【完結】笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

文字の大きさ
159 / 215

焦る男

しおりを挟む
【 ヒューゴの視点 】

先日、セルヴィー領から伯爵宛に1通の手紙が届いた。そのときに伯爵に叱られた。

『ティアラが死んだらしい』

『え!?ティアラが!?どうしてですか!』

『前触れもなく夜中のうちに息を引き取っていたらしい。クリスティーナがだいぶ気落ちしているようだ』

『行かなくては』

『ヒューゴ殿。猫が死んだくらいで駆け付けようとしないでくれ。君には仕事があるだろう』

『クリスティーナにとっては猫か人間かなんて関係ないんです!ティアラという存在が死んだんです!』

『そんなことは私の方がわかっている。だが、今は君がここの責任者なんだ。恋人の猫が死んだから1週間以上ここを離れるから後はよろしくと言って責任を放棄したら、下の者達の心は離れてしまうぞ。当然命令はきくだろう。だが公爵家という権力と金に従ったのであって君への信頼ではなくなるだろう。彼らにとって、たかが猫なのだよ。信頼が無くなればサブマ草について漏らす者が出る恐れがある。漏れたらこの地は狙われ続けるぞ?』

『…申し訳ありませんでした』

俺と伯爵はすっかり上司と部下のような関係になっていた。


しばらくして王都からまたライムが飛んできた。  

「ヒューゴ様、ライムが到着しました」

「はぁ…」

ライムとは王都のジオ邸とジオ公爵領を往復する伝書鳥の名前だ。クリスティーナにつけている諜報員の小さな報告書を届けさせている。

“姫が王都に戻った。気落ちしている”
2ヶ月経つのに立ち直れていなかった。駆け付けて抱きしめて慰めたい。なのに今手にしている報告書は何なんだ…
“シャルルが姫を慰めている。姫は少しずつ元気を取り戻している。残念ながら雰囲気が良いように感じる”

グシャッ

手のひらサイズの報告書を握りつぶした。

施設の建築は順調に進んでいるから少し王都へ行ってもいいだろうと思ったが、先に言われてしまった。

「建物が完成したらそこから始まるというのに心ここに在らずとは、栽培地の選定を間違えてしまったようだな」

「蔑ろにするつもりはありません。ですがクリスティーナが」

「焦り方からするとヘインズ家の息子がクリスティーナに近付いているのだな?」

「っ!」

「元々クリスティーナは婚約していた。他の男と結婚するだろうことは分かっていたのではないか?」

「そうですけど、愛しているんです」

「張り付いていないと愛せないのならサブマ草に関わらずにずっとクリスティーナに張り付いていたら良かったじゃないか。私は君が大人になるチャンスをあげているつもりだ。戦士としてではクリスティーナとは相容れないかもしれない。それに君は次期ジオ公爵だ。領地を持っているのなら武力だけでは駄目だ。このサブマ草の事業は成長の一つに過ぎない。この先も関わっていきたいのならクリスティーナと同じ景色を共有できる男にならないと駄目だ。どうしても行きたいのなら行っても構わないが、私もこの地から離れさせてもらうよ」

「っ!失礼しました」

「完成を見ているだけじゃなくて、もう完成の後のことを考えないといけない時期だ。手順を考えながら決めることはたくさんあるぞ。今働いている者達を観察して適材適所を考えたりもできる。使えそうなやつを完成後にどこにどう使うかとか。セルヴィーでも兵士としては平凡だったが商売に向いる者がいた。配置換えさせたりすることもあったし、やらせてみたら頭角をあらわしたから1つ管理を任せている者もいる。ヒューゴ殿の責任は建物やサブマ草だけではない。人材にも責任があることを忘れないように。そしてサブマ草の使い道の提案をいくつかできるくらいでないと。クリスティーナは既にその域にいるぞ?」

「申し訳ありませんでした」

セルヴィー家の長男はこんなことは当たり前にできているのだろうな。そうでなければ伯爵が長期不在にできるわけがない。彼は遠くの国外にも行く。だからかなり早い段階で息子を1人前にしたということだ。クリスティーナもその影響を受けている。

「建設が完成して人が滞在できるまでに仕上がったらクリスティーナを招待するといい」

「そうします」

だけど今すぐ会いたい。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

【完結】恋は、終わったのです

楽歩
恋愛
幼い頃に決められた婚約者、セオドアと共に歩む未来。それは決定事項だった。しかし、いつしか冷たい現実が訪れ、彼の隣には別の令嬢の笑顔が輝くようになる。 今のような関係になったのは、いつからだったのだろう。 『分からないだろうな、お前のようなでかくて、エマのように可愛げのない女には』 身長を追い越してしまった時からだろうか。  それとも、特進クラスに私だけが入った時だろうか。 あるいは――あの子に出会った時からだろうか。 ――それでも、リディアは平然を装い続ける。胸に秘めた思いを隠しながら。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。 番外編(編集済み)と、外伝(新作)アップしました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

処理中です...