120 / 173
それぞれの閑話(テオ・国王・エヴァン)
しおりを挟む
【 テオドールの視点 】
こうやってアネットそっくりの、私とアネットの愛の結晶と暮らしエスコートできることは、干からびた土に水を充すように染み渡り温かく感じる。
距離を置いた関係になっていたソラルもすっかり私達や使用人と溶け込んでいる。
皆口を揃えてミーシェのおかげだと言う。
今度は失敗しないようにしたい。
会場で見たアネットは幸せそうに夫に寄り添っていた。何故か昔より苦しくない。ミーシェのおかげだろうか。
なんとなく、ミーシェの表情が曇っている気がする。それはダンスの時にはっきり感じた。
拒絶の顔をしている。アネットと同じだ。
曲が終わりすぐに割って入った。
どうやら正解だったようだ。
今は何も聞かず、世間話をして踊りきり、ライアンに引き継いだ。
その後は隠れるように休む娘を見守っていたら帝国の王太子がテラスへ連れて行きダンスを始めた。
見渡すとライアンが注視していたから私は挨拶回りを始めた。
一時間もしないうちにライアンから泊まらせたいと言われた。連れて帰りたいがライアンがこうやって話しかけてきてくれることが嬉しい。
一泊ならと承諾した。
私の息子、ライアン。
【 国王陛下の視点 】
エヴァンは何をやっているんだ!
迂闊なことを!側妃の問題は試す為に使っては駄目だと分からないとは。
アクエリオン殿下が来たということをどう考えたらいいのか。
とにかく、今夜は家族会議だ!
【 エヴァンの視点 】
ミーシェがいない!
ずっと探しているが、どこにもいない。
レオン王太子もガブリエル王子もここにいる。
他の誰かと会場を出たのかと落ち着かなかった。
しばらくしてライアンとアクエリオン王子が戻った。
「ライアン、ミーシェは?」
「疲れていたから連れ出した」
「どこに?」
「主役のお前が外すことは許されない。
黙って戻れ」
「居場所くらい、」
「私は何度も言ってきた。
私の役目はミーシェを守ることで、最優先はミーシェだと。
エヴァンがミーシェを傷付けるなら会わせないし、ミーシェにとって害なら排除する」
「ミーシェに謝らせてくれ」
「一晩くらい反省したらどうだ。
口を割るつもりはない。早く戻れ」
「ライアン!」
「一晩どころか一生にしてもいいんだぞ」
「学園がある」
「元々私達には復習のレベルだ。卒業しなくても構わない」
「侯爵家には戻るんだろう」
「戻らなければ戻らない分、婚姻は遅れるだろうな」
「それじゃ誘拐だ」
「両親が私にノーと言うと思うか?
子供みたいなことを言うな。益々腹が立つ」
取り乱したエヴァンでも、ライアンが本気だと分かった。
「お願いします。どうか教えて下さい」
遂にエヴァンが跪いてしまった。
出入口付近とはいえ会場内で王子が男爵令息に跪くのは外聞が悪かった。
「こんな所で止めろ。立て」
「私にはミーシェしかいないんだ」
涙を浮かべるエヴァンの腕を掴んで立たせると胸ぐらを掴んだ。
「だったら余計なことを言うな。
明日少し会えるだろう。それで我慢しろ」
そう言い残してサルト夫妻の元へ向かうライアンを見送るしかなかった。
「エヴァン殿下、顔を洗って会場に戻るんだ。
一年後に夫となる男の姿ではない。
失望はさせない方がいい」
アクエリオンもレオンの元に戻った。
パーティの後、国王陛下に呼ばれて応接間に行くとそこには父のシオンもいた。
シ「座れエヴァン」
エ「はい 」
国「何故こうなったのか聞いた。
お前が口にした話題は安易に用いていいものではない。
側妃は正妃の不妊を意味するか、寵愛が別にあることを意味するか、政治の関係かはそれぞれだが、正妃にとってはいずれも喜ばしい話ではない。
政略結婚でも葛藤があるものだ。
お前達の場合だとミーシェには酷なものなんだ。
離縁したり病んだり死を選ぶ正妃もいる。そのくらいデリケートな問題なんだぞ」
シ「もうこれでミーシェはずっと側妃という言葉に囚われて生きることになる。
馬鹿なことを言ったものだ」
国王と父に叱責されたエヴァンは疑問をぶつけた。
エ「ミーシェの場合は怒っているだけだと」
国「では何故、泣き過ぎて疲れて眠りに落ちることになる」
エ「えっ、ミーシェが?」
国「アクエリオン殿下も心配なさっていた」
ミーシェが泣き疲れた?
