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[死ぬ前のリヴィア]嫌がらせ
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王子妃教育を受けている最中に、ヘンリー王子殿下が怒鳴り込んだ。
「母上に何を言った!!」
「王子殿下、今は講義の最中です」
「煩い!」
教師が止めに入るもヘンリー王子殿下は止まらない。
「いいか、干渉するなと言ったはずだ」
「はい、殿下」
「二度と口に出すな」
「かしこまりました」
そのまま講義は中止になり、屋敷に戻った。
ただ窓の外を眺めながら涙を流す私に、父と母は激怒して王室に抗議した。
そして二週間先から始まる二ヶ月間の長期休暇が終わるまで登城させないと宣言した。
学園も休んだ。そのまま私は両親に連れられて領地へ下がった。
二ヶ月と二週間。両親はたっぷりと私を可愛がってくれた。だけどストレス性の不調だと思っていた症状は少しずつ増え、もうこのときには何故か良くないことを想像してしまうし、悪夢も見る。食欲も落ちてしまっていた。
長期休暇から戻ると王妃殿下に呼び出され、私と両親は登城した。
「ヘンリーがリヴィア嬢に辛い思いをさせました。申し訳ございません」
その後、領地にいる間のことを話してくださった。
国王陛下がヘンリー王子殿下がサラ・セグウェルとの関係を叱責なさって、長期休暇の間は謹慎を命じたこと。彼女との接触を認めないと言ったこと。加えて、婚約者を敬えないなら王太子候補を他に立てると告げたことを教えてくださった。
私は嫌な予感がした。
今まで何か言われる度に反発していた殿下が大人しくなるはずがない。
「王妃殿下、私のことは結構です。
婚約の解消がどうしても難しいようでしたら、私とは白い結婚にして、殿下のお慕いしておられるご令嬢をお迎えください」
「打診をしてみるわ」
それが更に悪化させることとなる。何故なら…
学園で呼び止められた。
「リヴィア様」
振り向くとサラ・セグウェルだった。
「酷いわ!私を妾になんて!」
「え?」
「貴女の同意は得ているって!」
そう言うと泣き出した。
どこから聞きつけてきたのかヘンリー王子殿下がやってきた。
「サラ、何があった」
「リヴィア様が、私を妾にと」
「そんな」
「私の陰口だけでは気が済まず、セグウェル家ごと侮辱なさるなんて……」
「どういうことだ」
「王妃殿下にお尋ねください」
「私がお前に聞いているんだ、答えろ」
「侮辱などしておりません。
ただ、想い合うお二人がご一緒になることが最善だと思っただけですわ」
「男爵家の令嬢は妾にしかなれない。妃にしたければ養子に出すしかない。そんなことも分からずに口にしたのか。そもそもお前にそんなことを口にする権利はないだろう」
「側妃や妾を迎える際には正妃の承認が必要です」
「お前は何様だ!婚約者というだけの、ただの伯爵令嬢だろう!しかもサラの陰口など!」
「彼女の陰口など申したことはございません」
「酷いわ!私が嘘を言っているというの!?」
「サラ、気にしなくていい。こういう醜い女なんだ」
そう言って彼女の腰に手を回して去っていった。
その日から嫌がらせを受けるようになった。
令息達から道を塞がれたり、ぶつかられたり、物が無くなったり、ヒソヒソと何か言われるようになった。
その相手は騎士団長のご子息、大臣のご子息2名を中心に権力者の令息ばかりだった。
そしてひとりの男性教師から授業中に強く当たられることがあった。
これには我慢できなかった。
「貴方の物言いは教師にあるまじき物言いです。
私はこれまで、教師という職業の方々に敬意を払って参りましたが、貴方にはその必要は無さそうです。
本来はこのようなことは言いたくもありませんが、敢えて言わせていただきます。
貴方は私達からお金を取って授業をして生活をしています。それは生徒を平等に扱い知識を与える対価です。理不尽に攻撃するための対価ではありません。
今日に限らず、貴方のなさった言動を今から学園長に抗議しに参ります」
そう言って席を立った。
先生は私を追いかけて腕を掴んだ。
「離しなさい!」
「教師に向かってなんだその口の利き方は!」
「貴方は教師とは言えません!だとしたら私の方が格上です!今すぐその手を離しなさい!」
隣のクラスから女性教師が出てきた。
「ゴールドウィン先生!何をなさっているのですか!」
「煩い!この女が悪いんだ!サラ様に嫌がらせをするなんて!」
「は?」
「ゴールドウィン先生!訳のわからないことを言っていないでその手を今すぐ離すのです!」
「この女が居なければ、サラ様が未来の王妃に、」
「王妃?」
ふと見ると 先生が拳を振り上げていた。
寄ってくる拳に体が硬直する。
2時間後、私は王宮で目を覚ました。
「ネルハデス伯爵令嬢、体を起こさないでください。
私は医師のポラックスと申します。ご気分はいかがですか」
「体が痛いです。特に頭が」
「吐き気や眩暈などございませんか」
「ありません」
「これは痛み止めです。一粒どうぞ」
「ありがとうございます」
「この後、調査部の方が入室します」
「私はどうしてここに?」
「ある教師がネルハデス伯爵令嬢を殴り倒したのです。側にいた女性教師が止めに入ったようですが、止めきれなかったようです」
