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兄に振られるミーシェ
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休日、ライアンとミーシェは街に買い物に来ていた。
「ドレスは本人が選びたいと思うんだけど」
「どうかな」
「彼女に選ばせたら?好みがあるでしょう」
「ん~、遠慮するから駄目だ。似合う似合わない、好き嫌いなど考えず、一番安く済むドレスを選ぶはずだ。
だからミーシェに頼んでるんだ」
「もしかして茶色の髪と瞳の子?」
「そうだな」
「お金かけてもいい?」
「しっかりかけてくれ」
「お義姉様になるのかぁ」
「さあ。卒業パーティのパートナーしか確定していない」
「ライアンの色にしたいとか言わないよね?」
「今回はな。婚約でもすれば別だが」
「ねえ、ライアンは私とエヴァンをくっつけたいの?」
「エヴァンはお前を愛してる。それに一途だ。7年、見返りのない片思いをしている。
いい奴だと思うよ。
だからこの2年以上、エヴァンの短所を指摘して矯正してきたつもりだった。
だが卒業パーティーのパートナーに誘うときのエヴァンにはがっかりした。
私の一番大事なものはミーシェ。ミーシェを含むサルト家だ。そう思うとエヴァンはお前を預けるには力不足だ。
つまり、どちらかと言えば反対だ。
その反面、エスを失ったお前をあいつなりに支えたと思う。好きな女が、別の男に心を寄せて泣いている姿を見るのは辛かったはずだ。だけど一歩下がり見守った。
学園では、目の前にいるお前に直接話しかけることもせず、“ライアンの妹”としての扱いを徹底しながら過度な嫌がらせに対して周囲に悟られないよう助けた。
そこは評価していいんじゃないか?
エスへの気持ちを抱えたミーシェを受け入れてくれる男に今後巡り会えるか?
独身を貫く手もあるだろう。私はそれは向いていないと思うがな。
多分、今の国王陛下からシオン殿下に代替わりをして、次はエヴァンではなくエヴァンの息子が国王になる可能性がある。
エヴァンが国王になる可能性もある。
エヴァンの妻になれば王子妃になり、王妃になる可能性がある。その覚悟が必要だ。
何も孤高の王妃を目指せと言っていない。
有能な人材を置いて仕事を振ればいい。
だが公務があり表に出るし世継ぎ問題があって場合によっては別の令嬢も娶ることになる。その覚悟だ。
ミーシェの最優先は何か、二番目、三番目の優先は?自分が何を求めているのか、よく考えるんだ。
エヴァンは卒業したら直ぐに婚約者を決めなくてはならない。ミーシェがノーと言えば、直ぐ他の女と婚約することになる。王族の義務だから避けられない。
あまり時間がない。
王族との離縁も出来るが簡単ではない。
慎重に早めに結論を出した方がいい」
「ライアン」
「ん?」
「難しすぎる」
「だな。ごめんな。これにしろと言ってあげられたら楽だったか?」
「ライアンと離れたくない」
「私もミーシェと離れたくない。
私達以上の繋がりは他の人では得られないからな。
会う頻度が少なくなっても唯一無二だ」
「双子だもんね。
それで、何処に惚れたの?」
「穢れが無かった。そう感じたんだ。
変な欲や悪意が感じられなかった。
ただの勘だった。だけど関わったら勘は当たっていたと信じられた。
この気持ちは愛ではない。
だけどサルト家に迎えていいと思えた。
ミーシェにも害にならないと」
「好きな人が出来るまで待てば?」
「現れなかったときに困る」
「そっか」
「ところで、私達の見張っていた奴等はどうだ?」
「あまり近寄らないよね。私に影がついている、もしくはついているかもと知っているのね」
「私達の存在を知っているから調査を入れたはずだ。あとは何をしたいかだな。
執着が解けていないようだから母上達を困らせないか心配だ」
「こっちから仕掛けるという手もあるけど」
「養子が接触してこないから波風を立てる可能性のあることは避けたい」
「お待たせいたしました。どうぞお入りください。
ドレスはお嬢様のドレスでしょうか」
「いえ、別の女性です。卒業パーティ用に贈ります。サイズはこちらです。
髪と瞳の色は茶色。容姿は平凡です」
「そ、そうですか。拝見いたします」
「(ちょっと、もっと違う言い回しはないの?デザイナーさんが引いちゃってるじゃない)」
「(遠回しに言って伝わらない方がマズイだろう。仕上がりに響く)」
「(そうだけど)」
「その女性のパートナーは私です。
ドレスに着せられているという浮いた感じにならず、品よく豪華にしてもらいたいのです」
「サルト様、“平凡”の度合いがわかりませんと何とも。お連れいただくことは可能でしょうか」
「来させますが、決定権を持たせたくないのです。遠慮して安いドレスを希望しそうなので」
「そうですか、では布地合わせをして色味や素材との相性の確認だけします。
後は誤魔化しますのでお任せください」
「お願いします。
できれば領地で着させる動きやすいドレスやワンピースも内緒で作ってもらえますか」
「どんな雰囲気にいたしましょう」
「シンプルで品がよく、可愛らしい感じがいいです。動きやすさや着やすさも大事です。半分は自分で着られるものにして、半分はあまり補助のいらない作りがいいですね。
パーティドレスもそうですが細さを求めませんので絞って着るようなものにはしないでください」
「かしこまりました。
追加の分は何着必要ですか」
「10着にしてください。パーティドレスを合わせて11着です」
「まあ!ありがとうございます!
