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セーレン 第二王子ナイジェル(まともではない妹)
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【 ナイジェルの視点 】
温和な兄、病弱な弟に挟まれた私の責務は重大だと思っている。
国王でいる父上は温和ではあるが勘のいい人だった。
だが正妃を亡くした悲しみと、忘形見への父性愛から愚かな王へと傾いてしまった。
サンドラはすっかり平民からも貴族からも嫌われてしまった。
クビにしたり怪我をさせたりする使用人は平民も貴族の子息子女もいる。
貴族として現れても気に入らなければ攻撃した。
悪いなどと思っていない。
令嬢のドレスに火を付けた時は事故だと言い張り、メイドを目撃者に仕立て証言させた。
一目惚れをした令息を手に入れようと、婚約者の令嬢を複数人の男に襲わせた。犯し尽くされた令嬢は首を吊って発見された。
目撃者によって実行犯の一人が判明し、尋問したが記憶が曖昧のようだった。
ただ、目撃者はサンドラも直前に部屋にいたと証言した。
国王に報告しても、サンドラを一週間の謹慎にしただけで、表向きは男達だけの仕業として直ぐに処刑した。
令嬢の両親から抗議の声が上がったがもう証拠は無い。泣き寝入りさせることになった。
その後王命を使い婚約をしたが令息の心は得られなかった。
それどころか令息は別の令嬢を孕ませたようだ。
淡々と“令嬢を孕ませたので娶ります”と国王に報告する令息と、怒り狂うサンドラ。
『酷いわ!私のような高貴で美しい婚約者がいるのに浮気なんて!しかも王命なのよ!』
『セーレン王国の法律では伯爵家以上は妻を二人娶れます。つまり浮気とかそのような問題ではございません。
王命はサンドラ王女を妻とすること。何一つ破っておりません。丁重に扱い、婚姻の日が来るのを待つのみ。何か違法性がございますか?』
『私にはキスもしてくれないのに!』
『私が彼女を抱いて孕ませたのは、彼女が人の親となる準備ができていたからです。
はっきりと申し上げます。サンドラ王女はとても子を産み育てる状態にはございません。
気に入らねば平気で相手を傷付ける。
そんな母親を見ていたら子もそうなってしまいます。
そのような子がいれば我が侯爵家は没落してしまいます。
つまり、王命に従い婚姻したとしても、サンドラ王女が妻として母として相応しくなるまでは手を出しませんし孕ませません。
初夜だけは王命ですから手早く済ませましょう』
『パパ!こんなことを許すの!?』
『サンドラ、確かに王命の書は妻にしろとだけしか書かなかった。つまり入籍と初夜の責務はあっても他は夫次第。
婚前契約書も交わさずに婚約したからどうしようもない』
『もう一度王命を、』
『サンドラ、王命は一人に対し一度しか使えぬ。特に婚姻に関する王命を出した場合は家門に出したとみなされる。
つまりサンドラが変わって相応しいと思われるしかない』
その後、愚かにもサンドラは堕胎薬を飲ませようとした。メイドを買収していたのだ。
動向のおかしさから飲む前に捕まえることができ、芋蔓式にサンドラまで辿り着いた。
呼ばれて行くと国王、兄上、サンドラ、サンドラの婚約者、宰相がいた。
そして今回の堕胎薬を使った暗殺未遂に伴い、宰相の職を辞すると告げた。
『補佐をしている息子も手を引かせます。
サンドラ王女、貴女が殺そうとしたのは私の孫ですよ?』
『………』
『穢されて自害した令嬢も私の血縁の令嬢です』
『………』
『国王陛下、正気ですか?』
『すまなかった。王命を取り消して二度と関わらせないから辞めるのだけは考え直してくれないか』
『では、こちらに署名をお願いします』
『………ナイジェル、お前も読め』
今後、サンドラが宰相の縁戚に手を出したらサンドラを除籍して最も厳しい修道院へ最低限の寄付金で送り出すという誓約書だった。
国王に返して発言をしなかった。
サンドラの矛先が向いたら困るからだ。
『署名か辞任です』
催促されて国王は署名した。
『陛下、このままではあっという間に国は滅びます。友人としての忠告はこれで最後にいたします。では失礼いたします』
国王は大切な友人を失ったのだ。まあ元々失ってはいたのだろうが縁切り宣言までされたということだ。
セーレンから追い出したいという気持ちで調べもせずに発した言葉でエヴァン殿下がサンドラに目をつけられてしまった。
まさか妻も婚約者もいない年頃の王子が近隣にいるとは思わなかった。
いたとしても王族だとしても相手にされない王子ならサンドラも興味は示さないかと。
迷惑をかけ、あろうことか薬草を脅しに使って招致したエヴァン殿下はサンドラの好みにピッタリで、婚約者は今までの美女とは次元の違う美しさだった。
実情は候補らしいが、婚約者で決まりだろう。
王族と幼馴染で家族ぐるみの付き合いをしているというのに我等の前で見てわかるほど緊張している令嬢がとても可愛く思えた。
黙っていれば血の通っていない美術品のように美しい彼女は表情豊かで愛らしい。
男爵家出身なのに身についた身のこなしは妃レベルだ。
これらを合わせると王族の垣根を超えて家族のように過ごしてきたのだろう。だから彼女も王族としてみていないから他国の王族に免疫がない。
自然と身につく程に近くにいて大事に育てられた。
