アネット嬢の内面を知るたびに思いが募って最近ようやく好きだと自覚しました。

きっかけのパーティは、私と亡くなった妻の妹がアネット嬢を気に入り、招待しただけなのです。

レヴィンには婚約者がいたので弟のウォルトにエスコートさせました。ひとつ歳下ですが賢く顔も可愛いのでアネット嬢と仲良くなれるのではないかと。

ですが婚約者はアネット嬢に目をつけてしまったのです。

私達は是非、素晴らしいアネット嬢をバトラーズ家に迎え入れたい」

「アネットは公爵夫人が務まるような子ではありませんよ」

「だとしたらバトラーズが支えてカバーすればいいことですし、私達はアネット嬢の内面に惚れたのです。

どうか好きなだけ調査を入れてください」

「ご子息と話しても構いませんか」

「今日にでも是非。
バルギル公爵令息の件もありますから、許していただけるなら婚約者として盾となります」

「分かりました。アネットの気持ちも聞いてみましょう」

「よろしくお願いします」
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