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帝国 王太子レオン(サルト兄妹達)
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【 レオンの視点 】
父である帝王は女好きだ。都合よく女を入れ替えたいがために法改正までしてしまう。
娶った女が多いと子も増える。そして足の引っ張り合いをする場合もあるし、命を狙う者や大怪我をさせようとする者も現れる。
王子なのか、その母親なのか、外戚なのかよくは分からない。子が多いとそれだけ分かり難い。
何人か死んだり婿に行ったため、私が王太子になった時に残った王子で数え直された。
本来私は第三王子だった。
一番上の兄は私が幼いときに殺された。
そしてニ番目の兄カジミール。
カジミールは数ヶ月違いの側妃の息子で、夜中に私の命を狙った。兄にとっては運悪く、私はトイレに起きた後、寝付けないでいた。
そっと扉の開く音がして、人影が近くに来た時に廊下のランプの灯りが届き剣が見えた。
私は起き上がり、枕の近くの壁にかけていた剣を手に取り刺した。
緊急時のベルを鳴らして使用人達が駆けつけ灯りをつけると倒れていたのは兄だった。
そして、私の部屋の外で役目を果たすはずの護衛は買収されていた。
いろいろなことがあって残ったのは私を含めた5人。
ガブリエルは命を狙ってこないが王族としては相応しくない。私が王になった時のガブリエルの振る舞いが酷くなることを懸念した。
そしてセーレンの事件だ。
ガブリエルは美女という言葉に反応していたが私はアクエリオンが表情を変えて話す双子に興味があった。
個人的にアクエリオンに詳しく聞くと会ってみたくなった。
ついでにガブリエルも片付くだろうと連れて行くことにした。でないと勝手に会いに行きかねないからだ。
アクエリオンから手紙を出してもらうと、まるで来て欲しくないかのように王子の行事に王宮滞在でと返事があった。
そして訪れてみるとガードがかたい。
なんとか30分面会時間をもらった。
そこに現れたのは湖のような青い澄んだ瞳の美し過ぎる令嬢と彼女とあまり似ていない美丈夫の兄だった。
帝国の王族相手にはっきりと主張をする双子だった。
面白いことにガブリエルが、思っていたよりも遥かに美しいミーシェに緊張していた。
何とか丸め込んで剣技を見せてもらう約束ができた。
話しているうちにこの双子の兄妹が羨ましいと思った。心底慕い信頼し合っているように感じた。
翌日は双子の家族に会えた。
ミーシェに似た母親は人外と言いたくなる美しさで、ステファニー王女のお気に入りの訳が分かった。夫も見目のいい男だ。
シーナはまたミーシェとは少し違う感じの美貌の持ち主で、国王陛下をジイジと呼び、陛下がデレデレになって膝の上に乗せた。
ここにいる本物の孫はいいのか?
小遣いをやると言われても不要だと言う。
ミーシェ嬢と話すきっかけを作ろうとシーナから話を聞く為に言った言葉だった。
『私も其方のような妹が欲しいものだ。私も兄様と呼んでくれるか?』
『王太子殿下、何故思っておられないことを言って兄様などと呼ばせようとするのですか?』
『………』
驚いた。この子の勘の鋭さはなんだ?
『ジイジ、イチゴ!』
また歳より幼く振る舞う子供に戻った。
面白い子だ。
膝の上に乗せてみることにした。
乗せた瞬間に脇腹に固い物が当たった。
チラッと見ると僅かに見えたのはかなり短い刃のナイフで持ち方からするとT字のコルク抜きのような形をしているようだ。これならこの子でも深く刺さるだろう。となると臓器に届く。
『(ソレはしまっておけ)』
『(貴方次第です)』
『確かめて欲しかっただけだ。女としてではないがシーナに好意があるのが分かるか?』
『さっきよりは』
こんな無謀なことを何故させる?
しかし、夫妻側の斜め後ろに立つ護衛らしき男の目があいつと一緒だった。
昔、帝王と一緒にいた時に刺客に帝王が襲われたことがあった。その刺客の目とよく似ている。
シーナは彼の正体が分かっていて、尚且つ彼の庇護下にあるのだろう。
参ったな。私達全員を殺す気だ。陛下は知っているのか?
怒り出したロラン殿下の手を引き部屋から去った。
あの男は王族のロランには反応していない。
サルト家に雇われているのか?
シーナはロランが私と揉める前に連れ出すという選択もする子だった。
シーナの本性は複雑だ。
陛下に甘えているのも演技ではない。
どんな育て方をしたらこうなるんだ?
