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顔合わせ
しおりを挟む「帝国の王太子殿下、王子殿下にご挨拶申し上げます。
サックス侯爵家の長女、ミーシェと申します。
お目にかかれて光栄に存じます」
「ミーシェの兄で、サルト男爵家の嫡男、ライアンと申します」
「私はレオン。彼は第二王子のガブリエル。アクエリオンは知ってるね」
「はい、ご無沙汰しております、アクエリオン殿下」
「エヴァン殿下、ライアン、ミーシェ嬢、先日はありがとうございました」
「彼はメディ・バランディ。帝国騎士団の副団長だ」
「お目にかかれて光栄です」
国「では、掛けてくれ。座って話をしよう」
レ「エヴァン殿下は17歳になるのだな?
ライアン殿とミーシェ嬢も17歳なのだな」
エ「ライアンとミーシェは一つ上です」
国「私が無理に頼み込んだのです。一年遅らせてエヴァンと同じ学年で通って欲しいと」
レ「なるほど……ミーシェ嬢まで?」
国「それは……」
ミ「私からよろしいでしょうか」
レ「続けてくれ」
ミ「入学直前に結婚を約束した人が亡くなって、通う気になれず辞退したのです。
そのまま通う気は無かったのですが両親にライアンと一緒に通ったらどうかと言われまして一年遅れて通うことにしました」
レ「気の毒だったな。恋愛だったのだな?」
ミ「はい。お慕いしておりました」
レ「辛いことを聞いてしまったな。すまなかった」
ミ「気になさらないでください」
レ「………」
ア「そういえば、セーレンのジュリアス殿下が快方に向かっていると便りがあった」
エ「それは良かったです」
ガ「ミ、……ミーシェ嬢……パーティでダンスを……一緒に」
エ「申し訳ありませんが、ミーシェは私以外は家族としか踊らせるつもりはございません」
ガ「正気か?」
レ「ガブリエル、エヴァン殿下の婚約者だ。慎め。
だが、エヴァン殿下。決めるのはミーシェ嬢だ。私は当日に誘うことにするよ」
ミ「まあ、光栄ですわ。王太子殿下。
ですが社交慣れしておらず、帝国の王太子殿下や王子殿下と皆の前で踊れるほど、技量も鋼のような精神もございませんの。
他のご令嬢をお誘いくださいませ」
レ「ふむ、そうか。
パーティの後の二日間は休みと聞いた。
ぜひお付き合い願いたい」
ミ「? 何故ですか?」
レ「……理由が必要か?」
ミ「はい 」
レ「実はアクエリオンが其方と打ち合ったら負けそうだったと申してな。しかも普通の剣筋では無かったと聞く。
ぜひ見てみたい」
ミ「他にも同じ剣筋の方がいらっしゃいますのでご紹介いたしましょうか」
レ「君はいずれ妃になる。もしかしたら王妃にも。他国の王族と親交を深めるのも役目ではないか?」
ミ「従属国のまだどうなるかわからない娘に帝国の王太子殿下が親交を求めるのですか?
私は命令に感じますが」
国「ミーシェ」
レ「国王陛下、私の言葉選びが悪かった。
ミーシェ嬢の主張は最もだ。
帝国の王太子が言えば従属国の令嬢にとっては親交ではなく命令となるだろう。
ミーシェ嬢、其方の剣捌きを是非見たい。
頼まれてはくれまいか。この通りだ」
ミ「わ、分かりましたから。頭を下げないでください」
レ「良かった。
確かに他の者もいるだろうが、女性と男性では同じ剣筋でも違ってくるものだ。女性で其方のような剣捌きをする者は近くにいないだろう?」
ミ「いないとは言い切れませんが、確かにお会いしたことはございません」
レ「メディも其方の話を聞いてソワソワしているんだ。私達は強い者を見るのが嬉しいんだ」
ミ「それは分かります」
レ「そうだろう?
其方に力を乗せて剣を向けないと約束しよう。
念のために止めに入れる者を側に付けよう」
ミ「では、兄のライアンを」
レ「ライアン殿、其方とも手合わせを願いたい」
ラ「余興としてでしょうか」
レ「本気でかまわない」
ラ「では、一回だけ」
レ「何故一回なんだ?」
ラ「次にやりたい者が現れたらお相手させていただきましょう」
レ「そうか」
ラ「ミーシェと私はどなたが対戦なさるのですか?」
レ「そうだな。アクエリオンが押されるのなら、ミーシェ嬢は私と。ライアン殿はメディとお願いしたい」
ラ「かしこまりました」
レ「もし王都の街を見ることになったら、ミーシェ嬢は案内に参加してくれるのかな?」
ミ「無駄に人数を増やすだけですので同行は致しません」
ラ「ミーシェはこの通りですので、特に王都では滅多に外に出しません。従って全く詳しくありません。観光客の方が知っているくらいでしょう。
それに同行させるとミーシェの分の警護をつけねばなりません。帝国の王族3名とこちらの王族1名とミーシェとなるとかなりの人数になり、ご案内が困難となります」
レ「馬鹿な質問であった。失礼した。
ライアン殿はいつもそのように妹を守っているのか?」
ラ「私の守るべき最優先はミーシェですから」
レ「優しく頼もしい兄がいて羨ましいな」
ミ「フフッ、私はライアンが大好きなのです。優しくて面倒見がよくて努力家で強い兄がいて私は幸せ者ですわ」
レ「本当に嬉しそうだな。実にいい兄妹だ」
ミ「ありがとうございます!」
レ「エヴァン殿下にも弟がいると聞いたが」
国「実は幼い頃に仲良くなった子の所で暮らしているのですよ」
レ「王子なのに?」
国「はい。その子が領地に帰ってしまったら、眠れず食事も喉を通らず、会いに行かせたら元気になり、また戻すと元に戻ってしまうことを数回繰り返し、結局預けることにしました」
ア「もしや女の子ですか?」
国「困ったものです。気持ちは分かります。とても可愛い子で、私も孫のように可愛がりましたから」
レ「ハハッ、そうか、虫が付かないように見張っているのだな」
国「そのようです。
仮病じゃないので叱ることもできません。
年に一、二度行事で戻らせています」
レ「今回は戻るのかな?」
国「はい。到着次第、ご挨拶をさせます」
レ「ライアン殿とミーシェ嬢のご両親は参加なさるのだろうか」
国「はい、ロランを連れてきてもらいます」
レ「ロラン……つまり、弟王子の執着している子はライアン殿の妹か」
国「そうです」
レ「ミーシェ嬢に似ているのかな?」
国「ちょっと違います」
レ「上手くいっているのかな?彼は」
国「昔は不憫なくらい振り回されていました。今はどうでしょう」
レ「ハハハッ、それは見てみたいな。ロラン殿下に会いたいな」
国「何分ずっと離れていますから粗相がありそうでとても王太子殿下の前には……」
レ「かまわない。牙をむかれても大丈夫だ」
エ「そろそろ時間です」
レ「ありがとうライアン殿、ミーシェ嬢。
次はパーティで」
双「失礼いたします」
レ「我々も部屋に戻らせてもらおう。長旅で少し疲れた」
国「ごゆっくりお休みください」
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