だが、サンドラのように傲慢でもなく我儘でも無い。
妃達もその姿に好感を得たようだ。
温和な兄、病弱な弟に挟まれた私の責務は重大だと思っている。
国王でいる父上は温和ではあるが勘のいい人だった。
だが正妃を亡くした悲しみと、忘形見への父性愛から愚かな王へと傾いてしまった。
サンドラはすっかり平民からも貴族からも嫌われてしまった。
クビにしたり怪我をさせたりする使用人は平民も貴族の子息子女もいる。
貴族として現れても気に入らなければ攻撃した。
悪いなどと思っていない。
令嬢のドレスに火を付けた時は事故だと言い張り、メイドを目撃者に仕立て証言させた。
一目惚れをした令息を手に入れようと、婚約者の令嬢を複数人の男に襲わせた。犯し尽くされた令嬢は首を吊って発見された。
目撃者によって実行犯の一人が判明し、尋問したが記憶が曖昧のようだった。
ただ、目撃者はサンドラも直前に部屋にいたと証言した。
国王に報告しても、サンドラを一週間の謹慎にしただけで、表向きは男達だけの仕業として直ぐに処刑した。
令嬢の両親から抗議の声が上がったがもう証拠は無い。泣き寝入りさせることになった。
その後王命を使い婚約をしたが令息の心は得られなかった。
それどころか令息は別の令嬢を孕ませたようだ。
淡々と“令嬢を孕ませたので娶ります”と国王に報告する令息と、怒り狂うサンドラ。
『酷いわ!私のような高貴で美しい婚約者がいるのに浮気なんて!しかも王命なのよ!』
『セーレン王国の法律では伯爵家以上は妻を二人娶れます。つまり浮気とかそのような問題ではございません。
王命はサンドラ王女を妻とすること。何一つ破っておりません。丁重に扱い、婚姻の日が来るのを待つのみ。何か違法性がございますか?』
『私にはキスもしてくれないのに!』
『私が彼女を抱いて孕ませたのは、彼女が人の親となる準備ができていたからです。
はっきりと申し上げます。サンドラ王女はとても子を産み育てる状態にはございません。
気に入らねば平気で相手を傷付ける。
そんな母親を見ていたら子もそうなってしまいます。
そのような子がいれば我が侯爵家は没落してしまいます。
つまり、王命に従い婚姻したとしても、サンドラ王女が妻として母として相応しくなるまでは手を出しませんし孕ませません。
初夜だけは王命ですから手早く済ませましょう』
『パパ!こんなことを許すの!?』
『サンドラ、確かに王命の書は妻にしろとだけしか書かなかった。つまり入籍と初夜の責務はあっても他は夫次第。
婚前契約書も交わさずに婚約したからどうしようもない』
『もう一度王命を、』
『サンドラ、王命は一人に対し一度しか使えぬ。特に婚姻に関する王命を出した場合は家門に出したとみなされる。
つまりサンドラが変わって相応しいと思われるしかない』
その後、愚かにもサンドラは堕胎薬を飲ませようとした。メイドを買収していたのだ。
動向のおかしさから飲む前に捕まえることができ、芋蔓式にサンドラまで辿り着いた。
呼ばれて行くと国王、兄上、サンドラ、サンドラの婚約者、宰相がいた。
そして今回の堕胎薬を使った暗殺未遂に伴い、宰相の職を辞すると告げた。
『補佐をしている息子も手を引かせます。
サンドラ王女、貴女が殺そうとしたのは私の孫ですよ?』
『………』
『穢されて自害した令嬢も私の血縁の令嬢です』
『………』
『国王陛下、正気ですか?』
『すまなかった。王命を取り消して二度と関わらせないから辞めるのだけは考え直してくれないか』
『では、こちらに署名をお願いします』
『………ナイジェル、お前も読め』
今後、サンドラが宰相の縁戚に手を出したらサンドラを除籍して最も厳しい修道院へ最低限の寄付金で送り出すという誓約書だった。
国王に返して発言をしなかった。
サンドラの矛先が向いたら困るからだ。
『署名か辞任です』
催促されて国王は署名した。
『陛下、このままではあっという間に国は滅びます。友人としての忠告はこれで最後にいたします。では失礼いたします』
国王は大切な友人を失ったのだ。まあ元々失ってはいたのだろうが縁切り宣言までされたということだ。
セーレンから追い出したいという気持ちで調べもせずに発した言葉でエヴァン殿下がサンドラに目をつけられてしまった。
まさか妻も婚約者もいない年頃の王子が近隣にいるとは思わなかった。
いたとしても王族だとしても相手にされない王子ならサンドラも興味は示さないかと。
迷惑をかけ、あろうことか薬草を脅しに使って招致したエヴァン殿下はサンドラの好みにピッタリで、婚約者は今までの美女とは次元の違う美しさだった。
実情は候補らしいが、婚約者で決まりだろう。
王族と幼馴染で家族ぐるみの付き合いをしているというのに我等の前で見てわかるほど緊張している令嬢がとても可愛く思えた。
黙っていれば血の通っていない美術品のように美しい彼女は表情豊かで愛らしい。
男爵家出身なのに身についた身のこなしは妃レベルだ。
これらを合わせると王族の垣根を超えて家族のように過ごしてきたのだろう。だから彼女も王族としてみていないから他国の王族に免疫がない。
自然と身につく程に近くにいて大事に育てられた。
だが、サンドラのように傲慢でもなく我儘でも無い。
妃達もその姿に好感を得たようだ。
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