『シーナ嬢やロラン殿下の教育は誰方が?』
『可愛すぎて厳しくできませんでした。遅くに授かった子というのもありますが、女の子は格別です』
『甘え上手でサルトで雇われた者達も甘くなりがちです』
男爵も夫人も嬉しそうに話をするな。
「ですので、叱るのはほとんどライアンです。勉強についてもライアンが指導します。
それはロラン殿下も同じです」
「ロラン殿下とシーナ嬢も剣などを?」
「アーノルド、どんな感じ?」
「ロラン殿下は剣、投剣、体術を中心に励んでおります。最近乗馬も追加なさいました。
シーナは投剣と弓を少し。もう少し育ったら乗馬と剣をやるかもしれません。
まだ子供で体が育っている最中ですから、無理をさせず基本を教えています」
「それは誰が教えているのかな」
「私かライアンが中心で、時々ミーシェも加わります」
双子に英才教育を施したのはこのアーノルドだな。
父である帝王は女好きだ。都合よく女を入れ替えたいがために法改正までしてしまう。
娶った女が多いと子も増える。そして足の引っ張り合いをする場合もあるし、命を狙う者や大怪我をさせようとする者も現れる。
王子なのか、その母親なのか、外戚なのかよくは分からない。子が多いとそれだけ分かり難い。
何人か死んだり婿に行ったため、私が王太子になった時に残った王子で数え直された。
本来私は第三王子だった。
一番上の兄は私が幼いときに殺された。
そしてニ番目の兄カジミール。
カジミールは数ヶ月違いの側妃の息子で、夜中に私の命を狙った。兄にとっては運悪く、私はトイレに起きた後、寝付けないでいた。
そっと扉の開く音がして、人影が近くに来た時に廊下のランプの灯りが届き剣が見えた。
私は起き上がり、枕の近くの壁にかけていた剣を手に取り刺した。
緊急時のベルを鳴らして使用人達が駆けつけ灯りをつけると倒れていたのは兄だった。
そして、私の部屋の外で役目を果たすはずの護衛は買収されていた。
いろいろなことがあって残ったのは私を含めた5人。
ガブリエルは命を狙ってこないが王族としては相応しくない。私が王になった時のガブリエルの振る舞いが酷くなることを懸念した。
そしてセーレンの事件だ。
ガブリエルは美女という言葉に反応していたが私はアクエリオンが表情を変えて話す双子に興味があった。
個人的にアクエリオンに詳しく聞くと会ってみたくなった。
ついでにガブリエルも片付くだろうと連れて行くことにした。でないと勝手に会いに行きかねないからだ。
アクエリオンから手紙を出してもらうと、まるで来て欲しくないかのように王子の行事に王宮滞在でと返事があった。
そして訪れてみるとガードがかたい。
なんとか30分面会時間をもらった。
そこに現れたのは湖のような青い澄んだ瞳の美し過ぎる令嬢と彼女とあまり似ていない美丈夫の兄だった。
帝国の王族相手にはっきりと主張をする双子だった。
面白いことにガブリエルが、思っていたよりも遥かに美しいミーシェに緊張していた。
何とか丸め込んで剣技を見せてもらう約束ができた。
話しているうちにこの双子の兄妹が羨ましいと思った。心底慕い信頼し合っているように感じた。
翌日は双子の家族に会えた。
ミーシェに似た母親は人外と言いたくなる美しさで、ステファニー王女のお気に入りの訳が分かった。夫も見目のいい男だ。
シーナはまたミーシェとは少し違う感じの美貌の持ち主で、国王陛下をジイジと呼び、陛下がデレデレになって膝の上に乗せた。
ここにいる本物の孫はいいのか?
小遣いをやると言われても不要だと言う。
ミーシェ嬢と話すきっかけを作ろうとシーナから話を聞く為に言った言葉だった。
『私も其方のような妹が欲しいものだ。私も兄様と呼んでくれるか?』
『王太子殿下、何故思っておられないことを言って兄様などと呼ばせようとするのですか?』
『………』
驚いた。この子の勘の鋭さはなんだ?
『ジイジ、イチゴ!』
また歳より幼く振る舞う子供に戻った。
面白い子だ。
膝の上に乗せてみることにした。
乗せた瞬間に脇腹に固い物が当たった。
チラッと見ると僅かに見えたのはかなり短い刃のナイフで持ち方からするとT字のコルク抜きのような形をしているようだ。これならこの子でも深く刺さるだろう。となると臓器に届く。
『(ソレはしまっておけ)』
『(貴方次第です)』
『確かめて欲しかっただけだ。女としてではないがシーナに好意があるのが分かるか?』
『さっきよりは』
こんな無謀なことを何故させる?
しかし、夫妻側の斜め後ろに立つ護衛らしき男の目があいつと一緒だった。
昔、帝王と一緒にいた時に刺客に帝王が襲われたことがあった。その刺客の目とよく似ている。
シーナは彼の正体が分かっていて、尚且つ彼の庇護下にあるのだろう。
参ったな。私達全員を殺す気だ。陛下は知っているのか?
怒り出したロラン殿下の手を引き部屋から去った。
あの男は王族のロランには反応していない。
サルト家に雇われているのか?
シーナはロランが私と揉める前に連れ出すという選択もする子だった。
シーナの本性は複雑だ。
陛下に甘えているのも演技ではない。
どんな育て方をしたらこうなるんだ?
『シーナ嬢やロラン殿下の教育は誰方が?』
『可愛すぎて厳しくできませんでした。遅くに授かった子というのもありますが、女の子は格別です』
『甘え上手でサルトで雇われた者達も甘くなりがちです』
男爵も夫人も嬉しそうに話をするな。
「ですので、叱るのはほとんどライアンです。勉強についてもライアンが指導します。
それはロラン殿下も同じです」
「ロラン殿下とシーナ嬢も剣などを?」
「アーノルド、どんな感じ?」
「ロラン殿下は剣、投剣、体術を中心に励んでおります。最近乗馬も追加なさいました。
シーナは投剣と弓を少し。もう少し育ったら乗馬と剣をやるかもしれません。
まだ子供で体が育っている最中ですから、無理をさせず基本を教えています」
「それは誰が教えているのかな」
「私かライアンが中心で、時々ミーシェも加わります」
双子に英才教育を施したのはこのアーノルドだな。
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