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帝国 王太子レオン(双子の故郷)
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【 レオンの視点 】
翌日、練習着を着たミーシェとライアンが現れた。
「レオン王太子殿下、アクエリオン殿下。昨夜はありがとうございました」
「……お恥ずかしい姿を晒してしまいました。お許しください」
「問題ない。
辛ければ中止にするから遠慮なく言ってくれ」
「大丈夫ですわ。
お土産にいただいたお砂糖をお茶に入れてみました。仰られた通りスプーンを当てず軽く流れを作ってゆっくり溶かすとお花が出てきて驚きました」
「喜んで貰えて良かった。
三種類ある。主に二種だが、稀に白い花が混じっている。幸運の証だとか」
「幸運の証ですか?白かったですけど」
「いきなり当たったのか。凄いな」
「幸運が来なかったらレオン王太子殿下に幸運にしてもらいます」
それはまさか………
「つまり?」
「冗談ですよ」
「そうか、元気な悪い子になったんだな?」
ミーシェの頭を掴むと、その手の上に両手を乗せて“か弱い頭が割れちゃう!”と痛いフリをする。
ライアン殿も側で見ているが止めることなくアクエリオンと話している。
どうやら双子に少し心を開いてもらえたようだ。
「もう一人の王子殿下はいらっしゃらないのですか?」
「アレは昨夜遅くまで起きていたようだ」
女二人を部屋に連れ込んだと聞いたから寝ているのだろう。
「待ちますか?」
「いや、待たなくていい。気になるか?」
「はい 」
冗談で聞いたつもりだったから肯定されると思ってもみなかった。
「? 何で怒るんですか?」
「怒る?」
「目に出てますよ」
「いや、ミーシェに怒っているんじゃない。約束の時間に来ないガブリエルに腹を立てているんだ」
「ん~。後から来てもう一度と言われそうで」
そういうことか。
「私がいるのにそれを通すわけがないだろう」
「約束ですよ」
「必ず守ろう」
ミーシェの頭を撫でながらライアンに確認した。
「ライアン殿、ミーシェは体調は大丈夫か」
「はい。ご安心ください」
「其方は大丈夫か」
「はい。ありがとうございます。
ライアンと呼び捨てにしていただいて構いません」
「分かった」
「ミーシェ!」
エヴァン殿下が怒ってるな。
「昨日は何処に、」
「エヴァン殿下、私は其方に軽んじられる存在なのか?」
「っ! 失礼いたしました。
レオン王太子殿下、アクエリオン殿下にご挨拶申し上げます」
「おはよう。エヴァン殿下。
朝からこんなことは言いたくもないが、其方は王族としてすべきことが分かっていないようだ。
これも外交の場であるにもかかわらす、私的な感情で場を乱すつもりか?
今日は我らとサルト兄妹との時間だ。
邪魔だからこの場から去れ」
ミーシェに近付くエヴァン殿下の前に立ちはだかり威圧を込めて叱責した。
「お詫び申し上げます。
立ち合わせてください」
「場を乱す者のせいで気が逸れて事故があっては困る。去って別の仕事でもしていてくれ」
「ですが、」
「そこの君、あそこのガゼボに茶を用意してもらえないか」
「すぐにご用意いたします」
「さあ、ミーシェ。このまま剣を握ると危ないから気分転換に茶を飲もう」
「はい 」
「ライアン、アクエリオン、メディも来い」
取り残されたエヴァンは従者に促され戻っていった。
「私のせいで嫌な役をさせてしまい申し訳ございません」
「ミーシェのせいではない。当たり前のことをしたまでだ。
新しい家族とは上手くいっているのか」
「はい。猫も加わりました」
「好きなのか?」
「まあ、可愛いですけど、義弟のためです」
「義弟?」
「何年も前に迎えた養子がいて、馴染んでいなかったので野良猫を通してコミュニケーションをとらせました」
「野良猫か」
「屋敷の庭に出没していて人慣れしていたのです。警備が放っておくということは使用人がこっそり世話をしていて主人が容認しているのだと思いました。
義弟のソラルは嫌がって文句を言っていましたが、誰より猫が懐いてるのはソラルなのです。
多分、こっそり餌をあげていたのはソラルなのでしょうね。
ソラルについて回りますし、すぐ膝の上に乗りましたし。
フフッ。一生懸命 私に文句を言いながら、目尻を下げるんですよ。
ソラルは飼いたいと言えなかったんだと思います。自分が居候気分だから。
でも今はすっかり猫と一緒にサックス家の一員です。
素直じゃないのに可愛いって思わせるのですから凄いですよね」
「きっと義弟君は君に感謝しているよ」
「そうですか?」
「私も猫に会いたいな」
「雑種ですよ?」
「私も動物を飼いたかったが父が嫌がってしまったので飼えなかった。
サルト邸では飼っていないのか?」
「自然豊かですのでいろいろな動物がやってきます。リスなどの小動物から鹿とか。
危険とか、私達が嫌がりそうな動物が入ってしまった場合は警備が排除します」
「例えば?」
「猪や猿、熊や犬科猫科の動物とか。
鹿も危ないんですけど、小さい頃、私が喜ぶので、私を守りながら鹿を追い出さずに見せてもらいました」
「熊もか」
「登って超えてくるんです。塀や門も」
「それは怖いな」
「だけどシーナが熊を殺すと泣くので入っては追い出すを繰り返して、チャンスがあればこっそり駆除していました」
「サルト家は素晴らしいな。私もサルト家に生まれたかった」
「田舎ですよ?」
「王城に居ても幸せとは限らない。
うちは父上が女好きだから妻も子も多くて、その分争いも絶えなかった。
命を狙われることも何度かあるし、それで死んだ兄弟もいる。
私達王子も父上が決めた女達を娶らなくちゃならないし、王女や役に立たない王子は家臣や友好国に嫁がされる。
好きな女を正妃で娶れた者は一人だけ。
たまたま有力貴族の娘と恋に落ちた弟だけだ」
「来ますかと言いたいですけど、人数的に対応が難しいかもしれません」
「なんとかしよう」
「?」
従者を呼び、耳打ちをして遣いに出した。
「ライアン」
ライアンを離れた所に連れて行き、聞いた。
「明日、サックス邸へ行く手配をさせるが其方はどうする?行きたくなければそれでいいし」
「……参ります」
「サルト夫妻が城を発つのはいつだ」
「明後日の朝です」
「我らも行こうと思う」
「数日かかりますよ!?」
「帝国に帰ったら、また元の日常だ。束の間でも心を癒やされたい」
「男爵家の屋敷ですから部屋も王族が滞在なさるようなものでは、」
「野営することだってあるんだ。何の問題もない。部屋がないなら宿をとるが」
「宿は数が少なく規模も小さいので急に空きはありません。ほぼ毎日のように満室になりますから。
父と相談します」
「有難い。よろしく頼む」
「かしこまりました」
翌日、練習着を着たミーシェとライアンが現れた。
「レオン王太子殿下、アクエリオン殿下。昨夜はありがとうございました」
「……お恥ずかしい姿を晒してしまいました。お許しください」
「問題ない。
辛ければ中止にするから遠慮なく言ってくれ」
「大丈夫ですわ。
お土産にいただいたお砂糖をお茶に入れてみました。仰られた通りスプーンを当てず軽く流れを作ってゆっくり溶かすとお花が出てきて驚きました」
「喜んで貰えて良かった。
三種類ある。主に二種だが、稀に白い花が混じっている。幸運の証だとか」
「幸運の証ですか?白かったですけど」
「いきなり当たったのか。凄いな」
「幸運が来なかったらレオン王太子殿下に幸運にしてもらいます」
それはまさか………
「つまり?」
「冗談ですよ」
「そうか、元気な悪い子になったんだな?」
ミーシェの頭を掴むと、その手の上に両手を乗せて“か弱い頭が割れちゃう!”と痛いフリをする。
ライアン殿も側で見ているが止めることなくアクエリオンと話している。
どうやら双子に少し心を開いてもらえたようだ。
「もう一人の王子殿下はいらっしゃらないのですか?」
「アレは昨夜遅くまで起きていたようだ」
女二人を部屋に連れ込んだと聞いたから寝ているのだろう。
「待ちますか?」
「いや、待たなくていい。気になるか?」
「はい 」
冗談で聞いたつもりだったから肯定されると思ってもみなかった。
「? 何で怒るんですか?」
「怒る?」
「目に出てますよ」
「いや、ミーシェに怒っているんじゃない。約束の時間に来ないガブリエルに腹を立てているんだ」
「ん~。後から来てもう一度と言われそうで」
そういうことか。
「私がいるのにそれを通すわけがないだろう」
「約束ですよ」
「必ず守ろう」
ミーシェの頭を撫でながらライアンに確認した。
「ライアン殿、ミーシェは体調は大丈夫か」
「はい。ご安心ください」
「其方は大丈夫か」
「はい。ありがとうございます。
ライアンと呼び捨てにしていただいて構いません」
「分かった」
「ミーシェ!」
エヴァン殿下が怒ってるな。
「昨日は何処に、」
「エヴァン殿下、私は其方に軽んじられる存在なのか?」
「っ! 失礼いたしました。
レオン王太子殿下、アクエリオン殿下にご挨拶申し上げます」
「おはよう。エヴァン殿下。
朝からこんなことは言いたくもないが、其方は王族としてすべきことが分かっていないようだ。
これも外交の場であるにもかかわらす、私的な感情で場を乱すつもりか?
今日は我らとサルト兄妹との時間だ。
邪魔だからこの場から去れ」
ミーシェに近付くエヴァン殿下の前に立ちはだかり威圧を込めて叱責した。
「お詫び申し上げます。
立ち合わせてください」
「場を乱す者のせいで気が逸れて事故があっては困る。去って別の仕事でもしていてくれ」
「ですが、」
「そこの君、あそこのガゼボに茶を用意してもらえないか」
「すぐにご用意いたします」
「さあ、ミーシェ。このまま剣を握ると危ないから気分転換に茶を飲もう」
「はい 」
「ライアン、アクエリオン、メディも来い」
取り残されたエヴァンは従者に促され戻っていった。
「私のせいで嫌な役をさせてしまい申し訳ございません」
「ミーシェのせいではない。当たり前のことをしたまでだ。
新しい家族とは上手くいっているのか」
「はい。猫も加わりました」
「好きなのか?」
「まあ、可愛いですけど、義弟のためです」
「義弟?」
「何年も前に迎えた養子がいて、馴染んでいなかったので野良猫を通してコミュニケーションをとらせました」
「野良猫か」
「屋敷の庭に出没していて人慣れしていたのです。警備が放っておくということは使用人がこっそり世話をしていて主人が容認しているのだと思いました。
義弟のソラルは嫌がって文句を言っていましたが、誰より猫が懐いてるのはソラルなのです。
多分、こっそり餌をあげていたのはソラルなのでしょうね。
ソラルについて回りますし、すぐ膝の上に乗りましたし。
フフッ。一生懸命 私に文句を言いながら、目尻を下げるんですよ。
ソラルは飼いたいと言えなかったんだと思います。自分が居候気分だから。
でも今はすっかり猫と一緒にサックス家の一員です。
素直じゃないのに可愛いって思わせるのですから凄いですよね」
「きっと義弟君は君に感謝しているよ」
「そうですか?」
「私も猫に会いたいな」
「雑種ですよ?」
「私も動物を飼いたかったが父が嫌がってしまったので飼えなかった。
サルト邸では飼っていないのか?」
「自然豊かですのでいろいろな動物がやってきます。リスなどの小動物から鹿とか。
危険とか、私達が嫌がりそうな動物が入ってしまった場合は警備が排除します」
「例えば?」
「猪や猿、熊や犬科猫科の動物とか。
鹿も危ないんですけど、小さい頃、私が喜ぶので、私を守りながら鹿を追い出さずに見せてもらいました」
「熊もか」
「登って超えてくるんです。塀や門も」
「それは怖いな」
「だけどシーナが熊を殺すと泣くので入っては追い出すを繰り返して、チャンスがあればこっそり駆除していました」
「サルト家は素晴らしいな。私もサルト家に生まれたかった」
「田舎ですよ?」
「王城に居ても幸せとは限らない。
うちは父上が女好きだから妻も子も多くて、その分争いも絶えなかった。
命を狙われることも何度かあるし、それで死んだ兄弟もいる。
私達王子も父上が決めた女達を娶らなくちゃならないし、王女や役に立たない王子は家臣や友好国に嫁がされる。
好きな女を正妃で娶れた者は一人だけ。
たまたま有力貴族の娘と恋に落ちた弟だけだ」
「来ますかと言いたいですけど、人数的に対応が難しいかもしれません」
「なんとかしよう」
「?」
従者を呼び、耳打ちをして遣いに出した。
「ライアン」
ライアンを離れた所に連れて行き、聞いた。
「明日、サックス邸へ行く手配をさせるが其方はどうする?行きたくなければそれでいいし」
「……参ります」
「サルト夫妻が城を発つのはいつだ」
「明後日の朝です」
「我らも行こうと思う」
「数日かかりますよ!?」
「帝国に帰ったら、また元の日常だ。束の間でも心を癒やされたい」
「男爵家の屋敷ですから部屋も王族が滞在なさるようなものでは、」
「野営することだってあるんだ。何の問題もない。部屋がないなら宿をとるが」
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