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帝国 第四王子アクエリオン(双子の魅力)
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【 アクエリオンの視点 】
「改善しない場合、もう少し投薬が必要な場合はご連絡ください」
ローテーブルの上に帝国の王族だけが許される彫金の施されたペンダントを置いた。
「「 !!、第四王子殿下!」」
「アクエリオンと申します。
私は薬草や毒物を専門としております。
セーレンの荒れた状況は帝国まで届いておりました。
貴方が具合が悪いことも。
自浄できるのか、介入が必要なのか、吸収した方がいいのか注視していたのです。
そしてエヴァン殿下の連絡を受けて側近に称して同行しました」
「薬草の件ですね」
そういうとナイジェル殿下は溜息をついた。
「ええ。
あの薬草は従属国の助けとなるように渡したものです。従属国なので帝国のためということになります。
それを他の従属国への脅しに使われるなら薬草を引き上げるべきではという意見もありまして、そこも含めて調査に来ました。
マクセル王太子殿下が善良ゆえの温和で、ナイジェル殿下が支えるなら救いがあったのですが、今や分からなくなりました。
実はちょっとだけ要領がよく弟に丸投げしている無能ではないかと疑い始めました。
国王陛下と王女がしでかした後始末をすべき時に、現を抜かし悪化させようとしている。
二代続けて愚かな王を据えるつもりはありませんし、王女は国内にいても悪影響だし国外にいても毒にしかなりません。
そもそもジュリアス殿下は誰に毒を盛られているのか。
王子は三人とも国王陛下の色を継いでいてそこに問題はありません。
継承争いも望みの浅い第三王子に矛先が向くわけがないのです。
だとしたらジワジワ苦しませる方法をとるような不興をかったということです。
国王陛下なら僻地へ飛ばすでしょう。
この環境を作り様々な医師を呼び寄せたナイジェル殿下はあり得ません。
王太子殿下がやっていたらナイジェル殿下が気が付くのではと思うと、残るは王女です」
「確かに、誰も注意しないので兄として王族として注意をしていました」
「王女の反応は?」
「睨みつけて、その後は周りに当たり散らしていました」
「第一容疑者ですね。というか、今のところ唯一の容疑者と言えるかもしれませんね」
「サンドラが……」
「晩餐会で自白剤を混入させたらどうかしら」
「ミーシェ?」
「で、聞いちゃうの。“ジュリアス殿下に毒を盛るのはサンドラ王女の指示ですか?”って」
「一応王族だぞ」
「じゃあ、エヴァンが色仕掛けする?」
「ミーシェ!」
「罪悪感があるなら全員に盛ればどうかな。そうしたら皆被害者で通せますよ」
「それはダメだ。自白剤だと三人のうちの誰かが気付けば、“誰だ!自白剤を使ったのは!”と言われてミーシェ嬢が元気に手を挙げてしまう」
「アクエリオン殿下、酷いです」
「合ってるな」
「合ってる」
「ライアン、エヴァンまで……今日はアールの部屋で寝よう」
「ミーシェ!」
全員に自白剤を盛った晩餐会か……ククッ
この子は悪意がないし面白い。
飛び抜けて美しい母親が、飛び抜けて美しい子を産んだという話は帝国にも届いていた。
兄弟の酒の席でもその話になった。
『誰か娶れば?』
『男爵家ですよ?』
『愛人?』
『美しいだけでは飽きるだろう』
『飽きた時の始末が厄介ですね。男爵家とはいえ他国ですから』
『従属国じゃないですか』
『従属国だからこそだ』
『そんな美人で性格が良いわけありませんよ』
『俺、愛人なら閨上手がいいです』
『確かにな。妃達に出来ないことをしたり、奉仕されたいな』
『疲れて抜いて欲しい時に横になってるだけで女が口で搾り取ってくれて、そのまま眠れたら幸せですね』
『そういう時ありますね。妃達にはそれは求められませんからね』
数ヶ月前にそんな馬鹿な話をしていないで調べに来ればよかった。エヴァン殿下と関係を持ったのは最近だと聞いた。