精魂込めて作らせていただきますわ」
デザイナーが席を外すとミーシェが呆れ顔で呟いた。
「何が“愛かどうかはまだ分からない”よ。
愛情たっぷりじゃないの」
「……そうか?」
「そうよ。
気を付けないと妬まれて、“貴方には相応しくありません”とか、“恐れ多いです”とか言い出すかもよ」
「エヴァンじゃあるまいし」
「ライアンも彼女にとったら王子様よ。
私が妹じゃなかったらライアンと結婚したいもの」
「それは光栄だが、難しいな」
「酷い!」
「ミーシェは美し過ぎるし可愛いし、頭もいいし短剣も扱える。心配でたまらないから兄妹で頼む」
「何で振られるの!そこは“私もだよ”というところじゃないの!」
「怒った顔も可愛いから手に負えない」
「でも遠慮するんでしょ?」
「ハハッ」
そして店を出ると待ち構えていたのは。
「ライアン、ミーシェ!会いたかった」
「サックス侯爵」
「ドレスは本人が選びたいと思うんだけど」
「どうかな」
「彼女に選ばせたら?好みがあるでしょう」
「ん~、遠慮するから駄目だ。似合う似合わない、好き嫌いなど考えず、一番安く済むドレスを選ぶはずだ。
だからミーシェに頼んでるんだ」
「もしかして茶色の髪と瞳の子?」
「そうだな」
「お金かけてもいい?」
「しっかりかけてくれ」
「お義姉様になるのかぁ」
「さあ。卒業パーティのパートナーしか確定していない」
「ライアンの色にしたいとか言わないよね?」
「今回はな。婚約でもすれば別だが」
「ねえ、ライアンは私とエヴァンをくっつけたいの?」
「エヴァンはお前を愛してる。それに一途だ。7年、見返りのない片思いをしている。
いい奴だと思うよ。
だからこの2年以上、エヴァンの短所を指摘して矯正してきたつもりだった。
だが卒業パーティーのパートナーに誘うときのエヴァンにはがっかりした。
私の一番大事なものはミーシェ。ミーシェを含むサルト家だ。そう思うとエヴァンはお前を預けるには力不足だ。
つまり、どちらかと言えば反対だ。
その反面、エスを失ったお前をあいつなりに支えたと思う。好きな女が、別の男に心を寄せて泣いている姿を見るのは辛かったはずだ。だけど一歩下がり見守った。
学園では、目の前にいるお前に直接話しかけることもせず、“ライアンの妹”としての扱いを徹底しながら過度な嫌がらせに対して周囲に悟られないよう助けた。
そこは評価していいんじゃないか?
エスへの気持ちを抱えたミーシェを受け入れてくれる男に今後巡り会えるか?