……だからライアンがあんなに怒ったのか。
エ「ミーシェは、側妃を迎えたら、自分も閨を卒業し、恋人を作るか離縁すると言っていたから、」
シ「全てを受け入れて現状を維持する者、拒絶する者、何かで気を逸らす者、それは様々だ。
夫以外に目を向けると発言したからといって、傷付いていないことにはならない。
ミーシェは防御をしているのだろう」
国「もし、ミーシェが解消を申し入れたなら受理する」
エ「陛下!」
国「エヴァンにはまだまだ婚姻は早いようだ」
エ「絶対ミーシェとは別れません!」
シ「相手あってのことだ。しかも家族のように交流のあるミーシェに無理強いはしない」
エ「ミーシェに謝ります」
国「それは当然だが、謝っただけでは元には戻らないだろう」
翌日私は、嫌な光景を目にすることになる。
レオン王太子殿下とミーシェが打ち解けていた。
こうやってアネットそっくりの、私とアネットの愛の結晶と暮らしエスコートできることは、干からびた土に水を充すように染み渡り温かく感じる。
距離を置いた関係になっていたソラルもすっかり私達や使用人と溶け込んでいる。
皆口を揃えてミーシェのおかげだと言う。
今度は失敗しないようにしたい。
会場で見たアネットは幸せそうに夫に寄り添っていた。何故か昔より苦しくない。ミーシェのおかげだろうか。
なんとなく、ミーシェの表情が曇っている気がする。それはダンスの時にはっきり感じた。
拒絶の顔をしている。アネットと同じだ。
曲が終わりすぐに割って入った。
どうやら正解だったようだ。
今は何も聞かず、世間話をして踊りきり、ライアンに引き継いだ。
その後は隠れるように休む娘を見守っていたら帝国の王太子がテラスへ連れて行きダンスを始めた。
見渡すとライアンが注視していたから私は挨拶回りを始めた。
一時間もしないうちにライアンから泊まらせたいと言われた。連れて帰りたいがライアンがこうやって話しかけてきてくれることが嬉しい。
一泊ならと承諾した。
私の息子、ライアン。
【 国王陛下の視点 】
エヴァンは何をやっているんだ!
迂闊なことを!側妃の問題は試す為に使っては駄目だと分からないとは。
アクエリオン殿下が来たということをどう考えたらいいのか。
とにかく、今夜は家族会議だ!
【 エヴァンの視点 】
ミーシェがいない!
ずっと探しているが、どこにもいない。
レオン王太子もガブリエル王子もここにいる。
他の誰かと会場を出たのかと落ち着かなかった。
しばらくしてライアンとアクエリオン王子が戻った。
「ライアン、ミーシェは?」
「疲れていたから連れ出した」
「どこに?」
「主役のお前が外すことは許されない。
黙って戻れ」
「居場所くらい、」
「私は何度も言ってきた。
私の役目はミーシェを守ることで、最優先はミーシェだと。
エヴァンがミーシェを傷付けるなら会わせないし、ミーシェにとって害なら排除する」
「ミーシェに謝らせてくれ」
「一晩くらい反省したらどうだ。
口を割るつもりはない。早く戻れ」
「ライアン!」
「一晩どころか一生にしてもいいんだぞ」
「学園がある」
「元々私達には復習のレベルだ。卒業しなくても構わない」
「侯爵家には戻るんだろう」
「戻らなければ戻らない分、婚姻は遅れるだろうな」
「それじゃ誘拐だ」
「両親が私にノーと言うと思うか?
