【完結】ずっと好きだった

ユユ

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イザベル・バネット(ライアンの求婚)

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【 イザベルの視点 】


翌日の昼前から行われた友好国に昇格のお祝いに連れてきてもらった。
侯爵家以上と国境を守る当主を限定して催された。

本来なら男爵家まで呼ぶのだが、疫病の余波と流感の大流行で痛手を負った領地が多く、呼ばないことを選んだのだ。


国王陛下が友好国になった理由を聞かせた。

「ミーシェ・サックス、ライアン・サルト。
其方達は新帝王の命を狙った逆賊を見事に返り討ちにした。
新帝王は感謝の証にグラースを友好国に格上げしてくださった。

身を挺して帝王の盾となり逆賊を仕留めたミーシェ、仲間の逆賊を仕留めたライアン、見事であった。

其方達の望むものを聞きたい。褒美を取らそう。ライアン」

「私はミーシェの自由を望みます。
ミーシェが自由に生きられるようにお力添えをお願いいたします」

「其方の妹思いには感服する。
ミーシェ」

「私は…今後もジイジと呼ばせてください」

「ハハッ、勿論だ。
私がミーシェの後ろ盾になり、自由に生きられるように力添えをしよう。あと四ヶ月もすれば退位するが、それでもいいか?」

「退位なさっても影響力は絶大ですわ」

「さて、勇敢な双子を輩出したサルト男爵家に爵位の格上げを提案したのだが辞退の申し入れがあった。

サルト家にできることがもう無くなってしまった。報奨金を出すことにしたが、サルト家は潤っているのでライアンとミーシェに与えて欲しいと願い出があった。

よって、二人に報奨金を授ける。

ライアン、ミーシェ。よいな?」

「「有り難く拝受いたします」」


つまり、狙われた帝王と逆賊の間に立ってミーシェ様が退治したってこと!?

二人のお陰で従属国から脱却したってこと!?

平凡な私の馬鹿!なんでついて来ちゃったの!!場違いじゃない!



その後は食事会になってぐったりして侯爵邸に戻って来た。

帰り際に王女殿下や陛下がミーシェ様に抱きついていた。

『ミーシェ、会いに来てね。馬鹿は閉じ込めておくから』

『退位したらジイジと遊ぼうな』

……まさかその馬鹿って。





翌朝、侯爵様とご子息とミーシェ様はサックス領に向かい、私はライアン様と王城でサルト夫妻の車列に入って出発した。



領地に近付く頃には私を乗せたライアン様の馬車がバネット領へ向かった。

送ってくれただけかと思ったら、約束を取り付けてあったようで母と兄に会うという。

兄「ライアン様のお陰で無事にイザベルが卒業することができました」

母「必ず、お返しいたします」

ラ「バネット家に申し入れをさせて下さい。
イザベル嬢を妻に迎えさせてください」

イ「ええっ!?」

母「ライアン様はサルト家の後継ぎに指名されているのですよね?
つまりイザベルを次期サルト夫人にということですか!?」

ラ「はい」

兄「ライアン様でしたらもっと条件の良いご令嬢がいらっしゃるのでは?
イザベルは平凡ですし、バネット家は助けが必要なほどの家門です。子爵家ではありますがそれだけです」

ラ「外見は際立たなくて構いません。
彼女には妻にしたいと思う魅力があります。心の清らかさが私の求めるものなのです。

財力は個人的にもサルト家にもありますから必要ありません。教養は身に付けることが出来ています。清らかな心は生まれ持った財産です。心配することなく嫁いできていただきたい。

イザベル嬢を嫁がせるには私では駄目だということでしたら、そう仰ってください。
無理強いをすることはありません」

兄「イザベルはどうしたい?」

イ「あ、私ですよ?本気ですか?」

ラ「それ以外有り得ないだろう」

イ「………………………?」

ラ「すまなかった。忘れてくれ。
バネット子爵、お時間を頂きありがとうございました」

ライアン様が席を立ち部屋から出ていった。

兄「イザベル、こんなに良い縁談相手はいないぞ。いいのか?」

母「イザベル、イザベル!」

イ「あ、え?」

母「この子ったら!ライアン様が帰ってしまったら、ライアン様は他のご令嬢をお嫁さんにしてしまうのよ!」

私は走って馬車に乗り込もうとしているライアン様に追いついた。

「待って!!」

ライアン様がステップから足を下ろして私の方に向いた。

「本当に私ですか!?」

「本当だ」

「後悔しても知りませんよ?」

「大丈夫だ」

「まさか、隠れた恋人が!?」

「そんなわけあるか」

「詐欺?にしては大損よね」

「いいから“はい”と言え」

「はい!」

「では、後日婚約の書類を用意してこちらに伺うと伝えてくれ」

「は、はい」

そう言って馬車に乗り込んで帰っていった。



応接間に戻ってお母様と兄様に伝えた。

「ライアン様、書類を持ってまたいらっしゃるそうです」

「婚約するのだな?」

「はい、詐欺でもなさそうです」

「サルトと縁続きになるのか。恥ずかしくないように頑張らないとな」

その日の夜はほとんど眠れなかった。
だって、寝る前にお母様が来て言うんだもの。

「イザベル、貴女にまともな閨教育をしていなかったわね。お金がなかったから結婚までにはと思っていたのだけど」

「それとなく知っています」

「それとなくでは駄目よ。とても大事なことなのよ」

だから……初夜が来たらライアン様に裸を見られて身体中触られると思うとドキドキして心臓が煩くて眠れなかった。
あのお顔が近付いて唇を合わせると思うと……多分初夜に私は天に召される気がする。
心臓が破れてしまうわね。

初夜までに遺書を残さねばと本気で思って書いていた。翌朝、書きかけの遺書が見つかり怒られた。

「何を思い悩んでいるの!!」

「あ、えっ……」

「お父様とギルバートがお空の向こうで泣いているわよ!!」

「いや、自殺じゃなくて、心臓が破れるかもしれないと思って今のうちに書いておこうかなと」

「健康じゃないの」

「その……初夜できっと」

お母様と兄様に大笑いされた。

「酷いです!」

「そんなことでは閨教育中に倒れてしまうな」

「そうね、初夜まで生きていられないかもね」

「そんなに!?」

「俺、その閨教育に同席しようかな、ククッ」

「授業の前日は少し豪華な夕食にしましょうか」

「……ちょっと教会に行ってきます」

「誰にも話すなよ。祈るだけにしておけ。
語り継がれるからな」

「確かに清らかだわ」

「ライアン様も苦労しそうだな」



婚約も済み、閨教育を終えた私は寝込んでしまった。

「熱まで出すとは」

「刺激が強かったのね」

ライアン様とあんなことをするなんて!!


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