しかもサンドラ対策で酔った勢いらしい。
無表情で黙っていると血の通わない人形のような感じなのに、生命を与えられた人形のように動き出すと目が離せない。
この純真な感じはライアンが守って来たおかげで悪意がないのはサルト家の環境だろう。
美しい所作なのにどこか抜けていて、ミーシェ嬢の容姿に警戒をしていた妃達も思わぬミーシェの姿に絆されてしまう。
そして今も。
「ミーシェちゃん、何を着ても似合うわ」
「怪我をしてはダメよ」
本格的にナイフ投げなどを見せて欲しいという妃達の要望と、自分も見たいというジュリアス殿下に応えて午後はジュリアス殿下の宮で披露をすることになった。
ナイジェルの子供の頃の服をミーシェ嬢が借りて来ている。
「エヴァン、これ持ってあの木のところに立って」
ミーシェ嬢、王族に果物を持たせて的にするなんて……
「エヴァン!動かないでね!」
エヴァン殿下が空いている方の手を挙げる。
トン
エヴァンが離れると果物が宙に浮いた。
短剣で貫き木に刺さったのだ。
「お見事」
「凄いわ、ミーシェちゃん」
「貴方が男なら言い寄ったわね」
「では次は私が。ライアン」
ミーシェは胡桃大の葡萄の一種を一粒持ってエヴァン殿下の立った木の前に立ち頭に乗せた。
いくらなんでも……
「ミーシェ、当たったら果汁を浴びるから掌に乗せろ!」
「は~い」
「いくぞ!」
トン
ミーシェが離れる。
遠くてよく見えない。
近寄ると間違いなく刺さっていた。
剣を抜いて戻って妃達に見せた。
「本当に刺さってるわ」
「信じられないわ」
「ミーシェもできますが、もしもが怖くてこのサイズはやりたがりません」
「ミーシェ嬢は剣術もやれるのだろう?」
「力で劣りますから無理です」
「力は入れない。勝負でなくて技量を見たいんだ」
「………」
「ミーシェ、ちょっとだけやってみろ」
「分かりました」
ミーシェは手袋を借りて模造剣を握った。
私も模造剣を握った。
ライアンが開始の合図をするとミーシェが先にどうぞと言うので、軽く剣に当てた。
表情を変えずに受けているミーシェを見て大丈夫だと悟ったので剣ではなく体に向けて剣を向けた。
カン カン カン カン
どれも簡単に受けている。
「早めるぞ」
「はい」
カン カン カン カン
徐々に早めていくが、ついてきている。
「そろそろ攻撃してくれ。本気でいい」
「………はい」
カン!
早い!
カン カン カン カン!
何だこの規則性の無い剣筋はっ!
ビュンッ
「クッ」
カン カン カン カン!
駄目だ!ヤられる!
「そこまで!」
ライアン殿の止める声に安堵した。
「久しぶりで手が痛い」
「妃殿下達の所へ行って休んでおいで」
「アクエリオン殿下、失礼します」
「ああ……」
ミーシェ嬢が離れるとライアンは小声で話しかけてきた。
「アクエリオン殿下、すみません。私達の剣は普通じゃありませんので、初めての方には辛かったかもしれません」
「どう習ったらああなるんだ」
「剣の師匠が王家の影なのです」
「はぁ~」
「申し訳ございません」
「いや、止めてくれて助かった」
きっと、暗殺者が師匠なのだろう。短剣の投げ技もだな。
「ひと休みしましょう」
「そうだな」
これでは最初からミーシェが本気で掛かってきていたらすぐ負けただろう。
帝国でも私は上位に入る剣の腕を持つ。
その私が令嬢に負けたのか……。
ミーシェはライアンの方が短剣も長剣も上だと言っていたな。
教える側はそれ以上だろう。となると彼らの国の戦力の認識を変えなければならない。
「素敵だわ!ミーシェちゃん、怪我はない?」
「ちょっと手がジンジンします」
「まあ!」
妃達の目線が刺さる……。
「アクエリオン殿下はかなり手加減してくださいました。私は筋肉も付けていませんし手の皮が厚くなるほどやりませんでしたので、ひ弱なのです」
少し休憩するとミーシェが弓を持って来させた。
「ライアン、お願い」
「分かった」
「カーラ王太子妃殿下、ピア妃殿下、ライアンは凄いんです!