子供みたいなことを言うな。益々腹が立つ」
取り乱したエヴァンでも、ライアンが本気だと分かった。
「お願いします。どうか教えて下さい」
遂にエヴァンが跪いてしまった。
出入口付近とはいえ会場内で王子が男爵令息に跪くのは外聞が悪かった。
「こんな所で止めろ。立て」
「私にはミーシェしかいないんだ」
涙を浮かべるエヴァンの腕を掴んで立たせると胸ぐらを掴んだ。
「だったら余計なことを言うな。
明日少し会えるだろう。それで我慢しろ」
そう言い残してサルト夫妻の元へ向かうライアンを見送るしかなかった。
「エヴァン殿下、顔を洗って会場に戻るんだ。
一年後に夫となる男の姿ではない。
失望はさせない方がいい」
アクエリオンもレオンの元に戻った。
パーティの後、国王陛下に呼ばれて応接間に行くとそこには父のシオンもいた。
シ「座れエヴァン」
エ「はい 」
国「何故こうなったのか聞いた。
お前が口にした話題は安易に用いていいものではない。
側妃は正妃の不妊を意味するか、寵愛が別にあることを意味するか、政治の関係かはそれぞれだが、正妃にとってはいずれも喜ばしい話ではない。
政略結婚でも葛藤があるものだ。
お前達の場合だとミーシェには酷なものなんだ。
離縁したり病んだり死を選ぶ正妃もいる。そのくらいデリケートな問題なんだぞ」
シ「もうこれでミーシェはずっと側妃という言葉に囚われて生きることになる。
馬鹿なことを言ったものだ」
国王と父に叱責されたエヴァンは疑問をぶつけた。
エ「ミーシェの場合は怒っているだけだと」
国「では何故、泣き過ぎて疲れて眠りに落ちることになる」
エ「えっ、ミーシェが?」
国「アクエリオン殿下も心配なさっていた」
ミーシェが泣き疲れた?
……だからライアンがあんなに怒ったのか。
エ「ミーシェは、側妃を迎えたら、自分も閨を卒業し、恋人を作るか離縁すると言っていたから、」
シ「全てを受け入れて現状を維持する者、拒絶する者、何かで気を逸らす者、それは様々だ。
夫以外に目を向けると発言したからといって、傷付いていないことにはならない。
ミーシェは防御をしているのだろう」
国「もし、ミーシェが解消を申し入れたなら受理する」
エ「陛下!」
国「エヴァンにはまだまだ婚姻は早いようだ」
エ「絶対ミーシェとは別れません!」
シ「相手あってのことだ。しかも家族のように交流のあるミーシェに無理強いはしない」
エ「ミーシェに謝ります」
国「それは当然だが、謝っただけでは元には戻らないだろう」
翌日私は、嫌な光景を目にすることになる。
レオン王太子殿下とミーシェが打ち解けていた。
174
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは、聖女。
――それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王によって侯爵領を奪われ、没落した姉妹。
誰からも愛される姉は聖女となり、私は“支援しかできない白魔導士”のまま。
王命により結成された勇者パーティ。
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い。
そして――“おまけ”の私。
前線に立つことも、敵を倒すこともできない。
けれど、戦場では支援が止まれば人が死ぬ。
魔王討伐の旅路の中で知る、
百年前の英雄譚に隠された真実。
勇者と騎士、弓使い、そして姉妹に絡みつく過去。
突きつけられる現実と、過酷な選択。
輝く姉と英雄たちのすぐ隣で、
「支えるだけ」が役割と思っていた少女は、何を選ぶのか。
これは、聖女の妹として生きてきた“おまけ”の白魔導士が、
やがて世界を支える“要”になるまでの物語。
――どうやら、私がいないと世界が詰むようです。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー編 32話
第二章:討伐軍編 32話
第三章:魔王決戦編 36話
※「カクヨム」、「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる