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エヴァン誕生パーティ
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ミーシェがまだ養子期間が完了していないため、行動は別々でエヴァンは苛立っていた。
一方ミーシェは、テオドールにエスコートされて王族の前に立ち、挨拶をする。
「エヴァン殿下、17歳の誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
「国王陛下、養子縁組の件、感謝いたします」
「ミーシェは上手く馴染んでいるか」
「はい。すっかりソラルとも仲良くなり、屋敷は賑やかになりました。前侯爵も生々としております。
大切に過ごしたいと思っております」
「ソラル殿はどうかな」
「最初は戸惑いましたが、ライアンから“妹ができたと思え”、“妹とはそういう生き物だ”と助言をもらいましたので、慣れました」
「其方の方が歳下ではなかったか?」
「はい。そう言いましたが、ライアンが直ぐに分かると。
その通り、姉というよりは妹ができたような感じです。歳の近い姉妹をもつ子息を尊敬します」
「ハハハッ、まあ、可愛いミーシェのすることは大したことではなかろう」
「しかし、クラスメイトや婚約者とはまるで違うのです」
「それは猫を被っているのだよ」
「そうなのですか!? 」
「そう怯えなくても良い。婚姻する頃には其方ももっと大人になって何とかなる」
「そう願っております」
「ミーシェはエヴァンと踊るのだろう?」
「多分」
「多分?」
「誘われてはおりませんので」
「ミーシェ……」
「踊ってやってくれ」
「はい、陛下」
思わぬミーシェの冷たさにエヴァンはショックだった。
確かに申し込んではいない。エスコートもしていないからパートナーとしての一曲目の権利がない。
つまりテオドールになる。
挨拶が一通り終わり、王族のダンスが始まった。
今回はエヴァンとミーシェ、レオンとステファニーとなる。
ミーシェの手を取るが目線を合わせてもらえない。
「この後、誰とも踊らないでくれ」
「断るわ」
「ミーシェ」
「侯爵と当然踊るし、父やライアンとも踊るし。
エヴァンも他の令嬢達と踊ればいいじゃない」
「踊らない」
「好きにするといいわ」
その後は無言のまま、曲が終盤を迎えた。
「側妃なんて娶らない」
「いいのよ。私の顔色で決めなくて。
早めに知っておいて良かったわ」
「ミーシェ」
「ダンスをありがとうございました。
ダンスは側妃候補の品定めにいい機会だわ。
どうぞご自由に」
そう言い残して去るミーシェを止めようとするが間にサックス侯爵が割って入った。
「殿下、娘を返していただけますか」
「……」
「ミーシェ、初のダンスだね」
「ええ、お義父様」
その後、ミーシェはライアンとも踊り、人目の付かない観葉植物の陰で休憩をしていた。
「大丈夫か」
声をかけたのはレオン王太子殿下だった。
「ええ」
「よし」
そう言うとミーシェの手を引いて側のテラスに出た。
「戻りましょう」
「君が言ったんだ。みんなの前じゃ恥ずかしいと。ここなら見張っているのは護衛とライアン殿とアクエリオンだけだ。
それに今さっき大丈夫だと言ったろう」
「……分かりました」
レオンのリードでダンスを始めたがミーシェの表情は曇っていた。
「エヴァン殿下と喧嘩した?」
「いえ、喧嘩ではありません」
「見てれば分かるよ」
「王族特有のことを王族に愚痴っても意味がありませんわ」
「でも、王族の暮らしの参考にはなる」
「もし結婚したら法律に沿って私の自由にしますからそれでいいのです」
「そんなことでは息が詰まらないか?」
レオン王太子殿下は指示を出した。
「アクエリオン、ライアン殿を呼んでくれ」
「はい 」
「君の安定剤が来るから待っていなさい」
「……ううっ……」
「大丈夫、大丈夫だから」
泣き出したミーシェを見てダンスを止めて軽く抱き寄せて頭を撫でた。
「ミーシェ!」
「ライアン!う~っ!」
「私のようで私ではない。
そんなに殺気を飛ばさないでくれ。
シーナ嬢は確かに君が育てたな」
「どういうことですか?これは」
「思い悩んでいそうだから声をかけた。
だが私では話せないようなので君を呼んだんだ。君なら支えになるだろうと思ったから」
「王太子殿下は…悪くない」
「ありがとうございます、王太子殿下」
「多分婚姻に関わることで何かあったのだろう。
もし、逃げたくなったら帝国に来るといい。私でもアクエリオンでも構わない。連絡をしてくれ。
ライアン、其方もだ」
「ご厚意に感謝いたしますが、私は、」
「分かっている。サルト家を継ぐのだろう?
だが其方が一番大事なのはミーシェだ。サルト家はシーナ嬢がいる。気が変わるかもしれないから頭の片隅に置いてくれ」
「はい 」
「ミーシェ、分かったな」
「ううっ、ふううっ……」
「いつもの部屋やサルト家の部屋に行けばバレるだろう。ライアン殿、私の部屋を使え。泣き止めば化粧直しをして、駄目ならメイドに頼んでもう一部屋用意してもらう。
今は対峙したくないだろう。
アクエリオン、案内してくれ。
私が消えると怪しまれる」
「さあ、行きましょう。私とライアン殿で隠しますので」
「ヒクッ」
レオン王太子殿下の貴賓室に着いて、お茶を用意してもらった。
「彼女がこんなに泣くなんて」
「はぁ、エヴァンも余計なことを言ったものだ。
ミーシェ、嫌なら止めていい。
だが、あの話はそのつもりで話したんじゃなくて、お前に嫉妬して欲しくて口にした話だ。エヴァンはお前しか娶らないとずっと言ってきただろう」
「うぐっ……言ってない」
「言ってた」
「うぐっ、私だけだとは言ったけど、…うぐっ、娶らないとは言ってない」
「言ってた気がしたが」
「もういい」
「ミーシェ、私はいつでもお前の味方だ。
分かるな?」
「うん 」
「お前が一番大事だ。知ってるな?」
「うん 」
「困ったらどうするんだ?」
「ライアンに言う」
「いい子だ」
しばらくするとミーシェは泣き疲れて寝てしまった。
「部屋を用意させる」
「サックス邸に連れて行きます」
「押しかけられると思う。こう言う時は足元の方が見え辛い。護衛の部屋と言って用意させるから。ライアン殿は?」
「王宮に泊まる予定です」
「なら王宮の方が見守り易いだろう」
アクエリオンはメイドに、護衛の部屋を一つ増やして欲しいと告げて金貨を渡した。
「男女の喧嘩だが、冷却期間を置かないと反発して破棄になる。ここは協力してくれないか。一晩でいい」
メイドは金貨を返した。
「私は主君を裏切れません。国王陛下にご相談なされば快く隠してくださいます。
信じてくださいませ」
「では、陛下の所へ案内してもらえるか?」
「ご案内いたします」
アクエリオンは国王陛下と戻ってきて、泣き疲れたミーシェを見た。
事情をライアンから聞いた国王は溜息をついた。
「馬鹿だな」
「デリケートな問題なのですがね」
「すまないな、ライアン」
「いえ、ミーシェは元々は心の弱い子なのです。だから心に攻撃を受けたと思えば何倍にもして攻撃し返すことで自分を守ろうとします。
同時に愛する者の為にも強く見せる子です」
「今夜はエヴァンに仕置きだ。
国王の側妃が使う部屋がある。今そこを整えさせているから、終わったら運ぼう」
「ありがとうございます」
「陛下、貴方に仕えるメイドは素晴らしかった。金貨を渡して内緒で部屋を用意して欲しいと言ったら、主君を裏切れない、陛下を信じて相談をしろと言いました。
帝国の王子の申し出を断るメイドはなかなかおりません」
「そうか。どの子だろう」
「失礼いたします。お部屋の準備を終えました」
「彼女です」
「入ってくれ。名前は?」
「失礼いたします。
カシーナと申します」
「素晴らしいと褒められた。私も鼻が高い。
よくやった」
「主君を信じておりますので」
「カシーナ、頼りにしてる。ありがとう」
「身に余るお言葉をいただけて胸が一杯でございます」
ミーシェを移し、カシーナを付けさせてライアンは一度会場に戻り、ハヴィエルに報告した。その後、使用人に侯爵を呼び出してもらい、廊下で話をした。
「ミーシェを王宮に泊まらせます。疲れて眠っているので、明日、夕方までには送り届けます」
「ミーシェは大丈夫なのか?」
「どう修正するのかはエヴァン次第でしょう。
間に割って入って下さりありがとうございました」
「私の娘だから当然だ。アネットにそっくりで分かり易い。何かあれば動くから言ってくれ」
「分かりました」
一方ミーシェは、テオドールにエスコートされて王族の前に立ち、挨拶をする。
「エヴァン殿下、17歳の誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」