私とエヴァンが紐を張り、そのまま下ろすと直線が出来上がります。
その中央付近に護衛騎士を立たせます。その背後の木の前に立ち私がりんごを頭に乗せます。そして直線上からライアンが弓を引きます」
「えっ?直線上に騎士がいたら騎士に刺さるわ」
「上に向けて射るのかしら」
「違います。放たれた矢が中間の騎士を避けます」
軌道を曲げるのか!?
「では準備しますね」
そう言ってリンゴと紐の片側の端を持って木の側に入って行った。
エヴァン殿下が片方を持ち、ピンと張る。
確かに一直線だ。
そして中間に護衛騎士が立った。
エヴァン殿下が退くとライアンが立った。騎士の後ろのミーシェ嬢を一目確認するように覗くと体勢を整えて弓を構えた。
「ミーシェ!動くなよ!」
シュッ トン!
護衛騎士が退き、ミーシェが木から離れるとリンゴごと矢が木に刺さっていた。
護衛騎士が矢を抜きに行き、三人が戻ってきた。
「素敵ですわ!ライアン様」
「初めて拝見しましたわ」
これを教えた者がいるということはこの技を複数人が使えるのだな。
ライアンが望めば私は簡単に殺される。
「何でだろうな。剣も弓もこんなに鍛錬しているくせに入学前に勉強も終えてるなんて。
神様も二物どころか数物を一人に与えるなら一つくらい私にくれてもいいのに」
「エヴァン殿下は本気を出すのが遅過ぎなんですよ」
「ミーシェ嬢も?」
「エヴァンよりは」
「ミーシェ…私はミーシェのことに集中して生きてきたんだ」
「遠くから?」
「そうだ。いつもサルト領に向かって話しかけていたぞ」
「それ、ヤバいやつじゃ……」
「せめて愛が重いと言ってくれ」
「改善しない場合、もう少し投薬が必要な場合はご連絡ください」
ローテーブルの上に帝国の王族だけが許される彫金の施されたペンダントを置いた。
「「 !!、第四王子殿下!」」
「アクエリオンと申します。
私は薬草や毒物を専門としております。
セーレンの荒れた状況は帝国まで届いておりました。
貴方が具合が悪いことも。
自浄できるのか、介入が必要なのか、吸収した方がいいのか注視していたのです。
そしてエヴァン殿下の連絡を受けて側近に称して同行しました」
「薬草の件ですね」
そういうとナイジェル殿下は溜息をついた。
「ええ。
あの薬草は従属国の助けとなるように渡したものです。従属国なので帝国のためということになります。
それを他の従属国への脅しに使われるなら薬草を引き上げるべきではという意見もありまして、そこも含めて調査に来ました。
マクセル王太子殿下が善良ゆえの温和で、ナイジェル殿下が支えるなら救いがあったのですが、今や分からなくなりました。
実はちょっとだけ要領がよく弟に丸投げしている無能ではないかと疑い始めました。
国王陛下と王女がしでかした後始末をすべき時に、現を抜かし悪化させようとしている。
二代続けて愚かな王を据えるつもりはありませんし、王女は国内にいても悪影響だし国外にいても毒にしかなりません。
そもそもジュリアス殿下は誰に毒を盛られているのか。
王子は三人とも国王陛下の色を継いでいてそこに問題はありません。
継承争いも望みの浅い第三王子に矛先が向くわけがないのです。
だとしたらジワジワ苦しませる方法をとるような不興をかったということです。
国王陛下なら僻地へ飛ばすでしょう。
この環境を作り様々な医師を呼び寄せたナイジェル殿下はあり得ません。
王太子殿下がやっていたらナイジェル殿下が気が付くのではと思うと、残るは王女です」
「確かに、誰も注意しないので兄として王族として注意をしていました」
「王女の反応は?」
「睨みつけて、その後は周りに当たり散らしていました」
「第一容疑者ですね。というか、今のところ唯一の容疑者と言えるかもしれませんね」
「サンドラが……」
「晩餐会で自白剤を混入させたらどうかしら」
「ミーシェ?」