「分かりました。ありがとうございます」
そして聴取を受けた。
「母上に何を言った!!」
「王子殿下、今は講義の最中です」
「煩い!」
教師が止めに入るもヘンリー王子殿下は止まらない。
「いいか、干渉するなと言ったはずだ」
「はい、殿下」
「二度と口に出すな」
「かしこまりました」
そのまま講義は中止になり、屋敷に戻った。
ただ窓の外を眺めながら涙を流す私に、父と母は激怒して王室に抗議した。
そして二週間先から始まる二ヶ月間の長期休暇が終わるまで登城させないと宣言した。
学園も休んだ。そのまま私は両親に連れられて領地へ下がった。
二ヶ月と二週間。両親はたっぷりと私を可愛がってくれた。だけどストレス性の不調だと思っていた症状は少しずつ増え、もうこのときには何故か良くないことを想像してしまうし、悪夢も見る。食欲も落ちてしまっていた。
長期休暇から戻ると王妃殿下に呼び出され、私と両親は登城した。
「ヘンリーがリヴィア嬢に辛い思いをさせました。申し訳ございません」
その後、領地にいる間のことを話してくださった。
国王陛下がヘンリー王子殿下がサラ・セグウェルとの関係を叱責なさって、長期休暇の間は謹慎を命じたこと。彼女との接触を認めないと言ったこと。加えて、婚約者を敬えないなら王太子候補を他に立てると告げたことを教えてくださった。
私は嫌な予感がした。
今まで何か言われる度に反発していた殿下が大人しくなるはずがない。
「王妃殿下、私のことは結構です。
婚約の解消がどうしても難しいようでしたら、私とは白い結婚にして、殿下のお慕いしておられるご令嬢をお迎えください」
「打診をしてみるわ」
それが更に悪化させることとなる。何故なら…
学園で呼び止められた。
「リヴィア様」
振り向くとサラ・セグウェルだった。
「酷いわ!私を妾になんて!」
「え?」
「貴女の同意は得ているって!」
そう言うと泣き出した。
どこから聞きつけてきたのかヘンリー王子殿下がやってきた。
「サラ、何があった」
「リヴィア様が、私を妾にと」
「そんな」
「私の陰口だけでは気が済まず、セグウェル家ごと侮辱なさるなんて……」
「どういうことだ」
「王妃殿下にお尋ねください」
「私がお前に聞いているんだ、答えろ」
「侮辱などしておりません。
ただ、想い合うお二人がご一緒になることが最善だと思っただけですわ」
「男爵家の令嬢は妾にしかなれない。妃にしたければ養子に出すしかない。そんなことも分からずに口にしたのか。そもそもお前にそんなことを口にする権利はないだろう」
「側妃や妾を迎える際には正妃の承認が必要です」
「お前は何様だ!婚約者というだけの、ただの伯爵令嬢だろう!しかもサラの陰口など!」
「彼女の陰口など申したことはございません」
「酷いわ!私が嘘を言っているというの!?」
「サラ、気にしなくていい。こういう醜い女なんだ」
そう言って彼女の腰に手を回して去っていった。
その日から嫌がらせを受けるようになった。
令息達から道を塞がれたり、ぶつかられたり、物が無くなったり、ヒソヒソと何か言われるようになった。
その相手は騎士団長のご子息、大臣のご子息2名を中心に権力者の令息ばかりだった。
そしてひとりの男性教師から授業中に強く当たられることがあった。
これには我慢できなかった。
「貴方の物言いは教師にあるまじき物言いです。
私はこれまで、教師という職業の方々に敬意を払って参りましたが、貴方にはその必要は無さそうです。
本来はこのようなことは言いたくもありませんが、敢えて言わせていただきます。
貴方は私達からお金を取って授業をして生活をしています。それは生徒を平等に扱い知識を与える対価です。理不尽に攻撃するための対価ではありません。
今日に限らず、貴方のなさった言動を今から学園長に抗議しに参ります」
そう言って席を立った。
先生は私を追いかけて腕を掴んだ。
「離しなさい!」
「教師に向かってなんだその口の利き方は!」
「貴方は教師とは言えません!だとしたら私の方が格上です!今すぐその手を離しなさい!」
隣のクラスから女性教師が出てきた。
「ゴールドウィン先生!何をなさっているのですか!」
「煩い!この女が悪いんだ!サラ様に嫌がらせをするなんて!」
「は?」
「ゴールドウィン先生!訳のわからないことを言っていないでその手を今すぐ離すのです!」
「この女が居なければ、サラ様が未来の王妃に、」
「王妃?」
ふと見ると 先生が拳を振り上げていた。
寄ってくる拳に体が硬直する。
2時間後、私は王宮で目を覚ました。
「ネルハデス伯爵令嬢、体を起こさないでください。
私は医師のポラックスと申します。ご気分はいかがですか」
「体が痛いです。特に頭が」
「吐き気や眩暈などございませんか」
「ありません」
「これは痛み止めです。一粒どうぞ」
「ありがとうございます」
「この後、調査部の方が入室します」
「私はどうしてここに?」
「ある教師がネルハデス伯爵令嬢を殴り倒したのです。側にいた女性教師が止めに入ったようですが、止めきれなかったようです」
「分かりました。ありがとうございます」
そして聴取を受けた。
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