独身を貫く手もあるだろう。私はそれは向いていないと思うがな。
多分、今の国王陛下からシオン殿下に代替わりをして、次はエヴァンではなくエヴァンの息子が国王になる可能性がある。
エヴァンが国王になる可能性もある。
エヴァンの妻になれば王子妃になり、王妃になる可能性がある。その覚悟が必要だ。
何も孤高の王妃を目指せと言っていない。
有能な人材を置いて仕事を振ればいい。
だが公務があり表に出るし世継ぎ問題があって場合によっては別の令嬢も娶ることになる。その覚悟だ。
ミーシェの最優先は何か、二番目、三番目の優先は?自分が何を求めているのか、よく考えるんだ。
エヴァンは卒業したら直ぐに婚約者を決めなくてはならない。ミーシェがノーと言えば、直ぐ他の女と婚約することになる。王族の義務だから避けられない。
あまり時間がない。
王族との離縁も出来るが簡単ではない。
慎重に早めに結論を出した方がいい」
「ライアン」
「ん?」
「難しすぎる」
「だな。ごめんな。これにしろと言ってあげられたら楽だったか?」
「ライアンと離れたくない」
「私もミーシェと離れたくない。
私達以上の繋がりは他の人では得られないからな。
会う頻度が少なくなっても唯一無二だ」
「双子だもんね。
それで、何処に惚れたの?」
「穢れが無かった。そう感じたんだ。
変な欲や悪意が感じられなかった。
ただの勘だった。だけど関わったら勘は当たっていたと信じられた。
この気持ちは愛ではない。
だけどサルト家に迎えていいと思えた。
ミーシェにも害にならないと」
「好きな人が出来るまで待てば?」
「現れなかったときに困る」
「そっか」
「ところで、私達の見張っていた奴等はどうだ?」
「あまり近寄らないよね。私に影がついている、もしくはついているかもと知っているのね」
「私達の存在を知っているから調査を入れたはずだ。あとは何をしたいかだな。
執着が解けていないようだから母上達を困らせないか心配だ」
「こっちから仕掛けるという手もあるけど」
「養子が接触してこないから波風を立てる可能性のあることは避けたい」
「お待たせいたしました。どうぞお入りください。
ドレスはお嬢様のドレスでしょうか」
「いえ、別の女性です。卒業パーティ用に贈ります。サイズはこちらです。
髪と瞳の色は茶色。容姿は平凡です」
「そ、そうですか。拝見いたします」
「(ちょっと、もっと違う言い回しはないの?デザイナーさんが引いちゃってるじゃない)」
「(遠回しに言って伝わらない方がマズイだろう。仕上がりに響く)」
「(そうだけど)」
「その女性のパートナーは私です。
ドレスに着せられているという浮いた感じにならず、品よく豪華にしてもらいたいのです」
「サルト様、“平凡”の度合いがわかりませんと何とも。お連れいただくことは可能でしょうか」
「来させますが、決定権を持たせたくないのです。遠慮して安いドレスを希望しそうなので」
「そうですか、では布地合わせをして色味や素材との相性の確認だけします。
後は誤魔化しますのでお任せください」
「お願いします。
できれば領地で着させる動きやすいドレスやワンピースも内緒で作ってもらえますか」
「どんな雰囲気にいたしましょう」
「シンプルで品がよく、可愛らしい感じがいいです。動きやすさや着やすさも大事です。半分は自分で着られるものにして、半分はあまり補助のいらない作りがいいですね。
パーティドレスもそうですが細さを求めませんので絞って着るようなものにはしないでください」
「かしこまりました。
追加の分は何着必要ですか」
「10着にしてください。パーティドレスを合わせて11着です」
「まあ!ありがとうございます!
精魂込めて作らせていただきますわ」
デザイナーが席を外すとミーシェが呆れ顔で呟いた。
「何が“愛かどうかはまだ分からない”よ。
愛情たっぷりじゃないの」
「……そうか?」
「そうよ。
気を付けないと妬まれて、“貴方には相応しくありません”とか、“恐れ多いです”とか言い出すかもよ」
「エヴァンじゃあるまいし」
「ライアンも彼女にとったら王子様よ。
私が妹じゃなかったらライアンと結婚したいもの」
「それは光栄だが、難しいな」
「酷い!」
「ミーシェは美し過ぎるし可愛いし、頭もいいし短剣も扱える。心配でたまらないから兄妹で頼む」
「何で振られるの!そこは“私もだよ”というところじゃないの!」
「怒った顔も可愛いから手に負えない」
「でも遠慮するんでしょ?」
「ハハッ」
そして店を出ると待ち構えていたのは。
「ライアン、ミーシェ!会いたかった」
「サックス侯爵」
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