「で、聞いちゃうの。“ジュリアス殿下に毒を盛るのはサンドラ王女の指示ですか?”って」
「一応王族だぞ」
「じゃあ、エヴァンが色仕掛けする?」
「ミーシェ!」
「罪悪感があるなら全員に盛ればどうかな。そうしたら皆被害者で通せますよ」
「それはダメだ。自白剤だと三人のうちの誰かが気付けば、“誰だ!自白剤を使ったのは!”と言われてミーシェ嬢が元気に手を挙げてしまう」
「アクエリオン殿下、酷いです」
「合ってるな」
「合ってる」
「ライアン、エヴァンまで……今日はアールの部屋で寝よう」
「ミーシェ!」
全員に自白剤を盛った晩餐会か……ククッ
この子は悪意がないし面白い。
飛び抜けて美しい母親が、飛び抜けて美しい子を産んだという話は帝国にも届いていた。
兄弟の酒の席でもその話になった。
『誰か娶れば?』
『男爵家ですよ?』
『愛人?』
『美しいだけでは飽きるだろう』
『飽きた時の始末が厄介ですね。男爵家とはいえ他国ですから』
『従属国じゃないですか』
『従属国だからこそだ』
『そんな美人で性格が良いわけありませんよ』
『俺、愛人なら閨上手がいいです』
『確かにな。妃達に出来ないことをしたり、奉仕されたいな』
『疲れて抜いて欲しい時に横になってるだけで女が口で搾り取ってくれて、そのまま眠れたら幸せですね』
『そういう時ありますね。妃達にはそれは求められませんからね』
数ヶ月前にそんな馬鹿な話をしていないで調べに来ればよかった。エヴァン殿下と関係を持ったのは最近だと聞いた。
しかもサンドラ対策で酔った勢いらしい。
無表情で黙っていると血の通わない人形のような感じなのに、生命を与えられた人形のように動き出すと目が離せない。
この純真な感じはライアンが守って来たおかげで悪意がないのはサルト家の環境だろう。
美しい所作なのにどこか抜けていて、ミーシェ嬢の容姿に警戒をしていた妃達も思わぬミーシェの姿に絆されてしまう。
そして今も。
「ミーシェちゃん、何を着ても似合うわ」
「怪我をしてはダメよ」
本格的にナイフ投げなどを見せて欲しいという妃達の要望と、自分も見たいというジュリアス殿下に応えて午後はジュリアス殿下の宮で披露をすることになった。
ナイジェルの子供の頃の服をミーシェ嬢が借りて来ている。
「エヴァン、これ持ってあの木のところに立って」
ミーシェ嬢、王族に果物を持たせて的にするなんて……
「エヴァン!動かないでね!」
エヴァン殿下が空いている方の手を挙げる。
トン
エヴァンが離れると果物が宙に浮いた。
短剣で貫き木に刺さったのだ。
「お見事」
「凄いわ、ミーシェちゃん」
「貴方が男なら言い寄ったわね」
「では次は私が。ライアン」
ミーシェは胡桃大の葡萄の一種を一粒持ってエヴァン殿下の立った木の前に立ち頭に乗せた。
いくらなんでも……
「ミーシェ、当たったら果汁を浴びるから掌に乗せろ!」
「は~い」
「いくぞ!」
トン
ミーシェが離れる。
遠くてよく見えない。
近寄ると間違いなく刺さっていた。
剣を抜いて戻って妃達に見せた。
「本当に刺さってるわ」
「信じられないわ」
「ミーシェもできますが、もしもが怖くてこのサイズはやりたがりません」
「ミーシェ嬢は剣術もやれるのだろう?」
「力で劣りますから無理です」
「力は入れない。勝負でなくて技量を見たいんだ」
「………」
「ミーシェ、ちょっとだけやってみろ」
「分かりました」
ミーシェは手袋を借りて模造剣を握った。
私も模造剣を握った。
ライアンが開始の合図をするとミーシェが先にどうぞと言うので、軽く剣に当てた。
表情を変えずに受けているミーシェを見て大丈夫だと悟ったので剣ではなく体に向けて剣を向けた。
カン カン カン カン
どれも簡単に受けている。
「早めるぞ」
「はい」
カン カン カン カン
徐々に早めていくが、ついてきている。
「そろそろ攻撃してくれ。本気でいい」
「………はい」
カン!
早い!
カン カン カン カン!
何だこの規則性の無い剣筋はっ!
ビュンッ
「クッ」
カン カン カン カン!
駄目だ!ヤられる!
「そこまで!」
ライアン殿の止める声に安堵した。
「久しぶりで手が痛い」
「妃殿下達の所へ行って休んでおいで」
「アクエリオン殿下、失礼します」
「ああ……」
ミーシェ嬢が離れるとライアンは小声で話しかけてきた。
「アクエリオン殿下、すみません。私達の剣は普通じゃありませんので、初めての方には辛かったかもしれません」
「どう習ったらああなるんだ」
「剣の師匠が王家の影なのです」
「はぁ~」
「申し訳ございません」
「いや、止めてくれて助かった」
きっと、暗殺者が師匠なのだろう。短剣の投げ技もだな。
「ひと休みしましょう」
「そうだな」
これでは最初からミーシェが本気で掛かってきていたらすぐ負けただろう。
帝国でも私は上位に入る剣の腕を持つ。
その私が令嬢に負けたのか……。
ミーシェはライアンの方が短剣も長剣も上だと言っていたな。
教える側はそれ以上だろう。となると彼らの国の戦力の認識を変えなければならない。
「素敵だわ!ミーシェちゃん、怪我はない?」
「ちょっと手がジンジンします」
「まあ!」
妃達の目線が刺さる……。
「アクエリオン殿下はかなり手加減してくださいました。私は筋肉も付けていませんし手の皮が厚くなるほどやりませんでしたので、ひ弱なのです」
少し休憩するとミーシェが弓を持って来させた。
「ライアン、お願い」
「分かった」
「カーラ王太子妃殿下、ピア妃殿下、ライアンは凄いんです!
私とエヴァンが紐を張り、そのまま下ろすと直線が出来上がります。
その中央付近に護衛騎士を立たせます。その背後の木の前に立ち私がりんごを頭に乗せます。そして直線上からライアンが弓を引きます」
「えっ?直線上に騎士がいたら騎士に刺さるわ」
「上に向けて射るのかしら」
「違います。放たれた矢が中間の騎士を避けます」
軌道を曲げるのか!?
「では準備しますね」
そう言ってリンゴと紐の片側の端を持って木の側に入って行った。
エヴァン殿下が片方を持ち、ピンと張る。
確かに一直線だ。
そして中間に護衛騎士が立った。
エヴァン殿下が退くとライアンが立った。騎士の後ろのミーシェ嬢を一目確認するように覗くと体勢を整えて弓を構えた。
「ミーシェ!動くなよ!」
シュッ トン!
護衛騎士が退き、ミーシェが木から離れるとリンゴごと矢が木に刺さっていた。
護衛騎士が矢を抜きに行き、三人が戻ってきた。
「素敵ですわ!ライアン様」
「初めて拝見しましたわ」
これを教えた者がいるということはこの技を複数人が使えるのだな。
ライアンが望めば私は簡単に殺される。
「何でだろうな。剣も弓もこんなに鍛錬しているくせに入学前に勉強も終えてるなんて。
神様も二物どころか数物を一人に与えるなら一つくらい私にくれてもいいのに」
「エヴァン殿下は本気を出すのが遅過ぎなんですよ」
「ミーシェ嬢も?」
「エヴァンよりは」
「ミーシェ…私はミーシェのことに集中して生きてきたんだ」
「遠くから?」
「そうだ。いつもサルト領に向かって話しかけていたぞ」
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