「国王陛下、養子縁組の件、感謝いたします」
「ミーシェは上手く馴染んでいるか」
「はい。すっかりソラルとも仲良くなり、屋敷は賑やかになりました。前侯爵も生々としております。
大切に過ごしたいと思っております」
「ソラル殿はどうかな」
「最初は戸惑いましたが、ライアンから“妹ができたと思え”、“妹とはそういう生き物だ”と助言をもらいましたので、慣れました」
「其方の方が歳下ではなかったか?」
「はい。そう言いましたが、ライアンが直ぐに分かると。
その通り、姉というよりは妹ができたような感じです。歳の近い姉妹をもつ子息を尊敬します」
「ハハハッ、まあ、可愛いミーシェのすることは大したことではなかろう」
「しかし、クラスメイトや婚約者とはまるで違うのです」
「それは猫を被っているのだよ」
「そうなのですか!? 」
「そう怯えなくても良い。婚姻する頃には其方ももっと大人になって何とかなる」
「そう願っております」
「ミーシェはエヴァンと踊るのだろう?」
「多分」
「多分?」
「誘われてはおりませんので」
「ミーシェ……」
「踊ってやってくれ」
「はい、陛下」
思わぬミーシェの冷たさにエヴァンはショックだった。
確かに申し込んではいない。エスコートもしていないからパートナーとしての一曲目の権利がない。
つまりテオドールになる。
挨拶が一通り終わり、王族のダンスが始まった。
今回はエヴァンとミーシェ、レオンとステファニーとなる。
ミーシェの手を取るが目線を合わせてもらえない。
「この後、誰とも踊らないでくれ」
「断るわ」
「ミーシェ」
「侯爵と当然踊るし、父やライアンとも踊るし。
エヴァンも他の令嬢達と踊ればいいじゃない」
「踊らない」
「好きにするといいわ」
その後は無言のまま、曲が終盤を迎えた。
「側妃なんて娶らない」
「いいのよ。私の顔色で決めなくて。
早めに知っておいて良かったわ」
「ミーシェ」
「ダンスをありがとうございました。
ダンスは側妃候補の品定めにいい機会だわ。
どうぞご自由に」
そう言い残して去るミーシェを止めようとするが間にサックス侯爵が割って入った。
「殿下、娘を返していただけますか」
「……」
「ミーシェ、初のダンスだね」
「ええ、お義父様」
その後、ミーシェはライアンとも踊り、人目の付かない観葉植物の陰で休憩をしていた。
「大丈夫か」
声をかけたのはレオン王太子殿下だった。
「ええ」
「よし」
そう言うとミーシェの手を引いて側のテラスに出た。
「戻りましょう」
「君が言ったんだ。みんなの前じゃ恥ずかしいと。ここなら見張っているのは護衛とライアン殿とアクエリオンだけだ。
それに今さっき大丈夫だと言ったろう」
「……分かりました」
レオンのリードでダンスを始めたがミーシェの表情は曇っていた。
「エヴァン殿下と喧嘩した?」
「いえ、喧嘩ではありません」
「見てれば分かるよ」
「王族特有のことを王族に愚痴っても意味がありませんわ」
「でも、王族の暮らしの参考にはなる」
「もし結婚したら法律に沿って私の自由にしますからそれでいいのです」
「そんなことでは息が詰まらないか?」
レオン王太子殿下は指示を出した。
「アクエリオン、ライアン殿を呼んでくれ」
「はい 」
「君の安定剤が来るから待っていなさい」
「……ううっ……」
「大丈夫、大丈夫だから」
泣き出したミーシェを見てダンスを止めて軽く抱き寄せて頭を撫でた。
「ミーシェ!」
「ライアン!う~っ!」
「私のようで私ではない。
そんなに殺気を飛ばさないでくれ。
シーナ嬢は確かに君が育てたな」
「どういうことですか?これは」
「思い悩んでいそうだから声をかけた。
だが私では話せないようなので君を呼んだんだ。君なら支えになるだろうと思ったから」
「王太子殿下は…悪くない」
「ありがとうございます、王太子殿下」
「多分婚姻に関わることで何かあったのだろう。
もし、逃げたくなったら帝国に来るといい。私でもアクエリオンでも構わない。連絡をしてくれ。
ライアン、其方もだ」
「ご厚意に感謝いたしますが、私は、」
「分かっている。サルト家を継ぐのだろう?
だが其方が一番大事なのはミーシェだ。サルト家はシーナ嬢がいる。気が変わるかもしれないから頭の片隅に置いてくれ」
「はい 」
「ミーシェ、分かったな」
「ううっ、ふううっ……」
「いつもの部屋やサルト家の部屋に行けばバレるだろう。ライアン殿、私の部屋を使え。泣き止めば化粧直しをして、駄目ならメイドに頼んでもう一部屋用意してもらう。
今は対峙したくないだろう。
アクエリオン、案内してくれ。
私が消えると怪しまれる」
「さあ、行きましょう。私とライアン殿で隠しますので」
「ヒクッ」
レオン王太子殿下の貴賓室に着いて、お茶を用意してもらった。
「彼女がこんなに泣くなんて」
「はぁ、エヴァンも余計なことを言ったものだ。
ミーシェ、嫌なら止めていい。
だが、あの話はそのつもりで話したんじゃなくて、お前に嫉妬して欲しくて口にした話だ。エヴァンはお前しか娶らないとずっと言ってきただろう」
「うぐっ……言ってない」
「言ってた」
「うぐっ、私だけだとは言ったけど、…うぐっ、娶らないとは言ってない」
「言ってた気がしたが」
「もういい」
「ミーシェ、私はいつでもお前の味方だ。
分かるな?」
「うん 」
「お前が一番大事だ。知ってるな?」
「うん 」
「困ったらどうするんだ?」
「ライアンに言う」
「いい子だ」
しばらくするとミーシェは泣き疲れて寝てしまった。
「部屋を用意させる」
「サックス邸に連れて行きます」
「押しかけられると思う。こう言う時は足元の方が見え辛い。護衛の部屋と言って用意させるから。ライアン殿は?」
「王宮に泊まる予定です」
「なら王宮の方が見守り易いだろう」
アクエリオンはメイドに、護衛の部屋を一つ増やして欲しいと告げて金貨を渡した。
「男女の喧嘩だが、冷却期間を置かないと反発して破棄になる。ここは協力してくれないか。一晩でいい」
メイドは金貨を返した。
「私は主君を裏切れません。国王陛下にご相談なされば快く隠してくださいます。
信じてくださいませ」
「では、陛下の所へ案内してもらえるか?」
「ご案内いたします」
アクエリオンは国王陛下と戻ってきて、泣き疲れたミーシェを見た。
事情をライアンから聞いた国王は溜息をついた。
「馬鹿だな」
「デリケートな問題なのですがね」
「すまないな、ライアン」
「いえ、ミーシェは元々は心の弱い子なのです。だから心に攻撃を受けたと思えば何倍にもして攻撃し返すことで自分を守ろうとします。
同時に愛する者の為にも強く見せる子です」
「今夜はエヴァンに仕置きだ。
国王の側妃が使う部屋がある。今そこを整えさせているから、終わったら運ぼう」
「ありがとうございます」
「陛下、貴方に仕えるメイドは素晴らしかった。金貨を渡して内緒で部屋を用意して欲しいと言ったら、主君を裏切れない、陛下を信じて相談をしろと言いました。
帝国の王子の申し出を断るメイドはなかなかおりません」
「そうか。どの子だろう」
「失礼いたします。お部屋の準備を終えました」
「彼女です」
「入ってくれ。名前は?」
「失礼いたします。
カシーナと申します」
「素晴らしいと褒められた。私も鼻が高い。
よくやった」
「主君を信じておりますので」
「カシーナ、頼りにしてる。ありがとう」
「身に余るお言葉をいただけて胸が一杯でございます」
ミーシェを移し、カシーナを付けさせてライアンは一度会場に戻り、ハヴィエルに報告した。その後、使用人に侯爵を呼び出してもらい、廊下で話をした。
「ミーシェを王宮に泊まらせます。疲れて眠っているので、明日、夕方までには送り届けます」
「ミーシェは大丈夫なのか?」
「どう修正するのかはエヴァン次第でしょう。
間に割って入って下さりありがとうございました」
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