笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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父と兄の言い分

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お父様とお兄様は、ヒューゴ様のことを知ると仕事を早めに切り上げて、応接間にヒューゴ様を呼んで籠った。

「お母様、ヒューゴ様の席は不用だと思うわ」

「さあ、どうかしら」

お母様はヒューゴ様が座る食堂の席をメイドに指示した。

「私のことを愛しているお父様とお兄様なら、ヒューゴ様を明日にでも追い返してくれるはずよ」

「そんなに言うのなら、二人が認めたらヒューゴ様と仲睦まじく過ごしなさい。お部屋も一緒でいいわよね?」

「それは…」

「自信がないの?」

「あります」

「では、かまわないわね?」

「そのときは仲良くします」

明日のお見送りくらいはしてあげようかしら。


1時間後。

「ヒューゴくん、いける口だね?」

「ええ、まあ」

「よし、酒を持って来てくれ」

「かしこまりました」

「ヒューゴくん、嫌いな食べ物はあるかい?」

「好んでは食べないものも出てくれば食べます。義兄あに上はありますか?」

「1つしか違わないんだから敬語は止めてくれよ。私の方が使わなきゃいけない身なのだから。
私もティナも内臓系は駄目だな」

「味覚まで仲良し兄妹なんだな」

「そうなんだよ。ティナは私にそっくりなんだ」

「そういえば、もうティアラに認められたって?」

「はい。何度もキスをする仲です」

「そうかそうか。動物は分かるんだな」

「干しサーモンのせいなのに」

「義母上、クリスティーナにもあげたら懐いてくれますかね」

「干しサーモンでは釣られないわね。ティナには釣れる食べ物はないけど、撫でてもらうのは好きなのよ」

「そうですか。お任せください」ニタぁ

「変なことを言わないで。この変態は、」

「ティナ。ヒューゴくんに何てことを言うんだ」

「そうだぞ。せめて様を付けなさい」

「変態様?」
 
「ヒューと呼ぶと約束しただろう」

「していません。
そういえば一緒に来た兵士の皆さんは?」

「兵舎で宴会をしているはずだ」

「ヒューゴ様も参加しに行ってそのままあちらに泊まればいいのでは?」

「俺の部屋はもう決まっているから」

「何でお父様もお兄様もヒューゴ様を追い返さないの!?」

「推しだ」

「推しだな」

「推しよね~」

「お父様は私の味方だったのに…」

「ティナのために結んだ婚約だったが後悔しているよ。ティナを愛してくれる男の妻になった方がいい」

「……」


先に私は部屋に戻り湯浴みをした。
お父様達はヒューゴ様と宴会状態。

チャプン

「はぁ~」

信じられない。
何で家族揃ってヒューゴ様推しなの!?
初対面のヒューゴ様を見せたいくらいだわ。

「何だか今日は少し香りが違うわ」

「殿方好みの香りにしてみました」

「どうして?」

「お嬢様と公子様の床入り、」

「違う!違うから!」

「では、念のためです」

「もう…」

そして湯浴みが終わると。

「……いつもの寝巻きは?」

「こちらは奥様が直々にお選びになったナイトドレスです。透けていませんよ?」

「そうじゃなくて、ヒューゴ様は他の部屋で寝るから大丈夫」

「では、念のためです」

「そんなの無いから」

「分かりました。念のためです」

全然言うことを聞かないわね。

バスルームから出て鏡台の前で髪を乾かしたり、何やらいろいろ瓶などを並べ出した。

「何これ」

「髪に付けるオイル、お身体のオイル、後は…床入りの、」

「要らないから」

「では、念のためです」

メイドが小瓶3つをベッドの方へ持って行ってしまった。

「使わないから」

「分かっています。念のためです」

あの3人を相手にしている使用人達だもの、このくらい強引じゃないと駄目なのね。


髪を乾かし終えると、テーブルの上にお酒やらお茶やら並べ出した。

「お酒は要らないわ」

「はい、念のためです」

駄目だわ。


灯りを小さくしてメイド達は退室した。

「いい香りがするな」

「ひっ!!」

すぐ側にヒューゴ様がいた。

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